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工場の朝は北京の朝


パチパチパチっ


目の前で赤い火花が飛び散る。

ヘルメットをかぶったおっちゃんたち。

着ているのは作業服だな。

目の前にある電車。

つくっている途中ですな。


呆然としてみつめていた私。

おっちゃんの一人が私の方を指をさす

ああいうのは、迷っているんだよ。


そうなんだ。

間違いなくそうだけど、あの、会社の中ですわ。


派遣社員になって初出勤。

前回は派遣会社の担当者といっしょだった。


アホな性格が災いした。

思ってしまったのだ。


初出勤はどうどうと正面玄関から入りたい。


前日は横の門から入って5分ほどで会社に入った。

正門から入ったってたどりつけるさ。あはは~


そう思って最寄駅から降りて正門の方へといって、

で、見事に迷った。


後で知った。

某家電メーカーの某工場。

3億円事件があった現場のそば。

某刑務所のそばである。


地図を開いてごらん。

某メーカーの名前がそのまんま町の名前に。

私が働く会社はその右側の一番すみの、

駅から5分、横の門から5分のとこ。


駅から5分、門から歩いて20分。

そういう職場はざらだから。


なんてとこにきたんだろ。

しみじみ思った。


方向音痴極まれり。

まさか会社の中で迷うとは。

(この時まだ知らなかった。この会社の広さを)


時をもどそう。


正面玄関だと思った門から会社に入った。


派遣社員としてはじめての面接。

あれこれ説明きいて、最後の最後に担当者がきいた。

なにか質問はありませんか?


あ、はい。

派遣先の採用担当者が私に質問した。


あの、自転車にのれますか?


どうして自転車にのれるかきくんだ?

わけもわからず苦笑しつつ、


いちおう乗れますが。

と、答えると


それならいいです。

と。それで採用が決まったのだけど。


その答えが目の前にあった。


少し前にみた北京の朝。

縦横無尽に走り回る自転車。

そっくりだった。


さっきも書いた。

駅から門まで5分。

門から職場まで歩いて20分。

だから自転車を使う。


駅前に駐輪場があって、そこから自転車で出勤。

仕事中も移動にその自転車を使う。


申請すると無料でレンタルできる貸自転車がある。

なかには三輪自転車もある。

社内を巡回する巡回バスがある。


さらに歩くと塔がみえた。

エレベーターの検査をするための塔で、

この工場のど真ん中に立っている。


少し歩くと電話ボックスがあった。

売店みたいな建物の横に。


意を決して電話をした。

道に迷いました。。。


すると、

エレベーター塔が右にみえますか?

左にみえますか?


塔がどちらにみえるかで自分の位置を知る。

それがこの工場のルール的な。


塔のほぼ真下にいます。


なんとかたどりついた。


新卒で就職したのは証券会社だった。

1階から7階。

1フロア1部屋のさほど広くない空間で

ごちゃごちゃとすごした2年間。


それが、だだっぴろいとこで働こうとしてる。

なんだかなぁ~


なぜ自転車がのれるかきいたのか。

ものすごく納得したのだった。


なんのかんのとこの会社で働いたのは1年。

8月の給料が8万円だった。

これしゃ、やってけない。

それが理由だった。


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