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一目惚れは人を本気にさせる  作者: 親知らずの虫歯
3/4

彼女の夢

 バイト初日から1ヶ月が経過していた。

 季節は梅雨真っ只中。連日降り続く雨に憂鬱になりながらも俺は学校とバイトの生活を送っていた。

 あれから夏奈さんとさらに仲良くなりシフトの終わりが一緒のときは毎回一緒に帰るぐらいになっていた。

 しかし、まだ彼女の連絡先は聞けていないのであまり進展は無い!正直俺のチキンさにうざったく感じていた。


 そして、ウザいことがもう1つこの時期にはあった。

 そう期末テストだ。

 中間テストの結果は赤点3つとギリギリが2つ安パイが4つと結構やばい結果に終わった。

 何がやばいってこれが1年生の最初だということ。高校の1番簡単な定期テストでこれをやってしまったせいで親が大激怒。このまま赤点を取り続けるならば塾に通わせるとか面倒くさい事を言い始めたので割と真面目に勉強を始めていたのだ。


 その理由は勿論バイトに来られなくなっちゃうからに決まってるだろ!!!知ってたか。

 というわけで今、バイトの休憩中にわざわざバックヤードで勉強をしているのだ。

 テストまで後2週間。

 なんだけど。マジで何が何だか分からない……特に数学。これは宇宙語だ。

 何を言ってるのかさっぱり分からん。

「お、大地君勉強やってるの?」

「お疲れ様です夏奈さん。夏奈さんも休憩ですか?」

「いや、私はちょうど上がり」


 今日も可愛いぜ!これを見られるだけでもここにいる価値がある。

「そうなんですね。俺は後30分ぐらいで戻りです」

「それは大変だ。最近よく働いてるけど何か理由でもあるの?」

「と、特には無いです……」

 まさか、夏奈さんに会いたくてシフトの量を増やしてるとか思ってないよ。家にいても暇だからここにいるだけだよ~

「それにしても真っ白なノートだね。本当に勉強してたの?」

 意地悪げにニヤけてくる。そんな彼女も可愛いらしい。

「してましたよ。でも、俺馬鹿で何が何やら分からなくて……」

 なんか、馬鹿アピールしてるみたいになっちまった。

「どれどれ~」


 いうと、夏奈さんが俺の隣のパイプ椅子に腰掛けてきた。

 一気に2人の距離が縮まる。

「夏奈さん!?」

 突然の出来事に俺は声を上げるしか出来なかった。

「何よ?」

「いや、その急に隣に来たので……」

 びっくりしたとは言えない。それにしても夏奈さん良い匂いだな~このまま死んでも俺は満足出来るぞ……


「折角だから勉強教えてあげようかなって思ったんだよ。私一応数学得意だし」

 あ、そう言うやつね……数学って言葉を聞いた瞬間我に返ったよ。

 嫌いな奴って好きな人よりも優先されちゃうのね……ホントこの世から消えてほしいわ

「じゃあ、お願いしても良いですか?」

「うん、いいよ!」

 ま、願っても消えないのが数学なのでお言葉に甘えて教えてもらうことにした。



「大地君……結構お馬鹿さんなんだね……」

 俺が仕事に戻らなくてはいけない時間まで後5分。さすがに仕事の準備をしなければいけないのでここで勉強を切り上げなくてはいけない。そんなときに、夏奈さんから言われてしまった。

 しかし、そんな俺ですらこの20分ぐらいで大分出来るようになった。

 まあ、0点だった出来が30点ぐらいになっただけなんだけど……

 しかも、今日は他の教科には手を付けられなかったのでマジでホントに厳しいぜ……

「なんか、関わってしまった手前、君の勉強を見てあげてくなっちゃったよ……」

「すいません……俺、馬鹿で……」


「私は迷惑じゃ無いから大丈夫。それよりも後で暇な日に勉強会しましょ!私全教科教えてあげるわ」

「ホントですか!!」

 これは属に言う勉強デートなのでは!!こんなの断る理由が無いぜ。

「勿論!!バイト先の後輩が赤点まみれになってるのは嫌だからね」

「うっ……すいません」

 人差し指を俺のおでこにチョンとくっつける仕草は可愛かったが言われたことが俺の急所に刺さり、HPが赤ゲージまで減ってしまった。


 というわけで夏奈さんとの勉強会の日がやってきた。

 今回の詳細を決めるために何と、ついに夏奈さんと連絡を交換しました!!!!

