FILE3:on Field
即席のような流れで設立されたサンセットこと俺とながやんの二人のチーム。
ところで。
「俺たち目的とかある? 」
どうやらこの世界では色々な事が出来るらしいが,せっかくチームとしてパーティ組んだんだし,何か目的があってもいいと思うんだが。
「じゃあ……とりあえず雑魚には勝てるくらいにレベル上げようぜ! 俺たち今1レベだろ? アイテムとか装備も初期装備のままじゃどんどん置いて行かれちゃうしな。そういえば俺たちのステータスってどうなってるんだ? 」
ステータスか。確かに気になる項目ではある。
もう慣れはしたがステータスが見たい。そう思うだけでステータス画面が開いた。
チーム:サンセット
アツシ,二刀剣士,レベル1
ながやん,二色魔術師,レベル1
「……なるほどね。確かにこのままじゃ酷いよな。じゃあ手始めにレベル上げでもするか」
レベル上げをするためには敵を倒す必要がある。
そして敵がいるフィールドへはエルポアの南門から行ける様だ。
何でそんな事が分かるのかというと俺の視界の右上にマップが表示されたからだ。
本当に便利すぎてこの世界に住み着く人もたくさん出てきそうなんだが気のせいか?
早速南門に着くとそこには俺たちと同じ事を考えているような人がたくさんいた。
「うぉ〜! すげぇな! 大混雑満員御礼完売中って感じだな! 」
訳わからねぇよ。
ながやんは子供みたいにぴょんぴょん跳ね回りながら俺の周りを子バエのように周っている。
「とりあえず行こうぜ。先越されるぞ」
そう言ってながやんの手を引いて南門の受付らしき女性に話しかけた。
これまた超可愛い。ってか,さっきと同じ人?
「こんにちは! ここではフィールドへの転送を行なっています。転送場所はパーティの平均レベルによって変わり,一度行った場所へはいつでも行く事が出来ます。お客様方の平均レベルは1ですので転送場所は森林モーロン,目的はボス撃破となります。よろしいですか? 」
「イエッサ〜! 」
ながやんの何とも気合の入っていない返事と受付女性の笑顔を最後に俺たちはエルポアの南門から森林モーロンへと転送された。
……本当の森じゃないのか? ここは。
明らかに森のにおいがするし,木は本物のようだし。
このゲームの底が知れないね,全くさ。
「なぁなぁ。あれって敵じゃね? 」
ながやんが指差す方向には鷲みたいな鳥が一匹。
強そうに見えるんだけど。
「大丈夫だって! ここってレベル1用のマップだろ? だったら瞬殺されたりはしないだろうしさ」
それもそっか。
その鷲に近づくと自動的に俺の両手に剣が出てきた。
剣の名前は……ぷ,プラスチックソード?
プラスチックって……そりゃ無いぜ。
「お前プラスチックってさぁ。散々だな。俺のはっと……ま,魔法用の本……」
プラスチックソードと魔法用の本。
明らかに弱い装備名感丸出しだがレベル1なんだ。しょうがないだろ。
「戦えない事はないんだろ? 行くぞ!! 」
俺は不慣れな構えで剣を二つ構えた。
プラスチックだからかは知らないが軽いので振りやすそうだ。
学校の授業で少し剣道もやった事があるし,……まぁどうにかなるだろ。
俺は思い切って鷲に近づき思いっきり鷲の頭に剣を叩き付けた。
すると見事にポキンという音とともに……へ?
見事ポキンと言う音とともに俺の剣は2本とも折れていた。
俺の目の前には俺と同じくらいの背丈の鷲。
ありえねぇ。
鷲は羽根を広げて思いっきり風を起こしてきた。
覚えているのはそこまでだ。
俺もながやんもその一撃でエルポアの南門まで戻ってきていた。
もちろんレベル1で。
「今のでレベル1専用エリア……かよ」
今は受付の美人おねぇさんがエリアを間違えたんじゃないかと言うことしか思いつかない。
ながやんは俺の横で伸びきっている。
そもそもプラスチックソード折れたけど?
