表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/169

51.祝福のガーデンパーティー

全面的に新婦さん好みの招待状をもらってから少したち……


私とお友達のご令嬢たちは、エスニョーラ家のティールームにて、お花のブーケをいくつもせっせと作っていた。


「こちらは準備、整いましたわ」


少し離れたところにいたコルバルト家のミゼット嬢が色とりどりの花びらが入った数台のバスケットを並べ終えて、こちらにやってきた。


「ブーケの方も皆さま準備、整いましたわね。それでは、いよいよ本番ですわ!」


サルーシェ伯爵家のオリビア嬢が張り切って声を発すると、皆でバスケットとブーケを持って移動を開始した。



今日は結婚パーティーの日。


一応、大貴族である侯爵家の嫡男の結婚ということもあって、たくさんの招待客が続々と集まり出している。


会場はというと、私がアルフリード達に会う前に皇女様の女騎士になる野望を秘めて、今日の新婦さんによく剣を教えてもらってた中庭がセレクトされていた。


なのでパーティーは屋内じゃなくて、外でガーデンパーティー形式で開かれる。


お母様はバラなんかの植え込みがたくさんある別の中庭をよく散歩したりしてるけど、こっちのだだっ広い芝と、ちょっとした噴水があるだけの庭にはあんまり来ない。


この庭はそもそも、ガーデンパーティー用に作られたそうで、今日みたいな青空が広がる日にエスニョーラ邸では昔からこういう大きな催しを開くのに活躍してる場所らしい。


本館の2階部分には立派な外階段が設置してあって、中庭へはそこから降りられるようになってる。


お父様とお母様の結婚の時はそこから登場したらしいんだけど……過保護な新郎の計らいにより、妊娠中の新婦さんに階段は危ないので登場するのは1階のテラスからに変更された。


テラスの外まで移動してきた私とご令嬢たちは、新婦さんの妹で私たちと同世代のシルキーちゃんと一緒に向かい合って2列で並んだ。


外階段の下の方で固まってる音楽団から明るい感じの音楽が鳴り響くと、テラスの扉が開いて、腕を組んでいる新郎新婦が登場した。


花嫁さんはいつもの御用達のブティックで花婿さんが用意したウェディングドレスに、こちらも帝都の有名なお花屋さんに頼んで作ってもらった豪華なブーケを手にしている。


そしてその後ろには、私のお友達のご令嬢の女騎士さんたちが、お揃いのドレスに、さっき皆で作ってたブーケを手にして並んでいる。

女騎士さん達は花嫁さんの騎士学校時代のお友達として招待されてるから、騎士服ではないのだ。


盛大な拍手に包まれる中、私たちも持ってたカゴの中から花びらをシャワーみたいにして振りまくと、2人は向かい合ってキスして招待客の方へ歩き出した。



「ういっす、(ねえ)さん。ご結婚おめでとうございます!」


2人がいろんな人に挨拶を始めた後も、一緒に付いて行って花びらシャワーを振り撒いていると、野太い声がした。


見ると、エスニョーラ騎士団の騎士服を来た、ラグビーとかやってそうな感じのデッカくていかつい騎士の人たちが花嫁さんに挨拶していた。


あ……この人たち、どっかで見たことあるような……


2人が他のお客さんの所へ移動し始めたので、私と他のご令嬢も一緒に移動してその人たちの前を通り過ぎようとした時。


「あ、あなたは本館の妖精さんじゃないですか」


騎士の人の1人に急に話しかけられた。


は? 妖精って何ですか?


「あの日も姉さんと一緒に、ここにいましたよね?」


あの日、この場所で……


ああーーーー!!


もしかして、ここで剣の練習をしながら王子様の歓迎会があるって話を聞いた時に “エッホ エッホ”っていう掛け声で、こっちの方まで走り込みにきてた、あの騎士の人たちだ!


じゃあ……あの時、私が見てたのバレてたの!?


「先輩達の話だと十数年くらい前から時々、女の子の妖精さんが庭をウロウロしてるって話を聞いてて、まさかとは思ってたんスけど……2回も見れて俺らラッキーっスね」


十数年前ってことは……私がこの世界に来る前、本物のエミリアが小さい頃から騎士団の人達に目撃されてたってこと!?


ここにきての新事実。

しかも、もろ目の前にいるのに、いまだに妖精だと思われてる……?