 これは大分大きな進歩ですよ!!!これから毎日連絡してみよーっと。

 交換したチャットアプリにて勉強会の会場として決めたのは彼女もよく勉強に使っているという町中のメガドンキの地下きらっせという餃子のテーマパークみたいな施設の横にある小さなフードコートだ。


 ここはフードコートのくせして人の入りが非常に少ないため勉強に超適してるらしい。

 先に俺が到着し、夏奈さんが来るのを待っていた。

「お待たせ~」

「こんにちは」

 初めてバイト先以外で会えました!!とうとうここまでの仲に発展。

 一目惚れをして早1ヶ月俺の頑張りは報われつつあるようだ。

 それにしても今日の夏奈さんも最高に可愛い。


 今日は梅雨なのに雨が降っていない珍しい日で結構暑かった。

 それ故なのか夏奈さんの服装は一段と薄着だった。

 上半身は黒のノースリーブを着ており、見た感じこれ1枚でその下は肌着のようだ。

 下半身は薄緑色のカラーパンツで大人っぽく感じる。

 薄着の夏奈さんも最高で俺の心の中は神輿をあげていた。

「それじゃ早速始めましょうか」

「はい!」


 夏奈さんの服を褒めるのはここら辺にして置いて、メインである勉強会へと移行しよう。

 テスト本番まで後1週間。学校も試験期間に入っており、俺もこの期間だけはバイトを入れないようにしていた。

 小さな4人掛けのテーブルに対面して座る。

 距離感が近いのでより俺の幸せ指数が上昇している。

「まずは国語ね。大地君は数学が特に苦手みたいだからさっさと他の教科から片付けて行きましょう」

「分かりました」

 やる気も十分。これならたくさん理解出来る気がするぜ!!!



 と思ったのはつかの間。

 国語ってムズくね?日本語なのに何でこんなムズいの?

 数学と比べてまだマシだけどそれでも50点ぐらいしか取れなそう……

「大地君……よく南東入れたね……」

 夏奈さんが頭を抱えているの初めて見たよ……ホント申し訳無いです。

「ううん!これは教え甲斐があるって事よね!!!」


 変なやる気スイッチ入れちゃったかな?取りあえず嫌な予感しかしないよ。

 俺の嫌な予感は的中した。俺結構予想当たるよね……

 夏奈さんは座る位置を俺の隣に変え、塾講師のように白紙を何枚も使って俺の分からない所全てを潰していった。

 お陰で俺の感覚だけど50点だった国語は70点ぐらいまで上昇した。これでも70しか取れない俺の残念さに嫌気がさす。


 そして、

「すいません。ギブです!!」

 俺の脳内もパンク寸前だった。

「あーごめんごめん。つい熱が入っちゃって」

 夏奈さんもスイッチが切れたように教えるのを止めた。

 折角フードコートに来ているので何か買おうかな。

「何か食べますか?」

 夏奈さんに聞こうと隣を向いた。


 すると、ちょうど彼女も俺の事を見ていたのか視線がハッキリと交差していた。

 距離が近すぎて彼女の体に触れられるほど。

「な、何食べようか~」

 夏奈さんがそう言うのをきっかけにお互い視線を逸らす。

 な、何だ?この状況。まるで付き合う前の男女のようなやり取り。

 ついには立ち上がってお店の方まで歩いて行ってしまった夏奈さん。

 彼女の頬を見るとほんのり赤くなっているように見えた。だが、光の加減って可能性もあるので俺の勘違いかもしれない。



 その後、軽く昼食を済ませて再び勉強会に戻った。

「うーん、大分良くなってきたね」

 夏奈さんの言うとおり今日1日で大分学力が上がった気がする。

 学校の先生も俺の出来なさに嫌気をさしてしまうにホントありがたい。

「今日は本当にありがとうございます。お陰で今度のテスト頑張れそうです」

「うん、頑張って!てか、頑張ってくれないと私の努力も無駄になっちゃうわ」

 眉毛を寄せて意地悪に言ってきた。

「はい、頑張ります」

 この可愛い顔に誓って俺は今回のテストを必死に頑張ります!



