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Burst・Error ~鬼~  作者: みどー
開幕
11/16

第八幕「神と鬼」


『覚悟ができたな。ならば目覚めよ。真なる力に。お前は我となる。』




 気づいた時、父と母は動かなくなっていた。一緒に車に乗っていた子は……それを見て笑っていた。

 怒り、憎しみ、悲しみ。全ての感情が僕の中で渦巻き、弾けた。


 ユルサナイ


 僕はその子を思いっきり睨みつけた。


 たったそれだけで、その子の頭は弾け飛んだ。おびただしい血。残った小さな体。


 僕は―――人を殺してしまった。


 うわぁあああああああああああ!!




「オワリダ。シネ。」


 御堂は右手に風を圧縮させ、刃と化す。そして、真藤一輝の体を貫く。

 が―――。


「ナ、ナンダト!」


 御堂が一輝の体に右手を突き入れる、そのタイミングに合わせ、一輝は脇差を彼の右手に突き刺していた。


「うぎゃああああああ!僕の右腕があああ!」


 一輝は御堂の突きを防いだだけではなかった。そのまま圧縮された風を切り裂き、彼の手に脇差を突き差し、そのまま、腕ごと切り裂く。


「これで、その腕は使いものにならないな。」


 真藤一輝の一言。しかし、それは今までの彼の言葉とは明らかに違う。


「キ、キサマぁアアあ!」


 怒りに駆られた御堂は刃を放とうとする。が、しかし―――。


「ぐあ!!」


 なんとしたことか。殺人鬼・御堂は廊下の端まで吹き飛ばされてしまったのだ。


「ガハ……なんだ…今の衝撃波は……それに何故、あんな刃物如きにボクのウデが…」


 大きな疑問。ありえない事。彼の腕に切れないものはない。それが逆に切り裂かれたのだ。


「この刀は元々、使用者によって形状も強度も変わる。そういう妖刀だ。」

「な、ナニを……!!キ、キサマ、その眼は―――」


 驚くのも無理もない。一輝の目は、先ほどまでの赤い眼から変わっていた。

 右眼は金色に光り、左眼は紅く燈っている。


「ナ、ナンダ!?ソノ眼ハ!!」

「知ってどうする?キサマはここで死ぬ。

 偽者風情が、調子に乗るな!真の鬼であるオレに勝てるとでも思ったのか?」


 ゆっくりと一輝は御堂に近づく。


「よ、寄るな!!ソノ眼でミルナぁアア!」


 恐怖。初めての恐怖。

 殺人鬼とって恐怖など、これまで微塵も感じたことはなかった。

 紅い眼は未来を予知する眼。

 黄金の眼は破壊の眼。

 それが、真藤一輝、神の―――否、真なる鬼、鬼神の力。

 紅い眼は未来を予知し、相手の動きを先読みするためにある。

 そして、黄金の眼は、視界に入る対象物に衝撃波を与え破壊する。その威力は自由自在。その気になれば、岩など簡単に砕ける。

 だが、鬼神の力の本領はそんなところではない。


「キサマは―――何者ダ…」


 恐怖に怯えた殺人鬼の疑問の投げかけ。


「鬼神―――前鬼。貴様らなどでは遠く及ばない存在、神だ。」


 それは真藤一輝の言葉ではない。紛れもなく鬼神としての言葉。真藤一輝の中に眠っていたもう一つの人格。それこそが、鬼神・前鬼だ。


「終わりだ。」


 紅い眼は未来を予知する。だが、逆に言えば、それは幾多の不確定な未来から一つ未来を選び取り、決定するということ。

 例えば、ここにいる殺人鬼をバラバラにするという未来だけを選び取り、確定させ、それを現実にする。それがこの紅い左眼には可能だ。だが、根拠なく未来を確定させることはできない。未来には、そうなる原因が必要なのだ。

 しかし、ここにその原因がある。黄金の眼は破壊のみに特化したもの。もし、黄金の眼で見たものを粉々に粉砕するという、未来を紅い眼で確定させることができれば、それは実現する。

 つまり、紅い眼と黄金の眼が同時に使われた時にこそ、鬼神としての本領が発揮される。そこに破壊できないものはない。


「やめろ!ヤメロ!!ヤメロヤメロヤメロ!!ソノ眼デミルナアアアアアアア!!」


 ―――――――――

 ――――――――

 ―――――――

 ―パリーン―


 世界は崩壊した。



 鬼神の視界に入ったすべてが、崩壊した。無論、殺人鬼・御堂志岐も例外ではない。

 だが、彼もまた、鬼と化してしまったもの。例え、四肢を失っても、中核となす脳さえ無事であれば生き続ける。彼は不運にも、生き残ってしまった。


「イタイ!イタイ!イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!イヤダ!し、しししシシシシシ死に、シニ、シニ、タクナ、イ」


 恐怖。嘆き。絶叫。死を前にした叫び。


「それが最後の言葉か。哀れだな。」


 鬼神は、黄金の眼で殺人鬼だったものを睨みつける。

 殺人鬼・御堂志岐は消え去った。鬼により支配され、その鬼により、消される。鬼に囚われた、哀れな少年の最期だった。





 僕は、御堂志岐を殺した。鬼として目覚め、鬼神となった。けれど、その行動は全て僕の意思。御堂志岐を殺した、その行為は全て僕の意思だった。ただ、それを鬼神が代行しただけ。

 僕は御堂を殺すことを望み、殺した事実は変わらない。

 僕は人を殺したのだ。


 だが、これですべて終わった―――。


「いや―――まだだ―――」


 まだ、終わっていない。なにもかも。


 僕は御堂の亡骸をそのままに歩き出した。


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