弟の話
僕が日頃味わう恐怖を、存分にご堪能ください。
どうぞ!
僕の弟の話をしよう。……ぶっちゃけ、僕の人生の中で一番の恐怖の対象は、弟だ。
限定すると、『弟が眠っているとき』。彼の恐怖は、彼の意識がない状態で発揮される──。
僕の弟は寝相が悪い。寝言もうるさいしね。……うん、もうお気づきだろうが、その『寝言』、『寝相』が“恐怖”なのだ。
ある夜。僕は自分の部屋に行く途中、弟の部屋を通りがかった。まだかなり早い時間だったが、弟はすでに夢のなかだった。
……寝んのはえーよ。とか。僕はそんな感想を抱きながら、部屋に入ろうとして、ふと、弟が上体を起こしていることに気がついた。
──あれ、起きたのか?
そう思って、僕は後ろを振り向いて……戦慄した。
寝ていた。少なくとも、目はまったく開いていない。──それなのに、弟は。
笑っていたのだ。口を三日月の形にして。
あと、夜中に寝ながら呪文とか唱えていたり、爆笑し始めたりとか、しょっちゅうです。
弟の話です。