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Burst・Error ~鬼~  作者: みどー
プロローグ
2/16

~怜奈~

 その日は、雨が降っていた。

 噴出す血。

 雨で流れる血。

 荒い息。それはどちらの呼吸か。

 視界は紅く染まっていた。


「……ぁ…ぅ」


 既に標的は息絶え絶え。

 遠からず息を引き取るであろう。

 それでも、標的は動こうとする。


「あまり動かない方がいい。死期を早めるだけよ」


 そう助言しても、標的は動くことをやめない。

 当たり前か。既に標的には言葉は通じないのだから。

 標的は全身を震わせながら、ポケットから便箋を取り出す。


「こ……れ……」


 その便箋を私に差し出す。


「!!……あなた…正気を…」


 私は標的の声が聞こえる位置まで耳を標的の口元まで近づける。


「こ…れを…ぅう!!……彼…に…」

「……ええ。わかったわ」


 私は便箋を受け取る。


「あり…が…と……」

「!!」


 それを最後に標的は息を引き取った。


「何故…なんでよ……」


 死人への投げかけ。無意味と知りながら、口に出さずにはいられなかった。


「私はお礼を言われる筋合いなんてない!!

 だって……私はあなたを…」

「そんなに自分を責めるものじゃないよ」


 突然、後ろから声をかけられる。

 私が振り向くと、そこには見知った男が立っていた。


「あなた…なんでここに…」

「いや…心配になってね。来てみたら案の定って感じだったね。

 あんまり、自分を責めるものじゃないよ。これは仕方ない事なんだから」

「……」


 それは慰めのつもりなのか。

 けれど、それは、私にとって慰めでもなんでもない。


「ここは僕がなんとかしておくから。君はそれを届けに行かなきゃならないんだろ?」

「……ええ。ありがとう」


 私は彼にお礼を言って、その場から離れた。



 それは慰めにならない。

 私が彼女を殺した事実は変わらないのだから。

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