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オープニング

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『おぉ!魔王を倒しに行ってくれるのか勇者よ!では

おこづかいと竹槍を持っていくがよい。期待しておるぞ』


テレビの画面には、一方的に喋り続ける王様と勇者の姿があった。

世界的に大人気なRPGゲーム、ドラゴネスクエストの定番シーンである。


「とりあえず、はスライム狩りしてレベルでもあげるか」


そしてそんなゲームにどっぷりハマっている俺、佐伯燈夜は

昨日からぶっ通しでこのゲームをやっている。

正直言って疲れるが、やめ時が見つからないのがこのゲームのいやらしい所だ。


ドラゴネスクエストは現在、ナンバリングタイトルで10まである。

ついさっきまでは、少し古いドラゴネスクエスト8をプレイしてたが

クリアしてしまったので、たった今9を始めた所なのだ。



ふと、時計を見ると針は午前四時を示していた。

「げっ……!もうこんな時間かよ。夏休みとは言えこんな時間まで

起きてるのがバレたら彩香に怒られる……!一旦止めよう……」


一歳年下の妹にどやされるのも癪なので急いでセーブポイントの教会に向かう。

あ~クソっ!何で街から大分離れた所でスライム狩りしてたんだ俺!

教会にたどり着くまで結構時間がかかるぞこれは……。


急いでキャラクターを移動させてると、画面が急に暗転し、画面が切り替わった。


「あぁっ!何でエンカウントしちゃうんだよ!」

画面は戦闘シーンに切り替わり、

ニヤニヤした顔の青い物体、俗に言うスライムが映し出された。


まだまだキャラのレベルが低い為、スライムを倒すだけでも時間がかかる。

そして彩香は高一なのに夜九時に寝て朝四時には起きる超健康体。

どう考えてもこのペースじゃセーブポイントに間に合わない……。


「まだ序盤だし、もうこのまま消すか……?」


            ふと、そんな案が頭をよぎった。


悔しいけど、もうそうするしかない。

悲しくもデータが消えてしまうが彩香に怒られるよりはまだマシだ。


俺は覚悟を決めてハード機の電源を止める。

何時間も電源をつけっぱなしにしていたせいか、ありえないぐらいハードが発熱していた。

これからはもっと小まめに休憩させないと壊れちまうな……気をつけよう。


それからテレビを消し、電気を消して全然眠くは無いがベッドに寝転んだ。

彩香は毎日起きてから、俺が夜更かしして無いか確認しに部屋に来る。

だから寝たフリが必要なのだ。




案の定数分たつと、彩香の目が覚めたのか隣の部屋から生活音が聞こえてきた。

寝起きだと言うのにきびきびとした足取りで動いているのが僅かな振動で伝わってくる。

そしてその足が俺の部屋に向かってきているのも伝わってきた。


足音が部屋の前で止まり、横スライド式のドアをスーッと静かに開け

彩香は部屋に入ってくると、うわ、と小さく漏らした後「暑い……」と呟いた。


しまった……!ハード機が発熱しすぎて室温自体が上がっていたのか……!

ゲームに夢中で前々気づかなかった。


ビビリつつ薄目で彩香の反応を窺うが、

どうやら疑ってる様で色々と物色しているみたいだ……。


これはやばい。もしも彩香が

発熱したハードに手を触れたりしたらバレるのは明白だ。


俺の体が生まれつきあまり強くないからか、

彩香は昔から俺の体調管理には気をつかってくれている。

それだけならまだ全然良い。凄く可愛くて優しい妹だと思う。

だけど、彩香は俺が体に良くない生活をしていると

武力行使で止めてくる。それも怪我するほどの強さで。


それが怖いから今ビクビク震えて寝たフリをしているんだ。


そしてその恐怖はたった今ピークを迎えた。

ついに彩香がハード機に手を触れてしまったのだ。


そして俺は恐怖ながらもいつのまにか、冷静になっていた。

人間、死を覚悟した時は逆に冷静になると、死んだじっちゃんから

聞いた事があるが、本当にそうなのかもしれない。


「ねぇ、燈夜。ゲーム機が、ついさっきまで

プレイされていたのか、凄く発熱してるんだけど」


「はい……」


「早く寝ろ」





          この日俺は全身打ち身で動けなくなった。



ありがとうございました

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