 そして、迎えたテスト返却日。

 その日の夜。俺はチャットアプリにて今日の報告をしていた。

「夏奈さん!!お陰様でテストで良い点数を取ることが出来ました」

 言いながら、成績表を見せた。

「おお、良い感じだね~って、大地君。前回赤点2個も取ったの?」

 夏奈さんに笑いながら呆れられるという弄りを受けた。


 だが、笑いながらと言っているように今回の結果は見違えるほど良くなっていたのだ。

 特に苦手だった数学。前回は赤点で学年でもビリだったのだが、今回は何と65点も取れた。

 もっと取れるだろって突っ込まれるだろうがほぼ0点に近かった点数をここまで上げたのだそこを俺は評価して欲しい。

「次はもっと良い点数を取れるように頑張ろうね」

「はい!」

 てことはまた勉強会を催してくれるってことかしら?

 自意識過剰な事を考えているのは分かるが思うぐらいはさせてほしいものだ。



 期末テストが終わり、正式にバイトに復帰した日。

 夏奈さんがいつもと違った。

 珍しくミスをするし、話しかけても「あ、ごめん……」と聞いていなかったりした。

 どうしたのだろうか?こんな彼女を見てしまうとさすがにいつものキモい感じにはなれず、ただモヤモヤと仕事を続けるしか無かった。


 ちょうど、お互いに休憩だし聞いてみるか。

 そう思い、夏奈さんが座る椅子の正面に腰掛けた。

 この構図は俺がバイト初日の時と一緒、なんか立場が逆転した気がしてちょっと面白かった。

「夏奈さん?」

「ん?どうした?」

 いつもならばもうワントーン高い返事も低く聞こえる。

「どうしたんですか?なんだか落ち込んでるような気がして……」

 いきなり本題に入ってしまったが大丈夫だろうか?


 もうちょっと配慮した方がいい?女性に対し相談に乗るなんて経験が無いので俺も不安だった。

「やっぱり大地君にも分かっちゃうよね……」

 てことはやっぱり落ち込んでいるって事だよな。

「何かあったんですか?」

 さらに深掘りしてみる。これはさすがに詰めすぎか?俺の緊張も高まっていた。

「………大地君になら話しても良いかな」

 少し考えた結果話してくれるようだ。それだけ俺の事を信頼してくれているという証拠だよな。ありがたい。


 夏奈さんは俺にだけ聞こえるように話したいようで俺の隣の椅子に移動して来た。

 これもこれで緊張感が増してしまう。別の意味で……

「実は私、両親にアルバイトしてるってバレちゃったの……」

 てことは今までは言ってなかったって事だ。確かに、潜りでバイトをやっていると親には言いにくいよな。ちなみに俺もバイトのことは内緒にしている。

「で、親にバイト辞めろって言われちゃったんだ」

「マジですか?」

 そう来たか~


「うちの親結構厳しい人で、言うこと聞かないと家に入れて貰えなかったり、するんだ」

 しかもかなりマズい状態のようだ。

「今は入れて貰えているんですか?」

「今はね。でも後数日後には決断しないとダメなの……」

 この感じだと夏奈さんはバイトは辞めたくないけど、辞めざるを得ない状況って事だよな。

 てことはこの状況は俺的にもマズい状況だと言うことだ。

 夏奈さんが辞めてしまったら俺がここで働く理由が無くなるし、今後彼女とつながりにくくなる可能性がある。

 どうにかしなければならない。

「夏奈さんはバイトを辞めたくないんですよね?」

 これは確認事項だ。


「うん、出来れば……」

 よし、今のところ俺の仮説はあっているようだ。

「そもそも、夏奈さんって何でここで働いているんですか?」

 実はこのことを聞いていなかったなと思った。

「そう言えば話してなかったね。てか、この話親にも言ってないや……」

 夏奈さんは苦笑いを浮かべる。

「私、将来小児科の先生になりたいって思っているの」

 そうなんだ。だから、高校も比較的頭の良い所を選び、勉強も出来るって事か。

「なぜ、小児科なんですか?」


「私が小さい頃結構重い病気に掛かっちゃって、その時に助けてくれたのが小児科の先生だったの。それ以来小児科の先生に尊敬の気持ちがあって、結構仕事内容とかも調べてたんだ。そしたら、小さな子供達をたくさん救っている格好いい職業だと知って、私もなりたいって思ったの」

