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37.武器セレクトタイム

この日、皇城のプライベート庭園には、ありとあらゆる武器がずらりと並べられていた。


「騎士になるからには、武具の種類と特性をよく理解しておくことだ。師匠、ご苦労だった」


武器を運んでいたのは、皇族騎士団の団長様とその部下の騎士達だった。


「姫様からのお呼びでしたら、すぐに飛んでまいりますよ」


団長様はちょっと年齢不詳な感じの日焼けした顔に白い歯が眩しい爽やかな体育会系の方だった。


「師匠はソフィアナと僕が幼い頃、武術全般を教え込んでくれたんだよ。さすが団長なだけあって、武器なら何でも扱えるんだ」


アルフリードが説明してくれた。

皇族騎士といったら、騎士の中でも選りすぐりのエリート集団。そんな人々のトップに君臨する人から直々に教えてもらっていたから、アルフリードも皇女様も相当強い訳だ。納得。


「おお! やってるな、お前たち!」


庭園を横切る渡り廊下から現れたのは、皇帝陛下だった。さらにその脇には、公爵様とお父様も一緒にいる。


「陛下、今からエミリアに武器の使い方を教える所なんですよ」


「最近は体を動かしていなかったからな、どれ我らも得意の武器を実演してやろうじゃないか」


アルフリードが話しかけると、陛下は上着を脱ぎ出して、集まったメンバーによる実演大会が急遽、決行された。


陛下が手にしたのは、先に丸いトゲトゲのついた棒状のものだった。


「あれはモーニングスターだな。重いし、一度相手に振りかぶるとまた体制を立て直すのに時間がかかる。体格のいい者でないと、扱うのは難しいな」


皇女様の解説によれば、小柄な私にはちょっと手が出せなさそう……


陛下は手当たり次第に振り回し始めて、皇女様はすごいしかめ面をしていた。


公爵様は短いのから長いの太いのに、日本刀のように細いもの、手当たり次第に置いてある剣を拾って、素振りをしたり、両手に持ったりして、色々な型を披露し始めた。


「ソフィアナと父上と僕はソードマスターで、どんな剣でも一流に使いこなすことができる。ちなみに僕は短剣も好きでコイツは常に持ち歩いてるよ」


アルフリードはそう言うと、懐から革のさやに入った20センチほどの短剣を取り出した。柄の部分にはヘイゼル家のらしいカッコ良い獅子の紋章が入っている。

つまり、彼はこの短剣をいつも肌身離さず持っているってことらしい。

それは初めて知る事実だった。


そして、武芸とは縁遠そうな文官一族のお父様は、弓を拾って端っこに植わっている木に向かって矢を放った。すると、そこに成っていたリンゴみたいな実に命中して、ボトリと地面に落ちた。


えっ……すご! 


「エスニョーラ家の皆様は代々、弓矢の腕は素晴らしいのですよ。私のおすすめとしては、近距離用の剣に、遠距離用の弓矢、中距離用の槍が一通り扱えるようになれば鬼に金棒でしょうな」


騎士団長様が説明してくれた。

お父様の弓の腕前が想像以上にすごいことは脇に置いておいて、剣は皇女様(補佐:アルフリード)、弓矢はお父様に教わっていけば良さそうね。


槍は……


「やはり槍を扱うなら、騎馬戦を想定したカリキュラムも必要だな。基本なら私でも教えられるからそれをやりつつ、乗馬も合わせて組み込もう。慣れてきたら、師匠、私も騎馬術は忘れているから一緒にレッスンを頼む」


皇女様の提案に、団長様の顔はパッと明るくなった。


「ちょうど今、先日の騎士団の合同演習の事後処理で忙しいもので、落ち着いたら進めましょう! 姫様を直々にお教えするのは何年ぶりだろう……」


他の武器についても教えてもらった後、団長様は忙しいということもあって、武器を撤収して去って行った。


「ちょうど昼だな。皆で昼食にしよう」


そしてなんと、恐れ多いことに陛下の一言により、公爵様、お父様に皇女様、アルフリードというメンバーでランチを頂くことになってしまった……



陛下の執務室に併設されているダイニングに向かっている途中だった。


「ここで、この間の計画の協力者を集めるぞ。ついでに、あの2人にも承諾させるんだ」


皇女様が耳打ちしてきた。

これは、ヘイゼル家の幽霊屋敷の改造計画のことに違いない……


皇族専属シェフのめちゃくちゃ美味しいお魚料理を堪能して、大大大好きな皇城パティシエさんのデザートが運ばれてきた頃だった。


「エミリア嬢が嫁ぎ先のヘイゼル邸があまりにも居心地が悪いからリフォームしたいと言っている。賛同する方は挙手願いたい」


突然、皇女様が淡々と話し出した。


陛下とお父様の体がピクッとなり

すぐさま2人は挙手した。


公爵様とアルフリードは、ちょっと意味がわからないというような顔をしている。


「エミリア嬢、それは本当か?」


公爵様の動揺している顔を見るのは申し訳ない気がするけど、ここは意思をハッキリさせておかなきゃ。だけど、何と言えばいいか……


「私も初めてあの屋敷に行った際に感じたが、ヒュッゲが足りないぞ」


すると、お父様が話に入ってきた。


「侯爵様、ヒュッゲとは?」


アルフリードが興味津々みたいだ。

私もヒュッゲって聞いたことあるな……


「なんでも本で読んだが、北の方の国の考えで心地いい空間のことを言うらしい。別の本では、自宅をストレスのない心地いいものにしておくと、仕事のパフォーマンスも70%上がるとも言われている」


「なるほど、それは興味深いですね。エミリアがストレスフルでは僕もつらいから父上、彼女の好きなようにさせてあげましょう」


あ、なんか上手く話がまとまりそう。


「うーむ、しかしあれは帝国が建国されてから、ずっとそのままの姿を維持しているいわば、国宝級の邸宅だからそう簡単にはな……」


公爵様……? 確かにある意味、国宝級の気味悪さではあるけど、そこまでゴネなくても……


「公爵、これは命令だ。リフォームしなさい」


最強の陛下の一言だった。


公爵様はちょっと納得しかねる、という表情で抗議を示しまくっていたけど、最終的に。


「……御意(ぎょい)


この場にいたアルフリード以外の全員はホッと息をついたのだった。

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『皇女様の女騎士 番外編集』
本筋に関係ない短編など
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サイドストーリー
連載中『ラドルフとイリスの近況報告【改訂版】』
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