今日ついた嘘
「隆二、冷蔵庫のケーキ勝手に食べたでしょ!!」
お母さんに怒られた。
どうやら、お客さんに出すケーキだったらしい。
「僕は食べてないよ。ペロが食べちゃったんだよ」
僕は悠々と昼寝をかましている愛犬を指した。呼ばれたペロは少し頭を上げてキョロキョロすると、また夢の中へ帰っていった。
「わかりやすい嘘ついて! ペロが冷蔵庫を開けてフォークでケーキを食べたっていうの?」
お母さんはテーブルの上にあるお皿とフォークを指した。
「そ、それは……」
思わず目をそらしてしまった。片付けるのを忘れていた。
「ごめんなさい……」
「はあ……。食べちゃったものは仕方ないわ。嘘は良くないから今度から正直に言いなさい。ね?」
お母さんは優しく微笑んだ。
「うん……」
「じゃあお母さんは買い物に行ってくるから。留守番しておいてね」
「うん。いってらっしゃい」
玄関のドアの音がした後、僕はソファに座る。
「な、なあ。お母さんもう行った?」
ソファの後ろから声が聞こえる。
「うん。もう大丈夫」
「焦ったあ~。助かったよ。とっさのことだったからどうなるかと思ったけど、『ペロが食べた』はわかりやす過ぎる嘘だよなー。おかげで隆二が食べたってことになったけどさ。約束通り、あとでお菓子やるからな」
お兄ちゃんは、おでこの冷や汗をぬぐいながら、にひっと笑った。
「うん、ありがとう」
「じゃあなー」
お兄ちゃんが自分の部屋に戻ったのを確認してから、リビングのドアを見る。
「これでわかったでしょ?」
「そうね……。後でお兄ちゃんを叱っておかないとね」
お母さんはため息をついた。
「今までに勝手に食べてたのもお兄ちゃんなの?」
「うん。そうだよ」
「その分も叱っておかなきゃね」
お母さんはリビングを出て、お兄ちゃんの部屋に向かった。
今日、僕は三回嘘をついた。
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