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竜と聖魔とバツ2亭主  作者: 鳥井雫
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太っ腹の神様と雪の街



 大通りを馬車で進む央佳一行だが、街の中にもたくさんの雪が積もっていて完璧冬景色。街はロッジ風の建物が多く、街を囲む外塀も大木を連ねたものである。

 ここは“水と氷の街”ソル、もうすぐ夕方に差し掛かろうって時刻。人通りはまばらだが、活気が無いと言う訳でもなく。様々な格好の新米冒険者が、クエや買い物に走り回っている。

 寒い筈の街並みだが、どこか暖かな景色に見えてしまう。


 央佳は少し考えて、今日はこのまま宿を取る事にした。旅の疲れは特にないが、今夜は何もせずに宿で休もう。そう思いたって、何だか奇妙な感じに陥るのに気付く。

 以前はインしたら、時間が惜しいとばかりに行動していた。競売の遣り取りを気にしたり、大物NMやダンジョンアタックの時間を気にしたり。パーティ定員がすぐに集まらないだけで、時間が惜しくてイライラしたり。

 今はどうだ、子供達の就寝時間を気にして、冒険を休止する日々だ。


 もちろん、以前とは状況はかなり異なってはいるけれど。ゲーム内で寝るとは、昔は寝落ちを意味していた訳で。フィールドでそれをやると、一発で敵かPKに殺されてしまう。

 とにかく状況がはっきりするまでは、安全第一に行動するべきだ。やきもきしても仕方が無い、って言うかのんびり過ごすのも悪くないと感じている今日この頃。

 遅くなった新婚旅行企画だとでも思えば良い、少々危険も存在するが。


「到着したぞ~~、今日の宿はここだ。……そこに馬車をつければいいのかな?」

「そうみたいですね、一旦玄関前につけて、荷物を降ろしちゃいましょう、お父さん」


 この街の宿は全て1軒家のコテージ風で、それを見た祥果さんは大興奮。パッと見、確かにどこかの簡素な別荘みたいだ。しかも彼女は、こんな小さな一戸建てに強烈な憧れを持っている。

 そこからは、怒涛の仕切り屋さんに変身した祥果さん。央佳はルカとネネを伴って、長女の武具の買い足しへと競売所へと赴いて。加護を神様に返上した今、装備を良品で固めるのは当然の選択である。

 金は惜しむまいと思っていた央佳だが、いかんせん始まりの街では良いモノが出品されていない。仕方なく祥果さんに一言告げて、街間ワープで王都まで飛ぶことに。

 それからルカの意見も取り入れて、全身装備をカスタマイズ。


 ルカはとことん、父親と同じ感じが良いと言い張った。央佳の基本は、二刀流の魔法戦士なので、防具は革鎧系で占めている。今でこそ盾を装備するようになったが、金属鎧では移動力や魔法の詠唱時間が遅くなってしまうのだ。

 ルカが盾役として、金属装備で固めてくれると、この家族パーティは上手く機能する気がする。だけど娘の気の進まぬ仕事を押し付ける気もせず、央佳はそこは折れる事に。

 それでも全身コーディネイトが終了すると、一気に強そうな風貌に。


「あれっ、ルカは兜は装備不可なのか?」

「はい、角が邪魔になるので駄目ですね……だから、ネネも同じです」

「ネネもっ! 父ちゃ、ネネにも何か買って!」


 四女の我が儘を軽くいなし、ポーションを与えて長女にも使い方を教える。隣でグビグビ飲み始めたネネに、1本だけにしておきなさいと釘を刺しつつ。

 お昼に戦闘風景を見た所、ソロでも全然問題ないようだ。前衛の泣き所と言えば、とにかく削り方面に偏っていて、移動力やら魔法方面に疎いようなイメージがあるけれど。

 ルカは父親を見習って、魔法も使える軽戦士を目指すっぽい。


 それはそれで構わない、本人の自主性に委ねる気の央佳だが。軽戦士は一撃のパワーは、圧倒的に本職アタッカーに劣る性質がある。一長一短だ、それをスピードと魔法で補う訳で。

 しかしルカに限って言えば、片手に持つのはダメージの高い大剣である。普通のキャラなら、両手で無ければ装備不可の重さ。それを難なく振り回す、匂い立つチート感。

 弱体化した筈なのに、体力や他のステータスも央佳と遜色無いと言う。


 まぁそれは今は良い、自分以外の装備のコーディネイトも結構楽しかったし。お金は随分掛かってしまったが、ギルメンから追加の融資を受ける算段も付いた所。

 その内借金で、首が回らなくなってしまう可能性も考慮しなければ。せっかく久し振りに王都に来たのだから、散策したり噂を拾って回りたい誘惑に駆られつつも。

 一刻も早く家族の元へと、子供達を連れて取って返す央佳。


 貸しコテージは、出掛けた時とまるで様変わりしていた。どうやら祥果さん、央佳の留守の間に買い物に出掛けていたらしい。生活感が加わっただけで、まるで別モノの空間に。

 さらに扉を開けた瞬間に、漂って来る良い匂い。それを嗅いだ瞬間の、子供達の神反応と言ったら。あっという間に2人して、央佳の元から匂いを放っているキッチンへと瞬間移動。

