観測者
短編連作です。
「子猫君」
子供がどこかで子猫のぬいぐるみを無くす。
母親に手を引かれてる4-5歳児の女の子。
どこかの田舎の小さなバス停のテーブルの上に置き忘れた。
この物語の主人公は子猫のぬいぐるみ。
タイムラプスの様に時間が流れていく。
ある時は おじいさんがバスを待ってる。
ある時はバカカップルが喧嘩をしてる。
またある日 バス停に自動販売機が設置される。
よなよな自動販売機さんが子猫君に話しかけてくる。
仲良くなった二人。
いつも二人は仲良し、優しい自動販売機さん。
無口な子猫君。
もうさみしくない。
数年後 ある日の夜 飲酒運転のおっさんが自動販売機に突っ込み
自動販売機さんはトラックで運ばれて行った。
さようなら・・・子猫君・・・。
自動販売機さんの最後の言葉だった。
バス停の前では地主と飲料メーカーの営業が話しているが
あまり売れていなかったらしく自動販売機は再設置は、されない事に。
また十数年がたち 子猫君は色あせ。
ボタンの目は片方ない。
そこにリクルートスーツの女性が来た。 あぢー、暑すぎる。
バスの時刻表を見ると一日一回しかバスが来ない。
「どんだけ田舎だよ」っと愚痴る。
彼女は子猫君をじっと見て ここバスくんの?
タクシー代とか無理だから・・・・。
ねえ 来る?・・・。
子猫君は答えない。
彼女はじっと 子猫君を見てる。
すると気づくとバスが来ていて 乗りますか? 運転士からの声。
「ハイハイッ 乗ります」 慌ててバスに乗ろうとしていた彼女。
だが 運転士にちょっと待ってと言って
子猫君を自分のカバンに入れにバス停にもどる、
そしてすみませんっと バスに乗りこむのだった。
◆
彼女のアパートに着いたのは 夜遅かった。
彼女は子猫君に一緒にお風呂入ろっていって子猫君の中綿を取り出し
お風呂で優しく洗濯用洗剤でゆっくり洗われる。
ぬいぐるみ生 初めてのお風呂。
若い女性の裸で照れる子猫君。
彼は乾かされ新しい中綿を入れてもらい
新しいボタンの目を着けてもらった。
今日から子猫君の友達、みんな仲良くしてねってタンスの上に置かれた、
ぬいぐるみやリカちゃん人形や日本人形も。
お休み 子猫君。
そういって彼女はベットに入るのであった。
子猫君は目を着けてもらい視力が良くなった。
寝ている彼女の横に写真立がある
そこには母親と4-5歳の女の子。
女の子の手には子猫のぬいぐるみが写っていた。
おしまい。
---------------------
「声」
主人公は今日もジャンクヤードで、金になりそうな物を漁っていた。
無口で素朴な男。だが、彼には人にない特別な能力があった。
彼には「物の声が聞こえた」
小さな電子機器も、壊れかけのラジオも、古いゲーム機も、すべて自分に語りかけてくる。
だが、その声は、彼にとって苦痛でしかなかった。
棚の上に目をやると、説明書と箱付きの携帯ゲーム機が置かれていた。
中身をチラっと覗き、彼はレジに向かう。
家に帰ると、今度はじっくりと故障パーツを確認する。
液晶画面には、何か鋭利なものでつけられた傷が走っていた。
説明書には日付が入っており、十年ほど前のクリスマスになっていた。
――子供のものだろう。
母親は子供に「大切にするのよ」と言った。
喜ぶ子供は狂ったように頷いた。
最初は大事にした。だが、キーの反応が悪くなるとイラつき、
もっと新しいゲーム機が発売されると心は離れた。
その後、子供は飽きたゲーム機をわざと壊して遊んだ。
ゲーム機が言う。
「僕は捨てられるのか……。また、誰かの笑顔を見られるのか?」
主人公はその声を聞きながら、
自分の中の大切な何かが、少しずつ失われていく気がした。
だが生活のため、収入のため、
聞こえないふりをして作業を続けるしかなかった。
苦痛を感じても、ただ淡々と作業する。
彼は考えた。なぜ、人の中で価値は変動するのか。
子供だけじゃない。大人だって同じだ。
新車を買ってワックスをかける。
だが廃車する車には、もうワックスはかけない。
「人の心は移ろう。」
分かっていても、どうしようもない。
主人公は、ネットで海外のサイトからパーツを取り寄せた。
◆
パーツが届くと、液晶を交換し、電解コンデンサーも全て入れ替えた。
スイッチ類を洗浄し、外装も磨き上げる。
ゲーム機は再び光を取り戻し、主人公の前で「ありがとう」とつぶやいた。
しかし、彼は かたくなに無視する。
ゲーム機は箱に戻され、再び売りに出される。
新しい持ち主の手に渡る日を、静かに待ちながら。
主人公は、誰よりも機械の声が聞こえるが、
誰よりも、本質的に物を大切にしない、ただ生活の為に 金に換えるだけだった。
おしまい。
---------------------
「記録できない 存在しない ただ 観測できる」
老夫婦は、介護アンドロイドを探していた、
めぼしい物は、15年落ちのモデル、これなら買えそうだ。
予算に限りのあった二人。
