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竜と聖魔とバツ2亭主  作者: 鳥井雫
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新大陸ミッション権利獲得と、限定イベント最終日



「いやぁ~~っ、やっぱ桜花の周りにいると面白いよなぁ、予期しない出来事が起きるもんな!! さて、次は何をする? 闇ギルドに誘われてる大規模対人戦か、それとも俺らのギルドで予定してるネコ族の戦争ミッションか……どっちも面白そうじゃね???」

「分かったから、暑苦しい顔を近付けて来るな、朱連……子供達も、無闇にはしゃぐんじゃありません! ……そうだな、祥果さんと子供達がもう少しでレベル100に達するんだ。難しそうな戦闘に着手する前に、新大陸ミッションこなしてスキルスロット増やしたいかな?」

「……お母様のレベル、あと5つで100だって。メイ姉の信頼度は300クリア済み、いつでも“加護返し”出来ます、お父様……」


 そうらしい、何とも恐ろしい“一緒にお風呂♡”イベントの威力である。メイもレベルは100を超えてるし、加護を返してもカスタム次第で汎用性のある後衛キャラになる筈だ。

 新大陸ミッション突破のボーナスを含め、皆大幅にパワーアップ出来そう。


 ここはギルド領の館の央佳の個室、時間は朝食後の朝のミーティング中。この前の闇ギルドの団体PKを撃退し、ノリに乗っている朱連の襲撃を受け。

 祥果さんはお客にお茶を出した後、子供達のおやつを大量生産しに台所へ。ルカもそれを手伝っていて、ここにいる子供はメイ以下の年少組である。

 ネネは父親の膝の上、メイとアンリは父親の友達にすっかり馴染んでいる様子。


 朱連の持ち出す大規模戦闘に、是非とも参加したいと先程からはしゃいでいるのだが。央佳の考えでは、パワーアップが先である。先の央佳不在の闇ギルドの襲撃など、不意の危険に対する対応力が欲しいと言うのが本音。

 この先、央佳が側にいたくても無理な状況も増えて来るかも知れない。そんな事態に備えて出来る事と言えば、手の空いてる時間に祥果さんと子供達に力を与える事位。

 その手段が、すぐ手の届く所にぶら下がっているのだ。


「……確かに、スキルスロット+2は魅力的。溢れてるスキルがたくさんあるし、新大陸には色々と冒険者の支援をしてくれる建物も存在していた筈……?」

「中央塔は、レベル200以上無いと入れなかっただろう、アンリ? まぁDランクになってようやく、ミッションPを本格的に溜め始められるんだけどな。

色々考えても、先は長いよなぁ……」

「新大陸で中央塔に入るまでの名物と言えば、『ヴァルキリアの塔』や『海賊船と幽霊船』なんかがあったかな。……でも、俺もお前さんも塔は結局、スルーしたっけか?」

「ママと私達のパワーアップ計画の事、パパ? それなら私達も頑張るから、心配しないでも平気だよ!!」


 明るいメイの一言で、央佳は何だか救われる思い。確かにそうだ、先は長いけど考え込んでも仕方が無い。急いで計画をしくじるより、ゆっくりと景色を愛でながら進もうか。

 幸いな事に、朱連もその案に了承をしてくれて。新大陸ミッションの手伝いを、ギルドの暇な面々で手伝ってくれると請け負ってくれた。

嬉しい言葉だが、まだあと5程度祥果さんのレベルが足りない。


 ちなみに朱連の言う『ヴァルキリアの塔』とは、冒険者ランクDで受けれるようになるコンテンツである。パーティで塔に挑むのだが、入るのに結構なお金が掛かるので。

 ピンポイントでスキルや装備を鍛えられるのだが、普通に冒険したりレベル上げをしたってそれは同じ事。お金の消費を嫌う冒険者に、後回しにされる宿命となってしまった。

 そんな悲しい経緯を持つ、割と難易度の高いコンテンツである。




 とにかくそんな訳で、今日はレベル上げといつの間にか最終日となった、限定イベントのチケット総ざらいの日に決定。子供達はそれを聞いて、シュタッと出掛ける準備を始める。

 どうやら夫婦が不在の間にも、チケットを溜め込んでいた様子。せっせと公式を、熱心に作成している子供達の姿が目に浮かぶ。半分は使ってポイントにしてしまったようだが、半分は央佳達用に取っていてくれていたらしい。