 どうやらビスケットか何からしい、美味しそうな匂いだと央佳も思うが。


 子供達に至っては、己の食欲を満たすのに夢中な様子。姉妹も4人になると、多少は意地汚くなるのは仕方の無い事なのだろうけれど。次のがすぐ焼き上がるからとの、祥果さんの仲裁も効果は上がっていない様子。

 それでも、旦那の帰宅に気付いた祥果さんの『お父さんの分も残しておいてね』の台詞は絶大な効果を及ぼした。皆がさっと振り返って、手にしたお菓子を差し出したのだ。

 思わずホロッとなる央佳、ネネのに限っては食べかけだったけど。


「おかえりなさい、央ちゃん。すっごい買い物したねぇ、ルカちゃん見違えたよ?」

「ただいま、祥ちゃん……美味しく出来たね、コレ。今から何かする予定あるの?」

「買い物はもう終わったし、ぼちぼちしてから夕ご飯の支度かなぁ? あっ、そうそう……私の部屋のポストにお金が入ってて、補填金だって書いてたよ? 管理委員って所から?」

「……コレ、美味しいからお供え物にしたらいい」


 夫婦のまったりした会話に、突然割り込んで来たアンリの呟き。2人共何の話かと瞬間ホケッとした後に、この街にはるばる来た目的を思い出して納得。

 なるほど、前回は何も持たずに神様の御前に出向いてしまって申し訳なかった。神様が甘党とは限らないが、こう言うのは気持ちの持ちようとも良く言うし。

 祥果さんは素早く包み紙を取り出し、綺麗にラッピングを開始する。


 神様って甘党なのかと、何気なく央佳は娘と会話を続けてみるが。アンリはきちんとこちらを向いて、私の神様は甘いお菓子もお喋りも大好きだと意外な返答。

 神様は寝ないから、一度お茶会が始まると長くなって大変なのだとアンリ。どこまで本当の話なのかは知らないが、どうやら新5種族は神様との繋がりがやたらと親密っぽい。

 それが証拠に、ルカとメイの追従の話はある意味破天荒過ぎた。


 ルカによると、この前会った龍人の神様は、人には厳めしく見られたい割りには子供達には甘々な性格らしい。その証拠に、与えられた加護は半分しか返さなくて良かったそうで。

 なるほど、ルカがそんなに弱体化していなかった訳がここで判明した。具体的には補正スキルの《竜の神秘》とか《竜の心臓》とか、体力やステータスに信じられない恩恵を与えてくれるらしい。

 神様の世界にも、ツンデレ文化が忍び寄って来ているのだろうか。


 メイも負けずに発言するに、聖の神様はお洒落や子供が大好きらしい。しかも異国の服を集めるのが趣味で、何百着も持っているとの事である。

 神様の世界にもコスプレ文化があるかは知らないが、メイの説明ではどうやらそんな感じらしい。信者も派手な格好をしてお参りすると、この上なく喜ばれるらしい。

 所変われば様式も変わる、変わった神様もいたもんだ。


 そんな話を交わしつつ、いつの間にかお出掛けの用意は出来ていた様子で。一体いつ買い込んでいたのか、子供達は暖かそうな冬服を着込んでいる。

 こういう所は、本当に用意が良いなと感心する央佳だが。ルカとネネの分のコートも用意されているのを見るにつけ、この周到さには本当に頭が下がる。

 こんな風景を目の当たりにすると、本当に子供達の親なのではないかと錯覚してしまう。


 一行は表通りを進んで、雪道を街外れの静かな森の中へと向かう。そこに建つ神殿は、木造で重厚な佇まい。古さを感じさせはするが、雪景色に良く映えている。

 そこに遣えるNPCを無視して、家族はズンズンと奥へと進んで行く。先導するのはメイで、この子は行った事の無い場所でも、迷うと言う事を知らない。

 一種独特な感覚を備えているのかも、どの特性に起因しているかは不明だけど。


 その場所に足を踏み入れた瞬間、央佳にもそれと分かる感覚が全身を走った。以前にも感じた、神の降り立つ神聖な空間だ。そこは雪に覆われた岩の間を、清らかな水が流れ落ちていた。

