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アッテンボローはその宣言を前にすると、だんだん笑顔が収まって行った。
そして最後には私と同じく引き締まった剣士の顔になった。
もはや小細工やだまし討ちは通用しない。
そう悟った彼は剣を隙の大きい大振りの構えから、手首や急所を狙う技量重視の構えに直した。
「・・・・面白くないなお前は。良いだろう、俺も本気でやろう」
アッテンボローは冷酷な顔でそう告げた。
私は身構える。
彼の剣は大胆さよりも細かな技量によって死角から攻撃するのを得意とする。
そのため得物もロングソード(幅広のオーソドックスな大型騎士剣)とエストック(細身の剣で、刺突や斬撃を主な攻撃とするもの)の間の様な形をした特注の品だ。
「・・・エルマー、お前強くなったな」
「だからこそ腹が立つ」
彼は狼の様な鋭い眼光で私を睨んだ。
そして大きく踏み込むと剣をグルんと手で小さな弧を描いた。
彼は私の持つ剣に対して上方向から斬撃を加えた。
これは、剣と剣を交差させ、敵の剣を絡めとる。あるいはそのまま敵の手首を突く技だ。
私はそれを読んで、一回目の交差の後すぐさま一歩踏み込んで切り上げを放った。
だがアッテンボローもそれを見越していたようで、半身を逸らしてこちらに攻撃を見舞った。
幸い、鎧の部分に防がれて致命傷にはならなかったがもしこれが衣一枚の決闘であったら私は死んでいた。
「お前の剣には技量がない。ただ、熱情に任せて力技で相手をねじ伏せているだけだ。
女王を屠って勘違いしたか?お前は何でもない凡夫なんだよ」
彼は得意になって言う。
私は焦った。実際に彼の技量は私よりも遥かに上だ。
また下手に斬りかかれば、かわされてカウンターを貰うかもしれない。
思えば、神学校時代私が貧乏故ペル(騎士が練習用に斬りつける木の杭)で練習するしかなかった剣術の稽古を
彼は相手を付けて練習していた。彼は昔っからずっと剣技に関しては並ぶ者がいない。
じゃあ私が彼に勝っている点はなんだ?何かないのか。
たとえば、いきなり雷が落ちてきたり、彼の意識を逸らしたり。
だがそれでは彼に勝てない。今までのように何かを待っているのでは勝てない。
「いい加減外的要因に頼るのを辞めろ!!」
私は自分の歯を噛みしめて甘い考えを自分で 責した。
此処でアッテンボローと向き合ってるのは自分なんだ。
自分以外いないのだ。だからこそ、私は私の力で彼を討ち倒さなければならない。
であればもはや私は何かに頼っては居られないのだ。
私は剣を再び構える。
刃が雲の切れ間から覗いた月光に照らされて冷酷に光る。
私は大きな声を出してリカッソ(中型以上の西洋剣にある取手)を掴んだ。
そしてその勢いのまま走り出し、彼の懐めがけて突撃を放った。
彼はそれを弾いて、上段に切り上げた。私はそれをわざと避けなかった。
彼の剣は私の頬を撫で上げて、そのまま耳を斬り飛ばした。
だが私はそれでも止まらず、そのまま剣を持ち直して相手の体へ飛びついた。
アッテンボローは住んでのところで避けたが肩に刃先が刺さった。
「ぐぁあ!!いってェ!!くそっこの野郎・・・!?」
彼は私を蹴り飛ばすと叫び散らした。
アッテンボローはそのまま肩を抑えて剣を下ろした。
だが私は耳を削ぎ落されても構えを崩さなかった。
次は左腕か?くれてやる。その時はお前の喉元を貫いてやる。
私は獣の様に歯をむき出しにして殺意を露わにした。
格上に勝つには、僅かな勝ち筋を逃してはならない。
一点だけでも相手に勝っている点があるのならそれを無理にでも押し出して圧倒することだ。
私の場合、それは”覚悟”であった。例え、四肢を斬り落とされても目をくり抜かれようとも前に出て敵の喉元を嚙みちぎらんとする闘志。
その一点のみが、私の彼に勝る点だ。
彼が狼狽えている。私はその隙に剣を再び持ち替えて攻撃を放つ。
ありったけの喊声を持って、私はアッテンボローの首めがけて突入する。
「終わりです!!裁判の結果はすでに決しました!」
しかし、その剣は途中で弾かれて制止された。
脇で審判していた副官の女が我慢ならず割って入ったのだ。
私は激情に任せてそのまま彼女の剣を刃先でかすめ取って吹き飛ばした。
「くそッ!!認めるよ!分かった。お前の罪状は取り下げる」
それをみて焦ったのかアッテンボローがそう言って場を収めた。
彼はどうやら私を簡単に倒せると見くびっていたらしく、めんどくさそうにそう言い放った。
アッテンボローという男は自分が必ず勝てる戦いにしか興味を示さない。
だから、自分もなにがしかのダメージやリスクを負ったりする可能性がある相手とはやりあおうとしない。
「認めてやるよ。お前の手柄だ。くそっ。あぁ!!腹立たしい!!おいケイト!!早く手当しろ」
彼は副官を乱暴に呼びつけて、肩の血を応急処置させる。
私はそれを見てやっと緊張状態を解いた。その瞬間耳の傷がうずいて激痛が走った。
思えば、馬鹿な事をした。塞がる肩の傷と二度と戻らない耳では全く釣り合いが取れていない。
私は傷口が痛まぬようにすぐにその場を離れて宿屋へと戻った。
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