俺は再びステータスを確認してみた。
プラスチックソード:破損
おいおい。
どうやら壊れた装備はそのままらしい。
これじゃあ俺レベル上げどころじゃないぜ。
「そういやさぁ,俺たち所持金あったっけ? 」
所持金。ながやんの一言で俺は思いついた。
もしかしてプラスチックソードはあくまで初期装備で,道具屋とか武器屋でアイテムを買いなさい。
そういうシナリオなんじゃないかと。
案の定読みが当たり,俺たちは各自最初から所持マネー3000という状態だったことがわかった。
しかもそのマネー確認画面を開いたときに
今の装備はあくまで初期装備です。
武器屋,防具屋はエルポアの町の東にありますのでご活用ください。
だとさ。
こういう所は親切設計じゃないのね。ブレイバー。
最初に教えろよ。
きっと半数くらいが俺と同じ運命を辿ったさ。
仕方ないので俺たちは東へ向かい武器を買うことにした。
「へい! らっしゃい! 」
武器屋の店主はこれまたいかにも鍛冶屋といった容姿で俺を待ち構えていた。
そして売っているアイテムリストが表示された。
銅剣:200
銀剣:1000
金剣:2500
プラスチックソード:10
……ひどいよな。プラスチックソード。
俺の場合二本装備する必要があるので控えめに銅剣を二本買っておいた。
なんせ防具も必要なんだからな。
「買い物完了っ! 」
ながやんの声がしたので振り向くとそいつは魔道書を手に抱えていた。
「アツシも買ったか? いやぁ……最初に気づくべきだったよな。こういうのさぁ」
まったく。
防具のほうもやっぱり初期装備だったらしく防御力0。
店で売ってる一番安いもので防御力15。
この差は何なんだろう。
とりあえず俺とながやんの買い物も終わり俺たちは再び南門の前にいた。
「よし! こんどこそあの鷲を仕留める! 」
お前はさっき何にもしてないだろ。
そう思いつつも転送は開始され再び同じエリアが俺たちの前に現れた。
そしてさっきと同じ鷲もいる。
「今度こそ行ける! ……はず」
俺の不安を少し増幅したながやんの語尾だったが,行くしかない。
俺は先ほどと同じような感じで鷲に切りかかった。
すると先ほどとは違いバスっと言う効果音とともに鷲の頭上に64とか言う数字が現れた。
きっとダメージ数だろう。
そして反撃をしようと鷲が羽根を広げたときにはながやんが魔法を詠唱し終え,小さな炎が鷲を囲んでいた。
ダメージ76。
その表示とともに鷲は姿を消した。
なんかさっきと違って拍子抜けだな。
「おぉ! 鷲がご臨終したぞ! 俺たち強いじゃん! 」
ご臨終って……。
とにかく雑魚には勝てるようにはなったみたいだな。
「ま,油断しないで行こうぜ。ボス倒さなきゃいけないんだろ」
ここの目的はボス撃破。ボスなんだから今の鷲より強いだろうし。
俺たちは森の中をあちらこちらと歩き回りその都度見つけた雑魚はすべて倒し,いつのまにかレベルも9になっていた。
「俺たち強いよなぁ! 武器買ってから負けてないじゃん? やっぱ才能があるんだよな! 」
ちなみに俺はこのセリフを3回は聞いた気がする。
こいつのハイテンションはしばらく続きそうだ。
……しっかしボスはどこだ?もう雑魚は一撃で倒せるくらいになってるし,そろそろお出ましでも良い頃だが。
フィールドでは町と違ってマップは出ないためここがどこなのかは俺自身分かっていない。
同じところを回っている気はないが,ボスらしい面影も見ていない。
スマン。訂正。
目の前に現れた。
「うぉぇ? なんじゃこりゃぁ! 」
ながやんの驚きようも分かるが,今の言葉じゃこいつの説明には足りてない。
目の前に聳え立っているのは大きな大樹。
そいつに口があって手が生えている。
しかも分かりやすいことにその大樹の頭上に”BOSS”としっかり表記してある。
ただ問題なのはそのでかさだ。
6メートルくらい……か?
とりあえずでかい。
「こいつを倒せばこのフィールドはクリアか。じゃあさっさと倒しちまおうぜ」
別にでかくても倒せないわけじゃないだろうし,俺は恐怖心は抱いていなかった。
今までに倒してきた雑魚の数も軽く100くらいはあっただろうし,最初のエリアでレベルが9まで上がったんだから負けるはずもないだろう。
「まぁ,そうだよな。じゃあ行くぞぉ! 」
俺たちはその大樹に向かって一斉に攻撃を仕掛けた。
が,響いたのは鈍い音のみだった。