 心温まる話だが、つまりは央佳と祥果さんも今日はポイント溜めに励まないと。


 一行が揃って王都に出ると、街の中は限定イベントの最終日に湧きたっていた。街の噂を拾ってみるに、どうやらイベントの公式の謎はほぼ解けて全員が共有している様子。

 要するに、イコールの右左の計算式を5桁にするのが1つ目のポイントらしい。極端に言うと、5000+5000=10000みたいな公式でもAクラスになり得るとの事で。左の公式だと楽に見えるが、ゼロが5個も10個も揃うなんてまずありえない。

 そこからは、4姉妹が角突き合わせて渾身の公式を紡ぎ始める。


 出来上がった公式をチケットに変換して貰う時には、子供達はドキドキしながら成り行きを眺めていて。その内の自信作がSランクを獲得した瞬間、ワッと歓声が巻き起こる。

 飛び上がって喜ぶメイと、それを抱き上げるルカ。もっとも身長差はそんなにないので、じゃれ合っているようにしか見えないのだけれど。アンリとネネも、一緒に喜んでいる。

 何にしろ、勉強の成果が報われて何よりだ。


 その後は、子供達の先導でフィールドに出てポイントの場所探し。今回は奇面組と花組に加え、ギルドの面々も数人参加して限定ギルドの最終日を楽しんでいる。

 朱連や夜多架に加えて、今日は牡丹と翡翠も一緒である。一応はチケット所持の参加の体だが、前回の大掛かりな闇ギルドの襲撃報告を受けて。

 ギルドの面子と絆を前面に押し出して、護衛を買って出てくれたのが本音である。


 後でギルマスのマオウも合流するし、トーヤ達も後からインして来たらレベル上げを約束している。その後は朱連に穴場の狩り場を教えて貰って、そこで祥果さんがレベル100になるまで篭もる感じだろうか。

 朱連は今晩中に絶対可能だと請け合っているが、ログインボーナスの経験値アップのお札もあるし期待は出来るかも。まぁここまでの長い道のりを思えば、今日中にこだわる必要は無いのだけれども。

 とにかく大勢に見守られて、チケット消費のNM戦スタート。


 ポイントは子供達が見付けてくれるが、最終日だけあってどこもかしこも人で混み混みである。次第に王都から離れて行く一行、気付けは王都の街並みは拳大にまで小さくなって。

 それでも央佳も仲間達も、平均2枚は軽く消費出来ていた。祥果さんに限っては、アンリと組んだりメイに助けて貰ったりしていたけど。ハンターPは獲得出来ているので、何の文句も無い。

 央佳がこのイベントで獲得したハンターPは、合計30ちょっと。


 子供達はもっと多いだろうし、肝心のS級チケットはまだ消費していないけれど。これを誰が使うかとの議論が、束の間熱く語られる。つまりはパーティに、誰が入るかと。

 ちなみにS級チケットは2枚存在して、もう1枚はエストの所有である。だから花組と奇面組でパーティを組んで、あと2人適当に誰かに入って貰えは問題は無い筈なのだが。

 もう1枚は央佳家族で消費するので、つまりは央佳達以外と言う事に。


「ええっと、誰が良いですかね……役割的には盾役とスタン役、もしくは魔法職あたりが理想ですかねぇ?」

「朱連入ってやれよ、この間の闇ギルド戦で一緒に闘ってるし、知らない仲じゃないだろ? 後は夜多架が良いかな、スタン技も魔法も持ってるから」

「ちぇっ……桜花の新ネタスキルを、今度こそ拝もうと思ってたんだがなぁ。それとも、1戦ずつこなして、残りは護衛役でスタンバイしてるか?」


 全く、有名になるとフィールドに出るだけで神経をすり減らしてしまう。困惑する奇面組に朱連と夜多架の参戦を押し付けた央佳は、闇ギルドに少なくない苛立ちの感情を向け。

 新大陸に渡ったら、なるべく冒険者の多い街には近付かない事を心に誓う。もっとも、トーヤ達の護衛とか王都や主要都市に用事がある場合は別だけど。

 こちらがどこにいるか分からなければ、襲われる心配もぐっと減る筈だ。


 戦闘中は占有フィールドが働くと、イベントに詳しい翡翠が太鼓判を押したので。時間も勿体無いし、同時進行で行こうと確定して。何より今回はアンリがいる、変な連中が近付けばすぐに分かる算段だ。

