第四話 夢の中
いつもとは違う、ふかふかのベッドの感触で俺は目が覚めた。
まぶたをゆっくり開けるとシャンデリアで装飾された華やかな天井が
目に飛び込んできた。ここがどこなのか分からなくて慌てて半身を起こすと、
こわばった首筋がグキリと嫌な音をたてた。
痛みをこらえ辺りを見回すと、ゴージャスな花柄模様の壁や
レッドカーペットで敷き詰められた床などが目立つのが分かる。
それに俺が乗っているベッドの大きさと言い、(三人ぐらいなら余裕で寝れる)
まるでどこかの王室のようだ。
「どこだよ……ここ」
俺の記憶が正しければドラクエ10のプレイ中に寝落ちしたのが最後。
どう考えてもこんな場所で目を覚ますわけがない。
つまりこれは夢……って事か。
確か夢の中で夢だと気づくと、好きなことができるとか聞いたことがある。
明晰夢って言う名前らしいがまあそれはどうでもいいか。
とにかく夢ならすぐ目が覚めるだろ。とくにしたい事がある訳じゃないし、
このままもう一度寝てしまおう。正直、まだ眠いんだ。
「燈夜様、お目覚めですか!?」
横になろうとした瞬間、勢いよくドアが開かれ、
軍服を着た一人の中年が入ってきた。
これも夢の演出ってやつか?夢ぐらい綺麗な美女を拝ませてくれよ。
最近は生意気な妹ぐらいしか女を見れてないんだからな。
「お目覚めですが今からもう一度寝まっす」
眠りを邪魔されたと言う苛立ちから適当に中年をあしらい、横になる。
「な、なりませぬぞ!!そんな余裕がない事はあなたが一番知ってるでしょう!?」
そんな俺の態度が気に入らないのか中年は憤慨した様子でまくしたてる。
でも俺は事情なんて知らないし、興味ない。そして夢の中ぐらい怒鳴らないで欲しい。
「うっせーよおっさん。寝させろ」
ヒステリックにわめき散らす中年に冷たく言い放つと、
中年はこの世の終わりの様な顔をして立ち尽くすと、
しばらくしてトボトボと部屋を出て行った。
「一体何なんだったんだ……?ま、いいか」
んな事より眠い。夢の中でまた寝るって言うのも複雑な気分だが、
次目が覚める時はきったない六畳の自室だろう。
起きたら早くドラクエを楽しみたいものだ。
そう思いながら俺は深い眠りについた。
あれから何時間たったのだろう。眠気が残ること無くすっきりと
目覚める事ができた。のだが
「おい嘘だろ……?」
思わず絶句した。目覚めた場所は狭苦しい自室ではない。
視界に入ってくるのはふかふかのベッド、見覚えのある天井のシャンデリア、
床のレッドカーペット、花柄模様の壁。
間違いない。俺はまだ、夢の中にいる。