 ささやかで、囁くような音色を奏でる滝だった。ここも半分は中庭に面していて、もう半分は岩と建物の壁で奥まった空間となっている。

 それから針葉樹が天を隠して、秘密の場所を形作っていて。


「水の神様、氷の神様……不躾とは存じますが、私の呼び掛けに応じて頂ければ幸いです。私は龍人の神の子、冒険者の桜花の血を引くルカと申します……」

『……おぉ、久し振りに直接の願いに舞い降りてみれば、何とも可愛らしく無垢なる魂である事よ。龍人の神の子とな、我らの属する大陸に何の用かな?』

『父親に付いて来たのだろう、遠方までご苦労な事よ……おや、お供え物持参とは殊勲なものだな、感心感心』


 央佳が心構えをする前に、既にルカの口上は終わってしまっていて。それに瞬時に呼応する形で、2体の神様が既に降臨して話に興じていた。

 そして祥果さんの焼いたビスケットを、交互に頬張って喜んでいる。その姿は何と言うか、軽いカルチャーショックを央佳に与えて来る。

 物凄く役職が上の人が、実は意外と身近な存在だった時のような。


 今回現れた2神は、青系のローブを着た女性と見紛う美形だった。てっきりここの神様は女神だと思っていた央佳は、少しだけ拍子抜け。それでも柔らくも力強い波動は、空間を満たしている。

 明らかに自分達とは違う存在感、住む世界が違うとはこの事を指しているとも思いつつ。ゲーム世界でこんな神々しさを感じるとは、どこか間違っている様な気がして来る。

 しかし思い直してみると、ここは確かに剣と魔法と冒険の世界ではある。


 判断基準は存在するが、比較基準にはなり得ないのだろう。それほどに2つの世界は、創世から運営まで異なっている訳だ。ただ、こっちの世界はプログラマーと言うかゲームデザイナーの手によるフィクション世界には違いなく。

 だからと言って、向こうの世界も人間の手で造られたと言える程驕ってもいない。


 宗教事に関わらずに生きて来た央佳としては、生身で神様と対面するなど異例過ぎる事態である。しかもこんな規格外の、田舎の祖父母のようにもてなしてくれる事態など。

 今も家族を眺めて、どこか納得顔の2神ではあるが。ルカの願い事はあっさりと受理されて、しかもお土産のお返しにと水と氷の宝珠を人数分持たせてくれている!

 太っ腹過ぎるおもてなしだ、こんなの運営にばれたら大目玉を喰らってしまいそう。


 神様と運営、どっちが位が上かとの議論は置いといて。ド級のお土産に、思わず家族を代表して央佳は礼を述べる。それを軽く受け流して、神様は訳知り顔で頷くのみ。

 まるでこちらの都合を、全て知っている風である。


「あの、ひょっとして……私と妻が今どんな状況に置かれているか、その原因を含めて知っているなんて事は……」

『知ってはいるが、我らは管轄外なのじゃよ……私は水を司り、相方は氷を司る。親は子を育み、子は愛情を糧に育つ。全ては輪廻、サイクルなのじゃ……下手に横槍を入れる事は、例え我らとて禁止されておる』

『我らだからこそ、と言っても良いかも知れぬぞ、相棒。大いなるものは、少し動くだけで大きな波紋を呼ぶのじゃ。だからこそ、慎みを持って決して出しゃばらぬ』

『そうじゃな、さすが英知を備えた我が相方じゃ。せめてもの支援、差し上げた宝珠は好きに使って構わぬよ。売るなり誰かがまとめて使うなり……我らは、陰ながらそなた達を見守っておるからな』


 有り難うございますと、ルカが素直にお礼を述べる。もう少し核心に触れる言葉を貰いたい央佳だが、続きの質問がなかなか出て来ない。そうこうしている内に、神様の影は次第に薄れて行って。

 隣でメイとアンリが、神様に向かって呑気に手を振っていた。別れの挨拶のつもりなのだろう、逆に央佳はじれったく感じてしまったが。

 今更どうしようもなく、既に神様は露と消えてしまった。


 後には控えめな滝の立てる音と、メイのお土産を喜ぶ声。早速ネネが手に取って、おもちゃにして遊んでいるが。宝珠は1個でスキルP10ポイントの価値のある宝物で、売れば100万以上する高価品だ。

 今回貰ったのは、水と氷の宝珠が、それぞれ6個ずつと言う大盤振る舞いで。素直に使うとすると、水と氷の魔法が6個ずつ覚える事が出来てしまう。

 って言うか、上手く売れば今の借金を返済出来てしまいそうな?