 なんて立派な夢だ……俺なんか未だに夢を持たずに高校生を生きている。あ、最近は夏奈さんを恋人にしたいって夢が出来たけど。

「でも、小児科の先生になるには医科大学に行かないと行けなくて……医科大学って難関なのにお金も結構掛かるの6年も通わないと行けないし……」


「それで、そのお金を稼ぐためにも高校生のうちからバイトを?」

「そう、本当ならここ以外でもバイトをしたいんだけどさすがに学校に隠しながら掛け持ちは出来なくて……木村店長は潜りのバイトに優しくてそれもあってここで働いてるの」

「え、もしかして俺の潜りも……」

「勿論バレてるよ。木村店長は高校生の応募があったらまず最初に通ってる高校のルールを調べるから」

 なんだ、バレてないと思ってたよ。

「そんなわけで私はバイトを辞めることは出来ないの。まあ、私の稼いだ資金なんて無いに等しいんだけどね……」

 ここで今日1番の落ち込みをしてしまう。

 この状況をどうしたら打開出来るか。

 まず、このトラブルの根幹を考える必要がある。


 そもそも夏奈さんは両親に自信の夢の話をしていない。それを知らずにバイトをしていると知ったら、校則違反をしているわけで当然起こるに決まっている。多分俺の親も怒るし。俺が親だとしても何でしてるのって聞くわ。

 てことはまず夏奈さんはこれを両親に言わないと行けないな。

 それを踏まえて両親がどう判断するかだ。

「両親にはバイトの内容まではバレてないんですよね?」

「え、ええ、多分。私が部屋で何かしているときに感づいたらしくて」

「だったら、取りあえず夏奈さんの夢の事をご両親に話した方が良いですよ。それを踏まえて夏奈さんがバイトを続けられるか相談した方が良い。どっちみち進路相談とかでバレるのですから」

「そ、そうね……」


 夏奈さんが意外そうな目で俺を見てくる。だよな、ついこの前まで馬鹿やってた俺が夏奈さんの解決案を考えているんだからな。

 でも、俺は夏奈さんと一緒に働きたいから俺が考える案を全てお伝えするべきだ。

「カラオケ屋で働いている自分が言うのも何ですがカラオケのバイトって結構印象悪いと思うんですよね。だから、これがバレているのであれば、別のバイトならOKなのか聞く必要があったんですが、今回はそれはなさそうなので安心しました」

「……大地君はなんで私の事を自分の事のように考えてくれているの?」

 ついにその質問が来ちゃったか〜だが、俺にはこの質問が来たときに返そうと思っていた言葉がある。

「夏奈さんにこのバイト辞められると困るんですよ」

「どういうこと?」

「夏奈さんは俺の教育係ですし、もっと教わりたい事がいっぱいある」

「それはもう、そつ……」

「それと」

 夏奈さんの言葉を遮った。


「俺は夏奈さんと働くこの仕事が楽しいので。何としてでも辞めて欲しくないんです」

 俺の本音をぶつけた。

 この状況を利用するんじゃ無いけど、自分の気持ちをぶつけるにはちょうど良いと思ったのだ。

「なにそれ……」

 本音をぶつけられた夏奈さんはどこか嬉しそうな顔をしていた。

「大地君と話してたら悩んでたのが馬鹿らしくなってきたよ!」

 そして、表情が段々いつも通りに戻ってきた。

「さ!仕事に戻ろう!!」

 時計を見るともう休憩時間が終わっていた。

 俺も急いで仕事に戻った。



「ねえねえ、聞いてよ!」

 夏奈さんの将来の夢を聞いた日から数日が経った。

 いつも通りの夏奈さんに戻った彼女から仕事中に話しかけられた。

 まあ、今は人もいないし良いだろう。

「どうしたんですか?」

 と、返事をしてみたが、おそらくあの件についてだろうな。

「昨日大地君の言った通り両親に夢の話をしてみたの」

 ほら、やっぱりな。で、彼女のこの感じだと結構良い結果になったようだな。

「そしたら、バイトはつづけて良いって事になったの。試しにカラオケでバイトしてるって言ったら『別にバイトの内容は気にしない』って。それと私の夢を全面的に応援してくれる事になったんだ~」