 ちなみに央佳の『精霊の剣』の《招霊モード》だが、朱連の要請によって先程のNM戦で披露しようとしたものの。敵が弱過ぎて、SPを満タンに溜める前に倒してしまうと言う事情が。

 レア級のスキル技だけあって、簡単に使用出来ないのが辛い所。


「桜花も闇スキル伸ばせ、SP上昇スキル豊富だぞ? そもそも盾職するとしても、SPは大事だろうがっ!?」

「うーん、でもなぁ……子供達に貰った細剣を装備したいから、今度そっちを伸ばそうと思ってるんだわ、俺。だからちょっと無理、盾スキルもまだまだカンストに程遠いし」


 子供達が新しいポイントを探している間、央佳と朱連はそんな話を交わしていた。隣で聞いていた牡丹が、それってどんな性能なのかと興味を示して来る。

 何と二刀流のまま、盾スキルも使えるんだぞと大威張りの央佳に。それは凄いねと、ギルドの面々は喧々諤々。色々と意見は出たが、まだスキルが全然足りないとの話を聞いて。

 やっぱりシステム通の翡翠から、意外なアドバイスが飛び出した。


「新大陸の『ヴァルキリアの塔』なら、その武器を強化しながらスキルPも稼げるんじゃない? 一石二鳥だよ、桜花たんはまだ未クリアでしょ? お金は結構掛かるかもだけど、最近は資金も潤ってるんでそ?」

「なるほど、良い案ですね……難点は、装備の強化中はそれを使用出来ない事ですけど、元々スキル不足で装備出来ないのなら丁度良いですし」

「はあっ、なるほど……翡翠も夜多架も頭良いな! 俺もあそこ未クリアだったし、桜花が籠もるなら俺も通おうかな?」


 何故か朱連まで乗り気だが、それを無視しても良い案に思える。やっぱり持つべきは、システムをよく理解している友達だ。もちろん家族全員未クリアだし、挑戦に問題は無い。

 そもそも、何故そんな良コンテンツを無視していたかとの話だが。この塔は基本、パーティ攻略が基本となっていて。例えば、10階まで攻略済みのメンバーと初挑戦の者がパーティを組んだ場合、問答無用で1階からの挑戦となる酷い仕様で。

 手伝い登頂者は入場料ばかり取られる、何とも納得の行かないシステムなのだ。


 もちろん、クリア時のボーナスは2度目の場合全く出ない。そんな訳で、固定パーティで曜日を決めての登頂が一般的だったのだが。一番人気のあった時期、央佳はリアルが忙しかったのと、合成にお金を費やしていたのとで乗っかる時期を逸してしまい。

 現在まで、スルーに至ると言う現状が。


 経験者の牡丹や翡翠の話では、1面クリア自体は結構難しくは無いそうで。クリア毎に振り分けポイントを貰えるので、登頂自体は楽しかったそうである。

 だだし、お金は半端無く掛かるそうで、それ故不人気だったのかもとの事。朱連も、その内バージョンアップで適正価格に値下がりするかなとの期待でここまで来て。

 その願いは通じないまま、現在に至っているそうな。


 そんな事を話している内に、子供達がポイントを見付けて戻って来た。ちゃんと2つ分はあるので、同時進行に問題は無い。余ったメンバーが、周囲の邪魔なモンスターを掃除して行ってくれる。

 さて、何となく久々の家族パーティな気もするが。ハンターP稼ぐぞとの央佳の掛け声に、おーっと元気な子供達の返事。敵の種類が分からないので、役割は曖昧な指示のままだが。

 ネネ以外は、特に指示を出さなくても上手く動いてくれるのも事実だ。


 掃除をしてくれた牡丹たちに礼を言って、2組揃ってNM戦スタートの運びに。何が出て来るかなと、ワクワクしながら見守る子供達。その期待に違わず、出て来たNMは巨大だった。

 見た目はカバとか、そんな感じだろうか。足の数は2倍あるし、フォルムも若干違うので完全にそうとは言い切れないが。何よりの特徴は、その平べったい背中に存在する陸だろうか。

