第一章 第6話 悲劇の再来
ついに、最深部まで来たぞ。...おもいっきり天井に穴があるけど、大丈夫だろう。
「なぁ、レン。ザコ退治は別の日で良いよな。...というか生きてるのか?」
目の前には真っ青な顔をしたレンがいた。
「た、多分...」
「返事が出来てりゃ当分大丈夫だな。そういや、最深部にいるモンスターって一体...」
そう言いかけた時、地面がいきなり揺れたかと思うと、下から巨大なモグラが現れた。
「カエルの次はモグラとか...どうなってんだこの洞窟。」
「次っていうか、かなり飛ばしてるけど..うぅ」
「無理して喋んなよ。ここで何かあっても知らんぞ。」
「ウム、体調ガ優レナイナラバ、入リ口マデ送ロウゾ。」
「そうしてくれるか。ありがた...」
待て、今誰が喋ったんだ?レンはこの調子だし、俺は何も言ってないし...まさか、このモグラか!?
「礼ハ要ラヌゾ。」
巨大モグラは口を確かに動かして、そう言った。
「おぉ、話が通じるのか!そんなら話は早いな。お前さんの尻尾くれ。」
「...ソレデ良イト言ウモノハ、世二存在シナイト思ウゾ。シカシ、先ッポダケナラ...」
巨大モグラは言いかけて、いきなり青ざめながら、
「イヤ、ヤッパリ無理カナー。(汗)」
「何があったんだ。」
何かに怯えるようにして、彼(?)はそう言い直した。
「ト、トニカク、尻尾ハ渡セン!痛イシナ!」
「だろうな。じゃあ、力ずくで奪うまでだ!」
魔力は2/3ほどあるが今は消費しないでおこう。帰りの事もあるからな。だから、勝たなくてもいい。今は奴の尻尾を切り飛ばす事だけを考えるぞ!
ハルスはモグラの尻尾を狙い、駆け出しながら氷の短剣を作り出した。
「”氷剣”!纏え、”雷迅”」
今度は正しい詠唱をして、急加速しながら尻尾を斬りにかかった。
無論モグラも斬られたく無いので、尻尾を鞭のように動かしハルスの腹に当て、壁に叩きつけた。
「遅イナ。マダマダダ。貴様ジャ”アノ方”ニハ勝テンゾ。」
「くっ!あの方って誰だよ!勝ったら教えろよっ!”モードチェンジ”」
もう一度ハルスは同じように突っ込んだ。ただ先程とは違い、タガーを刀みたいに形を変えて、腰に携わるように構えていた。
「同ジダ。フッ飛べ。」
「来たな!”居合い一閃”!」
今度は叩きつけられずに、尻尾を半分くらいの長さから、真っ二つに斬った。
「痛ァアアアアアイ!」
「え、そんなにか。..何か、すまん。」
「イ、イヤ、ダ、大丈夫ダ。」
「..そんなに痛いのか。”ヒーリング”」
そう唱えると、モグラの下に大きな光の魔方陣が現れ、尻尾の傷口が塞がった。
さすがに生え治すのは無理だけど、まだマシだろ。
「オォ、アリガタイナ。ドウジャ...ア、イエ、ドウデショウ?」
誰にモグラは話しているんだ?さっきも何かに怯えてたような...そういや、レンのやつもいないじゃないか!
「おい、レン!何処にいる!大丈夫か...」
いた...誰かと一緒みたいだけど。あの影見覚えあるな。いつも見ているような。
「これなら安心して、仕事に行けそうだな。」
「まさか、師匠!?」
レンの隣に立っている男..ハルスの師匠はニヤリとしながら、
「忘れ物をしてな。部屋にはお前が居なかったし、近所に聞いてみたら洞窟に行ったって言うからな。折角だから腕試ししてやろうと思ってさ。ついでにこの洞窟に仕掛けをたっぷりしたぞ。ちなみに言うと、この洞窟にモンスターはこいつしか居なかったぞ。」
「ハ?じゃあモグラはって?」
「ん?あぁそいつ以外は俺が召喚したり色々と、小細工したぞ。後、そいつは元からいたやつで、洞窟の主だ。今日の朝に俺の支配下に置いたけどな。」
「じゃ、じゃあ入り口にいた大量のザコは...」
「俺が召喚した。」
「カエルは」
「同じく。」
「ふざけんなぁああ!!」
初の師匠ですね。次はとりあえず村に帰るまでになると思います。