 それは物凄く良い案のように思えたが、向こうが素直に受け取ってくれるかは不明。それより祥果さんに、完全後衛仕様になって貰った方が収まりが良い気も。

 子供達はワイワイ騒ぎながら、貰った宝珠で遊んでいる。悩んでいる央佳の目の前で、しかし事態は進行中だった。つまりは、子供達が自主的に祥果さんへ宝珠をプレゼントしていて。

 これが答えだ、圧倒的に央佳が口出し出来ない程度には。


 祥果さんは感激した素振りで、まぁまぁと驚いた口調だったけど。いつも贈り物はする側で、される側になるのは慣れていない様子。戸惑いながら、央佳へと視線を向けるけど。

 良かったねと、殊更に満足げな表情で頷きを返す旦那を目にして。ちょっと泣きそうになりながら、一人一人を抱きしめてお礼を述べる祥果さん。

 良い縁は良い結果をもたらす、それが世のサイクルに他ならず。




 翌日の朝の家族会議で、今日する事は呆気無く決定された。つまりは“光と風の街”と同様に、この街にもワープ拠点を築く手順を踏むのだと。

 向こうでは一番手っ取り早い、獣人の拠点攻めによる名声上げを選択したけれど。こっちでは、クエストをこなして行くと言うオーソドックスなやり方を採用する事に。

そちらのやり方に、祥果さんが興味を示したからだ。


 そんな訳で、日中はクエストをこなすために街中を走り回る事に。話し合いの末、何故か祥果さんとアンリ、ルカとメイで2組のペア分けを行い、しかも競争するっぽい。

 それは良いが、護衛役の央佳は大変である。大通りならまだしも、ドロップ品目的で街の外に出た時など、誰がどこにいるのか把握が大変で。

 しかもネネのお守り付き、競争仕様なので子供達のテンションは上がりっ放し。


 クエストでの名声上げは、当然だがそう簡単には行かない。恐らく何日か掛かってしまうだろうし、のんびり行けば良いのにと央佳は思うのだが。

 そんな雰囲気なのはネネただ一人、残りは忙しなくクエスト用紙を手に走り回っている始末。祥果さんまで、まるで借り物競争に引っ張り出された父兄の様相。

 全く、子供の相手は本当に大変である。


「父っちゃ、みんな走ってるよ? ネネもはしる?」

「ネネは父ちゃと遊ぼうか……もう一回、1から数字を数えてご覧?」


 央佳に促されたネネは、にっこり笑って元気に詠唱を始める。この頃の年代の子供と言うのは、全く繰り返しを苦にしない。気に入った台詞など、飽きもせずにずっと口にする。

 ネネの記憶力は、まぁ実際大したものだ。付き合う央佳の方が、逆に疲れてしまうけれど。これも子供の将来の為と、疲れた顔を見せずに褒めるのを忘れない。

 祥果さんは、本当に毎日良くやってるなと感心してしまう央佳。




 事が起こったのは、祥果さんペアの何度目かのクエストの報告の際だった。ネネを抱いたまま、それに付き合って冒険者ギルドの扉を潜る央佳。

 彼女達が認証&報酬受け取りと新しいクエストを受けるのを、扉の側で待っていた時だった。不意に荒々しく扉が開いて、一人の冒険者が入って来て。

 ぐるりと周囲を窺って、ぴたりと央佳を見初めた様子。


「……あんた、ベテランだよな? ひょっとしてBクラスか、もっと上だったりするかな? ちょっとお願いがあるんだけど、聞いてくれないか?」

「あー、いやぁ……今は知り合いの護衛中だから、ちょっと手が離せなくて。……ギルドの仲間かフレに相談した方が早いんじゃないかな?」

「もちろん真っ先にそうしたさ! だけど相手が闇ギルドの連中だと知って、ビビッて話を聞いてくれないんだよ!」


 もちろんそうだろう、それが普通の反応には違いない。闇ギルドとは、つまりはPKやら裏町のはぐれ者の集団の事で、その勢力を伸ばそうと日々暗躍している輩だ。

 どうやらクエスト依頼にも載ったらしく、しかもその報酬は30万とクエにしては破格だ。表の街の店にまで、みかじめ料をせびりに来たらしく、その対応をしろとの事で。

 ファンタジー世界にしては生々しい、そんな依頼だ。


 話し掛けて来た冒険者は女性で、自ら“炎斬”のアルカと名乗った。そのまんま炎属性の、ガチガチの前衛アタッカーらしく。Aクラスとの事なので、宝具を交換済みっぽい。

 だからと言って猛者の部類に入るかと問われれば、そこは微妙ではある。強さは装備のみで決まる訳でもないし、物凄く強烈なスキルや魔法を持っているとか、央佳のように強烈で個性的なオプション付きだとか色々だ。

