轆轤を回すようにソフトクリームを舐める
いつもお世話になっております。
エッセイ界隈でうろちょろしている水産加工食品のたらこくちびる毛です。
今回はソフトクリームのお話。
皆様、どんなふうに食べてますか?
たらこは周囲を少しずつ舐めて表面を平らにします。
独特のフォルムをしたソフトクリームの表面を丁寧に舌で平たく整え、円錐状になるように舐めるのです。
円錐状になってからも同じように舐め続けます。
次第に小さくなっていって、コーンの中にソフトクリームが残るくらいになってようやく齧り始める感じですね。
とにかく舐め続けるので舌が疲れます。
こんな風に食べる人ってどれくらいいるんですかね?
もしかしてたらこだけ?
大人になってからソフトクリームはあまり食べませんが、サービスエリアとかで見かけると無性に食べたくなります。
途中で飲み物が欲しくなるのが分かっているので、ブラックのコーヒーも合わせて購入。
一息つきながら甘いもので糖分補給しつつ、コーヒーで舌をリセットして最後まで甘い味わいを楽しむ。
我ながら優雅な食べ方だと思います。
でも、いい年した水産加工食品が一人でソフトクリームを食べている姿は、はたから見たら変に思われるかもしれませんね。
ずーっと形が整うようにペロペロとしている姿を見られたら、恥ずかしいじゃないですか。
なので食べる時はできるだけ、ひと気のない場所を選んでいます。
そもそも人混みが苦手なので、あまり沢山の人がいる場所で食事をしたくないって言うのもありますが……(^-^;
じゃぁ、見られても恥ずかしくないように、ペロペロを止めて普通に食べればいいじゃないかって?
ううん……ダメなんですよね。
たらこがソフトクリームをこういう風に食べるのには訳があるのです。
あれはまだ、たらこが幼いころ(確かまだ4~5歳)のことでした。
家族で何処かへ出かけた時に、ソフトクリームを食べたんですね。
行楽地で食べるソフトクリームは特別で、普段はめったにお菓子も買ってもらえなかったこともあり、夢中になって食べたんですよ。
ぺろぺろぺろぺろ。
同じ場所をずーっと舐め続けたんです。
するとどうなるか。
一か所を集中的に舐め続けたら、当然ソフトクリームは傾きます。
そんなことお構いなしに舐め続けた結果……ピサの斜塔よりも傾いたそれは、あっけなく地面へと落下してしまったのです。
泣きました。
ええ、それはもう泣きました。
特別なソフトクリームが地面に落ちて台無しになってしまったのです。
もの悲しさのあまり、ワンワンと泣いたのを覚えています。
んまぁ、その後、祖父が新しいのを買ってくれたんですけどね。
新しいソフトクリームを買ってもらえてすっかり泣きやんだたらこは、今度は落ちないように注意して食べていたそうです。
周りをバランスよく順番に舐めて、円錐状になるように。
たらこがソフトクリームを轆轤を回すように食べるのは、こんな想い出があるからだったんですね。
ついでに祖父の思い出話を少し。
祖父は厳しくて苦手だったのですが、優しい一面も持ち合わせた人でした。
小学生高学年くらいの時に、祖父が公園に連れて行ってくれたことがありまして。
たらこが迷子になってしまったんですね。
祖父は広い公園を歩き回って探してくれました。
結構な年齢だったんですが、年老いた身体に無理を言わせ、おまけにたらこの弟と妹を連れながら、ずっと歩いて探してくれたのです。
優しい人だったなぁと、今思い返すとしみじみと感じます。
会うたびに小言を言われるので、やっぱり苦手でしたけどね……。
ふと、無性にソフトクリームを食べたくなる時があります。
そんなに高い物でもないですから、買おうと思えばいつでも買える。
でも、食べているところを誰かに見られると恥ずかしい。
轆轤を回すようにソフトクリームの周囲を順番に舐めてきれいな円錐状にする姿は、人から見たら滑稽でしょう。
食べ終わった後に熱いブラックコーヒーを飲みながら、ぼんやりと祖父のことを思い出す。
あの時言えなかったお礼の言葉を、今になって心の中でつぶやいたりします。
おじいちゃん、ありがとう。