 土が盛ってあって木や草木が生えていて、そこには小柄な動物の気配が。


 何だこりゃと呆気に取られていた央佳だが、戦艦の様なカバはゆっくりと前進を始めていた。このまま潰されたら堪らない、ルカに合図して共に戦線を構築するために前へ。

 挑発スキルを撃ち込んだ後、試しに斬り掛かってみたが。案の定の豊富なHPで、倒すのには相当苦労しそうな気配。そしてやっぱり、背の大陸から飛び立つお邪魔ザコ達。

 それはまるで、戦艦から飛び立つ戦闘機の様な風景。


 鳥の群れは、思いっ切り前線を無視して後衛の祥果さん達を狙い撃ち。それを黙って許す筈も無く、待ち構えていたメイとアンリが迎え撃つ。大カバの背には、新たに小猿の群れが湧き出て来ていて。

 大カバ本体と小猿の弓攻撃で、盾役の央佳とルカも結構大変。小猿には剣先は届かないので、殴るのはもっぱら本体の大カバオンリーなのだが。

 無限に湧く仕様なのか、お代わりの鳥飛行部隊が再び舞い上がって行く。


「パパ、雑魚がまた飛んで来たよ!? これじゃ、ボスの体力削れないよっ!?」

「……鳥を全部片付けたら、範囲魔法で焼き尽くそうか、お父様?」

「……仕方ない、元からネネに断って貰おう。ネネ、こっちおいで!」


 姉達のお手伝いでハンマーを振るっていたネネは、父親に呼ばれて勇んで前衛へ。降り注ぐ矢の雨も何のその、大好きな父っちゃの元へと走り寄ると。

 上の小猿と遊んでおいでとの指示と共に、ポイッと盾に乗せられ抱え上げられるネネ。大ボスの背の上は見慣れない陸の孤島、そこに家族に矢を射かける悪の集団を見付け。

 怒れる幼女は、小っちゃな天罰決行人と化す。


 上の様子は良く分からない前衛陣だが、取り敢えず弓の攻撃は止まった様子。鳥の集団をようやく仕留めたメイとアンリが、大ボスの攻撃へ加わり始める。

 大ボスで怖い特殊技は、『踏み付け』や『丸呑み』位だろうか? たまに『咆哮』も使って来るけど、その範囲がやたらと広くて後衛もスタンしてしまう。

 結構強いが、果たして背中のネネは平気なのだろうか?


 後衛の祥果さんには実はバッチリ見えていて、たまに手を振り合ったりなどしていて。ご機嫌な四女は、孤島に雑魚が出現する度に退治に駆け回っている。

 結果的に役に立っているので、それはまぁ良いのだろう。アンリがソワソワしているのは、自分もあの孤島に乗り込んでみたいからかも。

 ところが、そんな余裕も大ボスのHP半減までだった。


 央佳とルカでスタンする敵の特殊技を決めていたのに、それをチャラにする大暴れ振り。これだけの巨体で暴れられると、抑える役目も大変だ。上に乗ってるネネも、割と大慌て。

 ネネを襲う災難は、それだけでは収まらなかった。唐突に出現した雑魚は、結構な数のゴリラと飛行能力持ちの翼竜タイプが数匹。四女だけで抑え込むのは、ちょっと難しそう。

 そう思いつつも、幼女は取り敢えず《焔竜》で何匹かタゲ取りしてみたり。


「央ちゃん、上でいっぱい敵が出て来て、ネネちゃんが大変そう……!」

「そうかっ……アンリ、済まないが援護に行ってやってくれ!」

「……了解、お父様……」


 了承の言葉がちょっと嬉しそうなのは、三女も敵の背の上で遊びたかったせいかも? とにかく《影渡り》で難なく孤島に登ったアンリは、早速殺戮を振り撒きに掛かる。

 影騎士のサポートもあって、程無くして本体抑え込みチームの安全は確保された様子。それでも大カバの特殊技に『鼻息』での吹き飛ばしや、『突進』のチャージ技が混じるにつけ。