 彼女の手にする武器は両手斧で、一応破壊力はありそうだが。


 何も報酬に目がくらんだ訳でもなく、ガッツリ直接の恨みもあるみたいだ。彼女のギルドの新人が、ここ3日立て続けにPK被害に遭っているらしく。

 アンタも他人事じゃないぞと、詰め寄られたけど確かにそれは一理ある。チラリと祥果さんに目を遣ると、困ってるなら助けてあげればと良く分かっていない素振り。

 助けるのは吝かではないが、このゲームはカルマの値が困りもので。


 つまりは因業だ、あまり闇ギルドの住人と遣り合ってその値を上げたくないと言うのが央佳の本音。それでも連中がここを拠点にPKで弱い者虐めをしていると言うのなら。

 遠くない未来に、かち合わせするのは目に見えている訳だ。それならこちらから乗り込む方が、ずっと警戒し続けるよりはマシかも。その上懸賞金が出るのなら、悪くは無いかも?

 何よりずっと喧しく捲し立てるこの娘の、口上をこれ以上聞かずに済む。


「分かった、分かったよ……一緒に依頼を受ける、これでいいだろう? 祥果さん、悪いけどちょっと騒動が終わるまで、安全な場所で待っててくれないかな?」

「いいけど……大丈夫なの、央ちゃん?」

「乗り気はしないけど、皆の安全のためだから仕方ないね。悪者退治のクエをこなして来るよ、桃太郎のサル役かな? ネネも連れて行く、アンリは祥ちゃんと待機な?」


 コクリと無表情に頷く三女と、央ちゃん申年(さるどし)だものねと呑気な返事の祥果さんを残して。意気揚々と進む“炎斬”のアルカの後に、大人しく付き従う央佳。

 あんたは割と有名らしいなと、どうやらギルド会話か何かでこちらの素性を確認したっぽいヤンキー娘。でも二つ名が“重婚野郎”とか“バツ2亭主”とかってどうかと思うぞと、仲間になった筈の相手からの言葉の刃の口撃に。

 いきなりHPをごっそり持って行かれ、息も絶え絶えに。


「そ、そんな噂になってるのか……知らなかった……」

「父ちゃ、しっかり?」

「あぁ、それが例の子供か……しっかし、限定イベント2連覇って、あんたスゲーな!!」


 今更褒められても、嬉しくも何ともない。ネネに頭を撫でられ心配されて、それだけが唯一の慰めか。子供にまでアンタはとんだ節操無しねと言われたら、もう布団をかぶって引き篭もるしか無い訳で。

 そんな情けない心情の央佳だったが、裏通りに足を踏み入れるとさすがに気が引き締まる。カンスト済みの自分でも、ここでは気を抜くと途端にやられてしまう場所だ。

 せめて即席の相方が、そこそこの使い手であって欲しいモノ。


 クエスト用紙はとことん親切で、殴り込みの場所までしっかり記載されていた。途中で変な輩ややたらと凶暴な野良犬に遭遇したが、何とかそれをやり過ごし。

 いかにも陰鬱な建物の扉付近に、あからさまに性質の悪そうな見張り衆が2人。どうやらNPCのようだが、こちらが近付くとさらに2人奥から出て来ると言う厄介さ。

 この難関クエに、30万ギルは安過ぎる気がして来た央佳。


「あんたらだな、ここ数日ウチの新人をPKしてる連中は! 手配書も出回ってる、大人しく観念してお縄に付くか、さもなくば私らに倒されるか、どっちか選ぶんだな!」

「なんだぁ……? 今から稼ぎに出ようと思ってたら、その手間を省いてくれるのか? 襲いに来るなら、せめてもう少し兵隊集めろよ……たった2人って甞めてんのかぁ?」

「正義は群れたりしないのだ! 今から天誅を行使する“炎斬”のアルカの英雄的剛腕、とくとご覧あれっ!!」


 一緒に来いと無理やり説得しておいて、群れたりしないとは酷い口上だ。って言うか、数的に不利なんだからダラダラ喋るより先手を取るべきだろうに。

 相手はどうやら、伏兵を警戒しているらしい。今からPKに出掛けると言ってたから、準備は万端なのだろう。うん、新たにメンバーが4人と、NPC傭兵が2人出て来た。

 この超難関クエに、30万ギルは安過ぎるってば!