「あの時も俺らシバかれそうになって慌てて逃げたんスけど、イリス姉さんは護身術とか得意っスから、妖精さんも強くなりたいならそういうのも教わるといいっスよ」


は、はあ。アドバイスどうも。

花嫁さんはあの時、注意してくるってだけ言ってたはずなんだけど、ホントはシバこうとしてたんだ……


彼女は今お腹に赤ちゃんがいるので、そちらが落ち着いたら考えてみます。


「じゃあ俺ら邸宅警護の休憩中に抜け出して来てたんで、もう戻りまっス」


そう言って、その騎士さん達は隊列を組んで、招待客の中を縫うようにしてパーティー会場を後にした。



2人は花を撒きまくっているご令嬢たちと共に、だいぶ先の方まで行ってしまってて、前に花婿さんが大怪我してきた時にウーリス団長の騎士学校時代のお友達とかでウチに呼ばれてた、ジェンダーレスな方と挨拶してる。


私が慌ててそっちに向かおうとすると、


「ラドルフ様ーー!」


またエスニョーラの騎士服を来ている人が、私と同じ方向へ向かっているのが見えた。


あ……騎士にしては小柄なあの人にも見覚えが……


そう思った時、ダボッダボのズボンを履いてるんだけど、それが足先に引っかかってその人は前からバタンと芝の上に倒れ込んだ。


「あのー、大丈夫ですか?」


そばに行って聞いてみると、その見覚えのある人はちょっと顔を上げて、ギロッとした目で私のことを睨んでいたんだけど、


「はあ、妖精ことエミリアお嬢様ですねー。僕の特注の騎士服をお盗みになった」


そう言って、立ち上がってズボンの汚れた部分をポンポンとはたいた。


え……この騎士の人、さっきの人達と違って、私のこと誰だかちゃんと分かってる!!


しかも、そう。この騎士さんは、王子様の歓迎会へ行くのに騎士団の洗濯場から、かっぱらってしまった私にピッタリだった騎士服の持ち主に違いない。


特注ってことは、同じサイズのが他に無くってこんなにダボダボの騎士服を着てるの……?


これはもしかして、とんでもない事をしちゃったんでは……

なんで私のこと知ってるのかは分かんないけど、ここは(いさぎよ)く、


「ごめんなさいーー!!!」


私は花びらの入ったカゴを地面に置いて、アルフリードからもらった大量のドレスの中から今日のために念入りに選んだドレスが汚れるのも構わず土下座した。


お兄様の結婚式でまさか、こんな事するとは思わなかったよ。

やっぱり人のものを勝手に盗むなんて、しちゃいけなかったんだよ。


「あ、あ~! お嬢様いいんですよ、事情はすっかり分かっていますから。顔を上げてください」


半べそをかいて立ち上がると、その騎士は何やら耳打ちをしてきた。


「その代わりお願いしたいことがあります。僕の特注のXSサイズの騎士服なんですが、どうもお嬢様をお着替えさせたメイドが怪しいし、ヘイゼル公爵邸にまだあるみたいなんです。お嬢様にそれをどうか見つけ出して欲しいんです」


なんで、私のことお着替えさせたメイドがいるっていうのも知ってんの? 

そんな疑問が頭の中を通り過ぎていくと、


「ラドルフ様ーー!」


また花婿さんの名前を叫んで、風みたいに走って行った。


「まあ、エミリア様! 可愛らしいお洋服が泥まみれではありませんか!」


私もご令嬢達の方へ戻ると、皆からワーワー言われて、お着替えすることになった。


お着替えから帰ってきた後は、招待を受けていたアルフリードや皇女様にエスコート役で付いてきた王子様と噴水の所で談笑したり、大人数でやるフォークダンスみたいな踊りをやったりして時が過ぎていった。


そして、最後のフィナーレ。


未婚の女の子達が集められて、花嫁さんが後ろを向いてそっちの方に持ってたブーケを放り投げた。


私は女の子達の群れの中になんとなーく漂っていたんだけど、目の前に白やピンク色の淡い感じの色で統一されたブーケがクルクル回りながら向かってきて、手の中にポスンと収まるのを映画のワンシーンみたいにボケーっと見ていた。


まだちょっとカゴの中に余っていた花びらを皆が撒いてくれている中、アルフリードが側に寄ってきて、


「あと1年と少し……」


そう呟いて私がブーケを持ってる手の上に両手を添わせた。





再登場した人達は「2.皇女様の女騎士になろう」に出てきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『皇女様の女騎士 番外編集』
本筋に関係ない短編など
目次はこちらから

サイドストーリー
連載中『ラドルフとイリスの近況報告【改訂版】』
目次はこちらから



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