 盾役2人の構成でも、割とキープがしんどくなって来た。


 2度目の大カバのハイパー化は、本当に唐突に来た。つまりは敵のHPバーが25%を割った事になる、どうやら背の上のチビッ子コンビが悪戯を仕掛けたらしい。

 自分達の立っている地面を、容赦なく攻撃のタゲに選んだみたいだ。恐らくアンリの入れ知恵だろうか、急に怒り出した大ボスに全員が大慌て。

 それでも央佳の、一気に削り切れとの号令に従わない訳は無い。


 上から下から、容赦のない攻撃に晒された大ボスは。その巨体での猛反撃も、いつしか尻すぼみに。残りのHPを一気に喰らい尽くし、完全勝利をもぎ取る央佳パーティ。

 ここぞと言う時の瞬発力は、なかなかのパワーを秘めているのは周知の事実。みんなで喜び合いながら、獲得した報酬のチェックにも淀みがない。

 何とアンリは、大カバの背の上に置かれていた宝箱も回収したそうで。


 そんな場所にまで宝箱が設置されていたなど、何ともひねりが効いていると言うべきか。中身は風の術書が1枚と、そこそこの性能の短剣が1本。

 一番の収穫は、たった一戦で得た16ハンターPだろう。


 花組と奇面組、そして朱連たちの混成パーティも、もうすぐ終焉と言った所。こちらも巨大な敵……と言うか、相手をしているのはホラーハウスの様な建物だった。

 やっぱり召喚お邪魔キャラがわんさか湧いていて、物凄い激戦になっている。前衛陣の頑張りで、その群れを押し込んでいる様はさすがだけれど。

 朱連も張り切っているし、その存在感はやはり半端無いみたいだ。


 ホラーハウスは、最後に巨大な死霊モンスターを生み出して勝手に壊れてしまった。ネネがビックリ顔で、父親に向けて父っちゃ壊れたよと指差している。

 確かに自滅はいただけないが、アレを壊せと言われてもなかなかに人のサイズでは大変だ。手抜き工事だったのかなと央佳が答えると、ルカが真面目な顔でそれは良く無いですねと相槌を返して来た。

 真面目な子の、こんな素直な反応はいつ聞いても和む。


 そんな家族内の遣り取りはともかく、即席混成パーティは何とか勝利に辿り着き。喜ぶ面々は、幾らハンターPが入ったか確認の作業に余念がない。

 さすがにハンターPがメインの限定イベントだけあって、ドロップ品は殆ど無かった様子である。家の中に宝箱があったかもと、尖った意見のメイの台詞に。

 姉妹の性格の多様さに、苦笑いの夫婦であった。


「いや終わった、儲かった……2つも新種族ミッション抱えてるけど、たまには軽い限定イベントこなすのもいいもんだな、桜花?」

「全然軽くなんて無かったよっ、あんなに死霊系にわんさかたかられて……ふうっ、とにかくまたハンターPが溜まったぞ、リーダー! 新たな成長の、指針をくれたまえ!」


 余裕を感じさせる、戦闘後の朱連の感想はともかくとして。アルカスペシャルが完璧に決まって意気揚々としているアルカは、次なる必殺技が欲しくて堪らない様子。

 他のメンバーも、戦闘の終了にようやくリラックスした表情をみせている。そこに飛び込んで来たギルマスの通信、王都の主要門前でトーヤ達と合流出来たので、護衛しながらこちらに向かうとの事だ。

 さて、そうなると残りは祥果さん達のレベル上げと言うイベントのみ。


 今回は、トーヤ達と一緒に子供達もパーティに入って貰う予定である。一緒にレベル上げをして、子供達の戦力の底上げも行う心積もりだ。

 姉妹がいれば、レベル上げのペースも数倍に上がるのも利点ではある。トーヤ達にも、もちろん早く新大陸へのチケットを獲得して欲しいとの目論見も。

 とにかく邪魔が入らない事を、祈るばかりの央佳である。


 花組と奇面組に加え、朱連たちギルドメンバーもそのまま護衛についてくれるそうで。仲間の絆が心に染みる、もっともその代わりに手伝いを言い渡されてはいるけれど。

 ネコ獣人の戦争ミッション、これを近々やる事になりそうだ。




 無事に一同は合流を果たし、慣れた様子でパーティ編成はなされて行く。ルカとトーヤで盾役を上手い事こなせるよう、前もっての意思疎通はしっかりと錬られて行ってる様子。

 央佳は離れた場所でそれを見守りながら、同じく護衛に残ってくれた面々と軽い口調でお喋りに興じる。今後の段取りとしては、明日にも祥果さんと子供達の新大陸ミッションをクリアまで漕ぎ着けようとの事で。