「粋がってるねぇ、お嬢ちゃん! 俺も一応名乗っておこうか、黄金ルーキーの“串刺し”のジャンだ、お見知りおきを。どうやら伏兵の類いは無いようだが、旨みも無さそう……おっと、そっちの兄さん『鷹爪の腕輪』を装備してんじゃん! 欲しかったんだよねぇ、ソレ」

「えっ、マジ? 私もそれ欲しくて、頑張ってミッションP溜めてるんだけど……こいつら倒したら、何とか溜まりそうなのよ!」


 そう言うのを、取らぬ狸の皮算用と言うのだ。自分で黄金ルーキーと名乗るのも、相当なアレだけど。所詮向こうはゲーム世界、こんなやり取りを含めて楽しんでいるのだろう。

 こっちは相当必死な訳で、苦労して貯めた『鷹爪の腕輪』を取られるのを含めて冗談では済ませられない。これは高額ミッションPと交換で得られる宝具の一つで、冒険者の間では羨望の的となっている逸品だ。

 性能はスキルスロット+2、オートSP回復、攻撃力upなどが付いて来る。


 もっとも、今となってはルカと共有する『契約の指輪』の方が価値が高いけれど。そんな事を素直に教える謂れも無く、どっちだって盗られたくないのは正直な感想だ。

 第一、倒したら狙ったモノが必ずドロップするとは限らない。そこら辺は、普通のモンスターと一緒ではあるらしいのだが。不幸は一定量存在する訳で、必死の思いで収集した装備をPKで失う事も珍しくは無い。

 そうなったら、本当に泣くに泣けない事態な訳だ。


 まぁ、今はそんな嫌な想像に思いを馳せている時とも違う。小声でネネに、NPC4人の相手が出来るかなと尋ねてみると。大丈夫と笑顔の返事、素直な子は大好きだ。

 なおも繰り広げられている変てこな口上合戦は、この際無視して。リーダー格の黄金ルーキーとその仲間たちは、どうやらカンスト済みだがベテランと言う程でも無いらしい。

 それだけがせめてもの救い、脅威には違いないが。


「ええっと、アルカ……調子良く喋っている最中に悪いけど、敵のリーダーとのタイマン勝負は君に譲るよ。その代わり、残りの連中は全部俺が引き受ける」

「へえっ……女の前でいい格好する奴に限って、大概は……うおおっ!?」

「ふぁっ、ええっ……!?」


 央佳がお尻をポンと叩いた瞬間に、敵も味方も驚かすネネの《限定龍化》のその雄姿。いち早く応じたのは、案の定のNPC用心棒たちの群れだった。一斉に殴り掛かる連中に向けて、容赦のない豪炎ブレスが。

 一部の闇ギルドのメンバーも巻き込まれ、一気に瓦解する向こうの包囲網。油断の無い奴は既に抜刀していたのだが、この場所はブレスの範囲内だと慌てて退散に掛かっている。

 そんな向こうの都合はお構いなしに、央佳得意の《グランドロック》が炸裂。


 得意と言うか必然だ、何しろ向こうの方が人数が圧倒的に多いのだから。数人が巻き込まれたっぽいが、魔法耐性の高い氷系の魔術師はレジストした様子。

 反撃の単体氷魔法を、何とか耐え忍びつつ。隣で呆けているアルカを鼓舞して、こちらも反撃に打って出る。いつまでも向こうの間での魔法合戦では、こちらに分が悪いったらない。

 取り敢えずは盾スキルの《臥薪嘗胆》で、ペースを作る事に。


 このスキルは、ダメージを受けたりガードしたりする度に、こちらのパワーが上がって行く補助スキルである。盾スキルの中では割とレアかも、長丁場では使い勝手が良いのは確か。

 氷系の魔法と共に、弓矢での攻撃も加わって来た。見ればフリーの敵は2人に増えていて、その端でアルカと敵のリーダーが斬り結んでいる。

 さて、遠距離での撃ち合いは苦手だし、こちらも距離を詰めてみようか。


 遠隔攻撃は、距離のアドバンテージを維持出来る前提があれば有効な戦法だ。相手が遠隔攻撃を持っていなければ尚良い、一方的に手番はこちらなのだから。

 魔法は詠唱時間が長い分、強烈な攻撃力を持つものが多い。MPには限りがあるが、属性の弱点などを付くのも有効だし。一方、弓矢は武器の中でもダメージは大きい部類で、使用者も割と多い。矢の種類も豊富だし、スキル技にも派手な物が多いし。