「良かったですね」

 これで俺の不安も無くなった。

「でも、なんでご両親は怒ってきたんですか?」

 だが、この疑問が残る。

「それ!私も聞いてみたんだけど。なんかお父さんが私がチャットアプリで男の子と話してるって感づいたらしくて、それをお母さんに『夏奈がバイトを始めたみたい』って言ったのが根源みたい」

「てことは、夏奈さんのお父さんがうちの娘が変な男とやり取りしてるって怒ったことが原因って事ですか?」

「そうみたい」

 なんて面倒くさい親なんだ。娘を愛するあまりに恋愛を許さない父親ってよくアニメとかで描かれるとマジでいるんだな。

「って、そのチャットの相手ってもしかして」

「多分、君だよ」

 やっぱりか~てことは俺と勉強会をしてしまったせいで夏奈さんが落ち込んでしまったってことじゃねーか。

「すいません。俺が勉強出来ないから」

「何でそれが関係してくるの?」


「だって、俺と連絡先を交換しなければそんなトラブル起こらなくて済んだんですよ?」

 言ってて今度は俺が落ち込んできた。好きな人と連絡できて舞い上がったせいで……

「そんな、気にしないでって!!むしろ今回のこれがあったお陰で私は両親に夢を打ち明けることも出来たし……」

 言葉がここで途切れた。

 何かと夏奈さんの事を見ると恥ずかしそうな表情をして俺の事を見ていた。

「それに、私も大地君と一緒にここで働くの楽しかったから……」

「何を言ってるんですか……」

 気まずいじゃん……

「さ、さーてドリンクバーの補充をしてこようかな~」

「お、お願いします……」

 夏奈さんがさっき俺が補充したドリンクバーの方に言ってしまった。

 だが、今は夏奈さんといたくなかったので教えなかった。

 そして、後に「なんで教えてくれないの!!」って怒られて少し気持ちよくなっていた。

 俺、きもちわり~



「あれ~今日はいないんですか?」

 私の側をウロウロする夏奈。最近のこいつはなんかソワソワしてるんだよな。

 ま、恋愛マスターの私には夏奈のこの行動が十分に理解出来るんだけどな。

「近藤君なら今日は休みよ」

「あ、そうなんですね~ってなんで私が大地君を探してるって知ってるんです?」

「だって、最近のお前らめっちゃ楽しそうじゃん」

 高校生の初々しい空気が甘すぎて嫌でも分かるわ。

 元はといえば近藤君が悪い。あの子は恐らくこの子目当てでバイトをしに来た。じゃなければ潜りまでしてバイトに来ない。


「べ、別に楽しくしてるつもりは無いんですけどね……」

 なんだよこいつ……

 それは楽しいって言ってるようなもんだろ。

「近藤君のどこが好きなの?」

「だから、私は……」

「私には全てがお見通しだって言ってるだろ?いい加減吐いちまいな」

 さすがにウザくなってきた。

 言うと観念したのか、分かりやすく頬を赤くして呟き始めた。

「……あの子の勉強出来ないのに必死になって私の事を考えてくれた所です」

「というと?」


 こういう恋愛トークは久しぶりだから楽しくなっちゃうわね。自然と合いの手が出てしまう。

「私がバイトを辞めなくちゃいけなくなった時、大地君が真剣になって私がやるべき事を一緒に考えてくれたんです」

 それはバックヤードの陰で聞いていたから知ってるよ。確かにあの時の近藤君は今までで1番頼りがいのあるいい男に見えた。

「でも、その前に大地君と勉強会をしたんです」

「ほう、それは初耳だ」

 確かにバックヤードで勉強をしてる姿は見たが、まさかそんなことをしていたなんてな。

「その時の可愛らしい姿とバックヤードの時の格好良さのギャップが私に突き刺さっちゃったみたいで……その他にも色々あって。今、こんな状況になってます……」

 いいね!この平凡な女の子が顔を赤くしながら好きな男のことを話してる姿は!!あー私も学生時代に戻りたいわ~

「すいません……受付お願い出来ますか?」

「あ、はーい」

 お客さんがちょうどやってきて、それに夏奈が対応しに行った。

 お客の前でそんな顔を赤くしちゃって……これだから夏奈は可愛いんだから。


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