FILE8:黒鳥
目の前にいるその人は高貴な雰囲気をした服装で立っていた。
この前とは違う服。衣替え?
「トーナメント中止になってしまいましたね。残念です。私も参加する予定でしたから」
あなたも出る予定だったんですか。
もし対戦していたらこの前の魔法で葬られそうだ。
と,それより
「さっき黒い鳥……だと思うんですけど,ここの上空飛んでたのを見ました。今回の件ってやっぱりその鳥が関係あるんですか? 」
そういうとその男性は微笑を浮かべてぽつりとつぶやいた。
「やはり気づきましたか」
とりあえず俺の推理は当たったらしい。
あいにく俺のメンバー三人はちょうど受付の掲示板に張り出されているトーナメント中止に関しての詳細を見ている。
この会話も聞こえてなさそうだ。
「フィンブルの森の中枢に忍び込んだのもその黒い鳥です。管理者はサーバダウンなんて言ってますけど,そうじゃない。何か大事なものが奪われた」
大事なもの?
それよりあなたは何者なんですか?
一般プレイヤーには見えないんですが。
「今は推理好きの魔道士ということでまとめておいてください。それでは私はいろいろ調査しに行こうと思いますのでこれで」
嫌味の無い微笑を俺に向けてその人は人ごみに消えていった。
黒い鳥か。
鳥に忍ばれるとは思いも付かなかっただろうな。
フィンブルの森……ね。
「アツシぃ? 今の人だぁれ? 」
なんとも都合のいいタイミングで帰ってきた妹達。
さて、今の会話は教えるべきか否か。
「あれってこの前俺たちを助けてくれた魔道士さんじゃね? 強かったよなぁ」
そうそう。
とりあえず俺はそのときのお礼をしていた。と言って置いた。
きっと今の話をしたが最後。
この二人はすぐにフィンブルの森に乗り込むだろう。
妹だってメロンちゃんに付いていくだろう。
と,なると俺も行くのが道理だ。
こんなレベルじゃ返り討ちにあう気がする。
「まぁいいわ。でねでね。私が思うところによると,この原因はフィンブルの森にあるのよ。つ・ま・りそこを叩けば良い訳。簡単な話じゃない? そこで待ち構えて悪者が出てきたら叩く。4人がかりで徹底的に袋叩きで一撃のキューティアタックよ! 」
最後のほうでテンションがあがって多少なりとも壊れ……それともこれが元なのかは知らないが,4人って事は少なくとも俺も混ざってるな。
しかもフィンブルの森って言ってるし。
悪感が……。
「ねぇメロンちゃん? 一応聞くけど,私たちで乗り込むとか言わない……よね? 」
妹の引きつり笑いをどう捕らえたかは知らないがメロンちゃんは悪巧みを考えた小学生のような顔で高らかに宣言してしまった。
「その通り!! 私たちが救ってあげようじゃないの! この世界を! 」
以上。
ここまでが今に至る会話だ。
今?
残念ながら俺の目の前の注意書きにはこう書かれている。
この先フィンブルの森
一般プレイヤーの進入禁止。
本当に来てしまった。
大体進入禁止なら一般プレイヤーは入れないようにプログラミングすれば良かったじゃないか。
そもそもこんな風に見つかる場所に置かないでくれ。
と、言うかどうやって見つけたんだ?
「掲示板でいろいろ聞いたの」
平然と言ってのけたメロンちゃん。
わざわざログオフしてネットで調べて帰ってきたそうで。
念のためその間レベル上げをしていた俺たち三人も偉いとは思う。
「アツシと何かするときって必ず何か起こるよな。学校で肝試ししたときもドアの開く音がして見に行ったら誰もいなかったとかな」
あれはタイミングが悪くて誰にも会わなかっただけで別に何でもないだろ。
さて,本当に行くのか?
目の前は森林。立ち入り禁止。
帰るなら今。
「さぁサンセット出発! 」
帰れなかった。
結局俺たちはフィンブルの森へと歩み行っていた。