 ただし、矢は消耗品で使い込むほどお金は消費するし、攻撃間隔はかなり長いと言う欠点も。


 そしてどちらの使い手も、接近戦に弱いと言う最大の弱点を持っている。信頼のおける盾役がいれば、そのパワーも発揮出来るのだろうけれど。

 こんな混戦では、全てが自己管理となってしまうのは致し方ない。央佳はさらなる混乱を招くべく、《瀑落風》と言う名の範囲風魔法で敵の視界を遮りに掛かる。

 天から吹く暴風で、敵方は視界と身動きを奪われて。


 近付き様に片手剣スキルの《スピニングエッジ》で襲撃、氷の術者のHPはあっという間に半減。さすがに紙装備だ、慌てる相手の逃亡を許さず、央佳は追撃の一撃。

 距離を潰されて弓矢を使えなくなったハンターは、止む無く短剣に装備をチェンジした様子。それでも術者との間に割って入る前に、央佳は止めを刺す事に成功。

 これで撃墜マーク1つだ、余裕は全く無いけれど。


 短剣に持ち替えたハンターと、改めて斬り結んでいると。土の結束が解けたようで、続々と戦士が押し寄せて来る。幸いアルカの方に応援に行く輩はいないよう、最初のタイマンの約束が良い具合に枷になっているのかも。

 こちらは大変だが、盾での防御が効果を奏してダメージは軽微で済んでいる。やって来る敵は全員が重戦士で、金属鎧に両手武器装備を確認している。

 そういう奴らは、大抵が魔法に弱いモノ。


 状況を確認しながら、央佳は《アースウォール》を駆使して少しずつ場所移動。敵に囲われると、せっかくの盾装備も台無しである。その分攻撃力が犠牲になるが、さっき掛けた《臥薪嘗胆》が良い具合に効いて来ている。

 仲間の加勢に、今度は距離を取ろうと離れて行くハンターに苛立ちつつ。チラっと横目で味方の状況を見ると、どうやらネネはNPC4人衆を綺麗に平らげてしまった様子。

 その反面、アルカは敵のリーダーに苦戦中みたいである。


 こっちものんびりしていられない、多少でも強引に事態を動かさないと。距離を取って再び弓矢に持ち替え、嫌らしい笑みを浮かべているハンターを見遣り。

 こちらに襲撃技が無いとみて、完全に油断してポーション回復もしていない今がチャンスだ。襲撃技とは、両手槍に代表されるチャージ技で、これは距離が無いと逆に使えない。

 斬り掛かろうと立ちはだかる戦士に《拍龍》を撃ち込み、その隙に二刀流に持ち替える。さあ準備は万端だ、射線は完全に通っている。


「――《白虎豪襲》っ!!」

「なっ、ぐあっ……!!」


 せっかく溜めていたSPはスッカラカンになってしまったが、代わりに敵のハンターを仕留める事が出来た。これで残るは重戦士が3人、何とかなりそうな気配。

 《白虎豪襲》は桜花の持つ唯一の襲撃スキルで、破壊力も最大級だ。二刀流の超レアスキルで、一部では“神話級”と称されるほど滅多に見られぬ厳しい習得条件と破壊力を持つ。

 その条件とは風と土を200、片手剣スキルを299と言う。


 こう言う条件を持つものを複合スキルと呼ぶが、通常スキルのようにポイント振り込みでの取得は不可能だ。大抵は『複合技の書』と言うアイテムが必要で、滅多にお目に掛かれない。

 その分、威力は通常よりも大きいし、ユニークなものが揃っているのだ。


 このスキルのお披露目に、残された戦士たちは驚きで行動が止まってしまっていた。その隙に、再び周囲の状況の確認。ネネは未だ鼻息も荒く、闘いの勝利に酔っている様子。

 こちらに加勢しようとしているのか、てとてとと走り寄ろうとした歩みがピタッと止まる。それから、まるで招かれた様に建物の影に消えて行ってしまった。

 良かった、あの子は《限定龍化》が解けると他に戦う術を持たないのだ。


 安心ばかりもしていられない、何と肝心の雇い主のアルカが、とうとう敵の刃に倒れてしまったのだ。これは大いなる誤算、ちょっと待てと央佳は大慌て。

 残りの3人の戦士に合わせ、リーダーとも戦えと?


 自棄になりつつ、未だ固まっている連中に向け《ウインドエッジ》をお見舞いする。風の刃に切り刻まれて、戦士の群れは大慌て。それから襲撃技には距離を潰すのが肝心と思い出したのか、塊になって突っ込んで来る。

 再び《グランドロック》での足止めは二番煎じだし、第一効きは2度目以降は悪くなる。どうしたモノかと考えていると、何故か状況に違和感が。

 戦士の数が、2人に減っている?