でも ばあさんが 指した先にもっと古い、ボロボロなロボットを見つける。
◆
雨の屋外のジャンクヤードで地面の土が
ぬかるんで 靴が泥だらけになった。
そこに 横たわる 古すぎて価値が無いアンドロイド。
ヤードの一番隅に 半分壊れてる
腕は1本 脚も1本ない メイド型ロボット。
雨の中、ずぶ濡れの彼女は
老夫婦に話しかけてくる。 かすれるような小さい声で
「私はまだお役に立てます、連れて行ってください」。
定型文を読み上げる様な 覇気の無い口調だった。
おそらく ここで通りかかる ジャンカー(修理人)達に
何年も話しかけていたのだろう。
値札を見ると 下の方は2万円。そして1万円。一番上は5000円だった。
今まで誰も彼女の声を聴く客はいなかったのであろう。
古いポンコツ機種だ。
おそらく 修理するには欠品パーツなどの事を考えると
修理に値しなかった。
電源コネクタもデータ用のケーブルコネクタも
今は規格の違う物になっていた。
当時のエンジニアも
とっくに引退して 皆、
老人ホームで余生をすごしてる。
でも じいさんは
「いいよ 一緒に私達の家に帰ろう」って言う。
彼女は「えっ?」意味がすぐ理解できない。
「連れてってくれるんですか?」。
ボロボロの髪を整えて
すこしでも身なりを整えようと必死。
「やっぱりいらない」って言われたら
彼女にはあとが無い気がした。
「必死で笑顔を作る。」
その笑顔が切ない。
ばあさんは ただ 微笑み
彼女に傘をさしてくれた。
じいさんは 入り口でヤードの亭主から 一番奥の物は
ほぼ廃棄するから 安くしてくれると言われてた。
彼女は来週にはジャンクヤードからも下げられて
プレス機にかけられるところだったのだ。
◆
一週間後、彼女は中古パーツだったが腕と足をつけてもらい。
オイル交換と、バッテリーの充電を受けた。
久しぶりに立ち上がる 彼女。
また誰かに必要とされる事が なにより救いになった。
優しく微笑む 老夫婦。
そうして彼女と老夫婦のゆるやかな時間が流れ始めるのだった。
ある時は ばあさんと クリームシチューを作った。
またある時は じいさんの古いバイクを磨いた。
そうして これからも
じいさんも ばあさんも ずっと そばにいてくれるものと思っていた。
だが、時は残酷だった。
じいさんが亡くなり、続いてばあさんも息を引き取る。
彼女は静かに立ち尽くし、
家に残された思い出を見つめた。
◆
その後 遺産相続の話になったが、直ぐには まとまらなかった。
孫の一人が、研究者でアフリカのジャングルの奥地で
ワクチン研究しており。
連絡が中々出来ない、
半年間の猶予が出来、その間 彼女は家を守り、
晴れた日には、窓を開けたりと、住宅管理などをしていた。
自由な時を過ごしてた彼女は 思いに耽っていた。
自分を救ってくれた、老夫婦の事が大好きだった。
でも どうする事も出来ず ただ看取る事しか出来なかった。
自分は救われたのに・・・。
彼女は どうしても じいさんとばあさんに会いたくなった。
思い悩んだ彼女は、魂を探す事に 半年を使う事にした。
きっと 魂を見つければ 二人にまた会えるような気がした。
◆
彼女は、魂とは 幽霊なのではと仮定した。
夜になると 墓場に行き、体育座りで 朝まで過ごした、
彼女は 少し怖かったが我慢した。
だが 幽霊も魂も現れなかった。
次に彼女が考えたのは、
魂は「電気の集まり」なのではないか、ということだった。
人の脳は、記憶も、人格も、
喜びや悲しみさえも、電気の信号で動いている。
ならば、その信号が強く動いている状態こそが、
人が言う「魂」なのではないか。
だが、すぐに疑問が浮かぶ。
眠っている間、人はどうなるのだろう。
夢も見ず、何も考えない夜。
その間、人は――存在していないのだろうか。
「それじゃあ、人は毎晩、死んでいるみたいじゃない」
彼女は、ひとり呟いた。
もし、逆のことが出来たなら。
電気の動きを、もう一度集めることが出来たなら。
そうすれば、
じいさんと、ばあさんに、もう一度会えるのではないか。
けれど、二人はもう肉体を失っていた。
そこに電気は流れない。
彼女は、その事実の前で、
しばらく動けずにいた。
その後も 彼女は記憶転送の論文を読み散らかしたりと
必死に 魂を探した。
だが 「無かった。」 そもそも人間は何百年もの間 魂を記録しようとしたが
ただの一度も 「魂の記録は出来なかった」のだ。
彼女は思った。
人間は魂が有ってほしいが 本当はない事を知ってるのでは?。
彼女は結局、魂を見つける事は出来なかった。
ただ もう一度 二人に会いたかっただけだった。
◆
半年が過ぎ、親族と帰国した研究者の孫も、老夫婦の家に集まっていた。
奥の仏間に学術書や心霊現象の本などが散らばっていた。
部屋の隅に壊れたアンドロイドが転がっていた。
手には 老夫婦の写真が、折れ曲がるほど強く握られていた。
おしまい。
最後まで ありがとうございました。