 そしてその2日後に、ネコ獣人との戦争ミッションを執り行うらしい。


 央佳に否は無いが、ちょっと忙しくなって来たのは確か。その日程の隙間を縫って、メイの“加護返し”やら装備のお召し替えまでする必要がある。

 ついでを言えば、カスタムし直したメイの戦闘力の、確認もしておきたい。どこか適当なダンジョンに潜るなり、新大陸の敵を相手に軽く戦闘をこなすなり。

 大規模戦闘を前に、万全を期しておきたい央佳である。


 祥果さんと子供達、加えてトーヤ達で組んだパーティは順調そのものだった。とにかく殲滅が速いので、数分ごとに誰かがレベルアップしている感じなのだ。

 トーヤ達にレベルを合わせているので、敵は殆どが格上ばかりである。それなのにこのスピード、子供達のチート能力の面目躍如とでも言おうか。

 そんな訳で、敵のお代わりを求めて移動しながら狩りを進める祥果さん達。


 MP管理は、その祥果さんが担っているので休息もそれほど必要は無い。この滅茶苦茶な狩りのスピードの、一つの大きな要因でもあるのだが。

 前衛陣の中枢を担うルカが、ほとんど傷付かないのもMP節約に貢献している。そんなイケイケパーティと、ほぼ同じくらいの人数の護衛の尽き従い。

 半数以上が、その大喰らい振りに呆れ果てている始末。




 それから数時間後、いつもの喫茶店の個室を借り切っての夕食会には。さっきまでの面々が普通に参加していて、央佳家族のお礼の接待を受けていた。

 賑やかなのは、子供達が練習中のダンスを披露しているため。流行の歌なので、ほぼみんなが歌詞を知っていて大合唱と相成って。女性陣は、子供達の可愛さにメロメロな有り様。