 考えている暇は無い、敵のリーダーは受けた傷を治そうと、今はヒーリング状態である。これも二刀流の大技、しかも複合スキルの《スピンムーブ》で2人の戦士を切り刻みつつ。

 SPを溜めつつ、敵にダメージを与え続ける央佳。二刀流と回転しながらの防御技を兼ね備えた、攻防一体の技だ。奥の手の行使に、しかし敵の防御の堅さに削り切るのは大変そう。

 そこに回復を終えた“串刺し”のジャンのチャージ技が襲い掛かる。


 少なくないダメージを受けた央佳、向こうの武器が両手槍なのは確認して知っていたけど。さすがにこの人数で、各々の動向を完璧に確認などしていられない。

 それでも腹立ちまぎれに、固まっている連中の中心に《デスハリケーン》の大魔法をぶち込む。これは範囲で大ダメージを与える癖に、詠唱が短くて済む超便利魔法だ。

 《スピニングムーブ》の恩恵で、央佳はそのまま弱った戦士に纏わり付く。


 もう少しで、戦士の一人を撃破出来るかなと言う時に、再び異変が起こった。ジャンと戦士その2は、央佳が上手く戦士1を盾にしているため、下手にこちらに手出しが出来ずにいる。

 あらかじめ掛けておいた補助魔法の《アースヒール》で、徐々に桜花のHPは回復中。少しだけ余裕を取り戻した央佳が見たのは、黒い霧にこっそり攫われる戦士2の姿だった。

 間違いない、アレはアンリの《暗黒魔霧》と言う名の魔属性魔法だ。


 どうやらこっそりと、手助けをしてくれていたらしい。何と親孝行な子だ、ネネの回収までしてくれていたっぽい。とすると戦士その3も、あの子の仕業か。

 何にせよ、これでかなり楽になったのは確か。


 反対に、敵の連中には大きな混乱が見受けられ。それはそうだ、いつの間にか味方が消失しているのだから。それに付け込むように、《風刃喝砕》で戦士1のHPを削り切る。

 これは片手剣と風の複合スキルで、敵の防御力を無視する性能を備えている。防御力の高い相手に対する奥の手だ、これで視界はすっきりした。

 残るは敵のリーダー、“串刺し”のジャンのみ。


「おいっ、俺の仲間に何をした……!? 何かイカサマしただろう、ふざけやがって!!」

「何をしたって……俺は、お前の仲間を3人倒しただけだが? お前で4人目だ」

「貴様っ……図に乗るんじゃねえよっ!! 串刺しにしてやらぁっ!!!」


 あまり自分の戦略スタイルを、声高に披露するモノでは無い。予告通りにチャージ技を敢行する敵リーダーを、《ソニックウォール》の風魔法で迎撃と言うか撃墜する。

 この魔法は音の壁で、相手の遠隔技をひん曲げる効果がある。結果、串刺しは回避され相手は自滅の憂き目に。その隙を見逃さず、央佳はSP溜めに剣戟を繰り出す。

 ペースは握らせて貰った、後は仕留めるまでの構図を練るのみ。


 相手も自棄になって反撃を繰り広げて来る。スキル技も含め、さすがに両手武器はダメージが高い。こちらも少なくない被害を被るが、大半はステップ防御で華麗に躱しつつ。

 そろそろSPも溜まったし、相手も程良く弱って来た。頃合を見計らい、央佳の終焉までの計画はスタートする。まずは先程と同じく、《拍龍》で敵を突き離し。

 適当な距離を置き対峙、お互い武器を構えて睨み合う。


「どうした、お前の得意距離だろう? 二つ名が泣くぞ、掛かって来いよ」

「ぐっ……貴様、ぐぐうっ……!!」


 つまるところ闘いとは、格の付け合いである。どちらが格上かを相手に知らしめる、そう言う作業に過ぎない。この差が少ないと、後に禍根を残す事になる。

 斃すなら、はっきりと差を知らしめるべき。2度と歯向かう意思をくじく程度には、永遠に敵わないと知らしめる程度には。因縁を下手に絡ませて、良い事など何も無い。

 思惑通り、敵のリーダーは完全に央佳に呑まれた様子。


 先程得意な技を潰された、嫌な記憶が頭を塞いでいるのだろう。実際には、風の防御は既に時間切れとなっている。それを知らない相手の取った行動は、ポーションによる回復だった。

 そんな行動を許す筈も無く、央佳は得意の二刀流の決め技《白虎豪襲》で、ジャンにきっちりとどめを刺す。ほぼ思惑通りの結末に、央佳は安堵の表情を見せ。

改めて振り返った戦場は、既に動く者の姿は無し。


 いや、ひょっこりと建物の影から顔を出したアンリと、一瞬だけ目が合った。すぐに引っ込んで、代わりにネネが元気よく走り寄って来る。

 恐らく待ってなさいとの約束を破ったので、顔を合わせにくいのだろう。子供らしいリアクションに、央佳も先程までの激闘を忘れてほっこりしてしまう。

 何にしろ、生き残れてよかった。





 ――無事に家族の元に帰れる充実感を感じつつ、心の底からそう思う央佳だった。










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