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第二話 ゴミ捨て場にて

「ありがとうございましたー」


彩香に頼まれた参考書を買い終わり、店員の営業スマイルを受け店を出ると、

強烈な日差しが俺を襲った。


「あっつ……」


あまりの暑さにもう一度店内に戻りたくなる衝動に駆られるが、なんとか耐える。

これもドラクエの為と考えれば少しは苦痛が和らぐが、きついものはきつい。


幸い、買いに行く前は太陽が雲に隠れてたから大分楽だったけど、今は雲ひとつ無い。

あまりにもギャップに違いがありすぎるからか、

心なしか体感温度が二度ぐらい上がってる気がする……。


てかこのままじゃマジで倒れかねないぞ……。

もう参考書買った時のおつり使ってジュースでも買おう。

彩香には怒られるかもしれないけど、まぁ後で返せばいいよな。



丁度目の前にあった自販機に金を投入し適当な炭酸飲料を買う。

取り出した時のこのひんやりとした感触がたまらない。


「そして超うめぇー……」


まさに至福の時。これはもっと大切に、ゆっくりと休みながら飲み干したい。

そう思い辺りを見回すと、ゴミ捨て場の隣に比較的まだ綺麗なイスが捨てられていた。

きっと他のゴミが積み上げにくいから横に寄せといたんだろう。


ゴミ捨て場の隣で休息するのは複雑な気持ちだが

そんな事は言ってられない。とにかく座ろう。


「ふ~。やっぱ炭酸はうめぇわ」


イスにガッツリともたれかかり一息をつく。

最早通行人の視線なんておかまいなしである。


にしても、こんな状態の良いイスを捨てちゃうなんて驚きだな。

他にも、パソコンや、テレビ、まだまだ現役で使えそうな物が捨てられている。


ホームレスがよくゴミを物色する理由が分かる気がするな。

なんかこう、宝探し的な気分も味わえそうな気がするし。



俺も何か欲しくなってきたけど、さすがにそんなみっともない事をする勇気は無い。

それに、休憩したとはいえ、テレビなどを持ち帰る余裕なんてほぼ皆無だ。


だから眺める事だけを楽しもう。ジュース飲み終わったらすぐ帰るんだし。


「てかゲームとか普通に捨てられてんじゃん……」


パチスロ必勝法、スタープロレス、THE競馬などなど

どうやら親父世代に人気があるゲームが中心に捨てられている様だ。


まぁ、こういうゲームなら捨てられてても結構自然な光景なのかもしれない。


ゴミの中でも際立って酷いのは、トマトジュースをこぼしてしまったのか、

赤く染まったピ○チュウのぬいぐるみ。これは恐い。トレーナーに見捨てられて

しまったんだろう。可哀想に……。

ピカ○ュウに冥福を祈りつつ色々と捜索するが、

耳が無いうさびっ○、上半身だけが何故か無いヒーロー戦隊のレッドなど、

後半はそんな物ばかり見つかって気味が悪い。


「よし……そろそろ帰るか。彩香に怒られるのも嫌だし」


いつのまにかジュースもからっぽになり、帰宅する為腰をあげると、

ゴミを漁りにきたのか、野良猫が数匹こちらにやってきた。


案の定、野良猫達はゴミ山に頭を突っ込み始め、

散らばるゴミで服が汚れるのを回避するため、足を進めようとした。

その瞬間、元々バランスが悪かったのか、一メーター程のゴミ山は

音を立て盛大に崩れ落ち、野良猫達ははびっくりして一斉に散らばっていった。


辺りはちらばったゴミと俺だけが残され、

近所の人に片付けとけよなんて言われない内に俺もずらかろうとしたが


「これって……」


ゴミの中からある物を見つけてしまった。


カッコイイ勇者の絵と、見るからに悪そうな魔王がプリントされたパッケージ。

パッケージ横のタイトル欄に書かれたドラゴネスクエスト10の文字。

間違いない。


「最近発売されたばっかりのドラクエじゃん!」


俺は、最近は金欠だったし、まだ前作がクリアできてない事もあって

次のバイトの給料日まで買わない事にしてたのだ。


でも、何でだ? まだ発売されて一週間も経ってないのに

捨ててしまうなんて明らかにおかしい。


あまりにもつまらなかったのか?いや、アマゾンのレビューでは

殆どのレビュアーが星五つを叩き出して名作だと言っていたから

その可能性は薄いだろう。


それに発売されたばかりのゲームは高額で売れる。

それを捨てるなんてもったいない事はまず考えられない。


本当に分からんな……。  でも、





         捨ててあるならもらってってもいいんだよな?






















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