 そんな中、祥果さんはひたすら夕食の準備に悩殺されていたりして。


 間を持たしてくれている子供達に感謝しつつ、少しずつテーブルの上には大皿が並べられて行く。琴子さんの手伝いにより、そのスピードは何とか軌道に乗った様子。

 テーブルの上が格好つくようになったと判断した祥果さんは、旦那に挨拶をそっと振る。朱連に無理やり勧められ、食前酒を嗜んでいた央佳はほろ酔い気分でそれに応じ。

 子供達を呼び寄せて、みんなに感謝の挨拶。


「ええっと、お蔭様でうちの奥さんと子供達も、無事にレベル100を迎えられまして……これもひとえに、皆さんの温かい支援のお蔭だと感謝しております。

この後のミッションのお手伝い、それから新大陸でも引き続き宜しくお願いします」

「「「「お願いしま~~す!!!」」」」


 綺麗にハモッた、子供達の元気なお願いの言葉に。仲間達から温かい拍手と激励の声、それからこっちもイベントの手伝い頼むぞとの朱連の掛け声が。

 そうなのだ、長く険しい人生と言う長い道のり、頼り頼られ人々は歩いて行く訳で。どっちが欠けても不完全、頼るばかりだと半人前なのは当然だけれど。

 頼られるばかりなのも、恐らくどこか間違っているのだ。


 テーブル越しには、リアルで仲の良い友達もいるし、実際の顔も住んでいる場所も知らない仲間もいる。それでも冒険で結びついた絆は、リアルと言える程強固だと断言出来る。

 所詮はゲームと、莫迦にする人だって中にはいるだろう。それは小説だって漫画だって同じ事、ひっくるめればただの時間の浪費に過ぎない訳だ。

 それでもそこには、何らかの創造や交流が必ず生まれる。そんな確信が央佳にはあるし、同じ思いで集まって来る仲間も少なからずいるに違いない。

 趣味を超えた文化交流、人の熱が創り出すコミュニティ。


 ――いつの間にか周囲に仲間が増えている、それだけで幸せな央佳だった。







 ――久し振りに公表、レベル100超えの祥果さんとルカのスキル一覧。




***祥果*** 種族『幻』♀ Lv100


種族スキル《幻身》敵の攻撃を避けやすい《幻視》敵に見付かり難い

《MP量up》MP総量が上がる《幻痛》魔法攻撃力up《幻惑》信頼度up

《幻律》魔法範囲up《才能》スキルスロット+1《幻属性up》種族属性up

《SP量up》SP総量が上がる《上位種》8属性種族に対し優位を得る

 幻スキル《幻突》……防御力無視の攻撃魔法

     《虚仮嚇し》……対象の敵に恐怖を与える

     《幻水想花》……対象のMPを徐々に回復

     《桜華春来》……対象のHPを回復/遠隔攻撃から完全防御

     《震振打針》……対象をスタン・鈍足

     《幻影投影》……術者の周囲に幻影を投影し、姿を隠す

     《化身》……パーティメンバーの能力を得る

     《御霊戻し》……蘇生魔法

 水スキル《ヒール》……対象のHPを回復

     《ウォーターシェル》……対象の防御力up

     《ウォーターミラー》……対象の魔法防御力up

     《フレッシング》……対象のHPを徐々に回復

     《ウォータースラッシュ》……単体攻撃魔法

     《波紋ヒール》……範囲回復魔法

 氷スキル《魔女の囁き》……対象の魔法攻撃力up

     《アイスランス》……単体攻撃魔法

     《魔女の接吻》……指定の敵のMP奪取

     《アイスウォール》……術者の前に氷防御壁

 光スキル《ライトヒール》……対象の状態異常を回復

     《バニシュ》……単体攻撃魔法

     《フラッシュ》……対象の視界を妨害する

     《ホーリー》……単体攻撃魔法

     《光の檻》……捕獲魔法

 風スキル《風属性付与》……術者の武器に風属性を付与

     《ウインドカッター》……単体攻撃魔法





***ルカ*** 種族『龍人』♀ Lv110


種族スキル《竜の神秘》全ステータスup《竜の心臓》MP総量up《竜鱗》防御力up

《竜の双角》攻撃力up《竜の咆哮》魔法耐性up《竜胆》HP総量up

《才能》スキルスロット+1《成長期》経験値up《逆鱗》怒りにより攻撃up

《炎帝》炎耐性超絶up《上位種》8属性種族に対し優位を得る《竜姫》危機に従者召喚

 竜スキル《拍龍》……指定の敵に攻撃・吹き飛ばし

     《臥龍》……術者の攻撃・防御力up/術者は移動不可

     《双翼撃》……単体攻撃魔法(物理)

     《ドラゴニックフロウ》……範囲攻撃魔法

     《竜人化》……術者を一定時間パワーup

     《ドラゴンフィールド》……術者の優位なフィールドを展開

     《天竜》……飛行魔法

     《竜剣》……純魔力を剣の形にして攻撃

     《九頭竜》……超範囲攻撃魔法

 光スキル《ホーリー》……単体攻撃魔法

     《光属性付与》……術者の武器に光属性を付与

 土スキル《アースウォール》……術者の前に土防御壁

 風スキル《風鈴》……対象の敵対心up

     《ソニックブロー》……音波の単体攻撃魔法

 大剣スキル《大切斬》……斬撃威力up

      《上段斬り》……斬撃威力up/敵の詠唱力ダウン

      《胴払い》……斬撃威力up/敵の移動速度ダウン

      《閃光斬》……光複:光属性の斬撃

      《二段斬り》……大剣による二弾攻撃

 盾スキル《ブロッキング》……敵の敵対心up

     《シールドバッシュ》……盾攻撃/スタン効果

     《辣腕》……敵の敵対心up/盾防御力up

     《堅陣》……盾防御力up

     《挑発》……敵の敵対心up

     《ガーディアン》……敵の敵対心up/一定確率で完全防御

後付けジョブ《召喚》……ペットを召喚する

       《指令》……ペットに指示を出す

《毛玉避け》……ペット専用、敵の攻撃を丸まって防御




***祥果さんの取得魔法は、大半が宝珠によるもの(笑)。完全後衛仕様なので、武器スキルにポイント振りは無し。光スキルを中心に伸ばしたが、念願の蘇生魔法は何故か『幻』スキルで取得に至ってしまった。本人は、どうも納得しかねる様子。

 ルカの幾つかのスキルは、『契約の指輪』によって取得したモノ。スキルスロットは増えたけど、ペットスキルによって相変わらず圧迫されて、大剣スキルは常に幾つか封印(笑)。

 本人は、それでもマリモを愛して、使い続ける所存らしい。


両者とも、スキル振りによる補正スキルは略。












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