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色彩の大陸2~隠された策謀  作者: 谷島修一
終章
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交渉

 大陸歴1658年6月20日・ブラウグルン共和国・モルデン


 帝国が共和国領内から撤退を決めて約一か月半が経った。


 ブラミア帝国の外務大臣のイワン・ブリューバイ率いる帝国の代表団数名と、ブラウグルン共和国暫定政府の代表であるエリアス・コフと数名がモルデンの城内の大広間で帝国軍の撤退について何度目かの話し合いを行っていた。お互い大きなテーブルを挟んで対峙している。

 既に帝国軍の大半が共和国の領内から撤退していた。残るは、ズーデハーフェンシュタットにルツコイ率いる第五旅団の残りと、オストハーフェンシュタットにスミルノワの率いる第一旅団の残りがそれぞれ三千名程度いるだけで、数日中には出発する予定だ。

 モルデンでは、交渉により帝国軍は早々に撤収することになり、すでに残っていない。正確に言うと帝国皇帝直属の遊撃部隊がいるが、ほとんどが共和国出身の者であり、すでに共和国派と合流し、実質的には共和国軍としての立ち位置だ。


 一方の共和国は、再独立が確実となって主導権争いが表面化した。

 現在、共和国暫定政府と軍は、モルデンで活動していた共和国派のエリアス・コフが中心となり指揮している。共和国再興の立役者の一人であるダニエル・ホルツの部隊は解散となっていた。本来であれば、ホルツが率いる千人の最初の反乱兵達は早々にモルデンの共和国派と合流するはずであった。

 私がモルデンを掌握した際、ベルグブリックのホルツの元には、私からの命令でマリア・リヒターが伝令として行き、モルデンは共和国派が掌握したと伝わっていた。しかし、その後、共和国での主導権を握ろうとするコフによって、ベルグブリックでは帝国軍が山脈を越え進軍する気配があると嘘の情報を流された。ホルツがベルグブリックからモルデンに向かえば、背後から帝国軍に襲われることになり、下手に動きが取れなくなっていた。

 しかし、帝国軍が現れない状況に疑問を感じたホルツ達はモルデンに向かうことを決意する。しかし、コフの命令により共和国派が途中の街道を封鎖し、ホルツ達がモルデンに近づいたところを攻撃し、粉砕してしまったというのだ。


 モルデンを解放したのは、私の功績が大きいが、コフはそれを隠し、自分が主導してモルデンを解放し、結果的に共和国が再興されたと喧伝をしていた。

 さらには、私は“帝国の英雄”であると呼ばれている上、ズーデハーフェンシュタットで、帝国の傭兵として三年に渡り共和国派の反乱の鎮圧を手助けしていたという事実から、クリーガーは“裏切り者”であるという評価が広まりつつあった。

 実は、それを広めているのもコフであった。


 オットーやソフィアを始めとする元遊撃部隊の多くの者はその状況に不信感と怒りを感じていた。しかし、遊撃部隊はバラバラにされ、もはや共和国軍の彼らは一兵士でしかなく、抗議を言う程度の事しかできなかった。しかも、その抗議も無視され続けた。

 この状況にオットー、ソフィア、プロブストなど元遊撃部隊の多くの者が、もう共和国軍には興味がなく、除隊してしまおうと考えていた。

 遊撃部隊の隊員たちの内、数名ではあるがオレガのような帝国出身の者がいた。彼女らはすでに遊撃部隊から離れ監視下に置かれている。そして、今は封鎖されている国境が通行可能になれば、帝国へと戻っていくことが許可される予定だ。


 オレガも帝国首都に戻ると、遊撃部隊を実質的に指揮していたプロブストに伝えてある。

 もちろん、同じクリーガーの弟子であるオットーとソフィアにもそのことは言ってあった。二人とは一年と数カ月のそんなに長くない付き合いだったが、オレガは彼らにとっての妹弟子で、ズーデハーフェンシュタットではよく面倒を見てくれた。帝国出身である自分にも色々と良くしてくれたことについては感謝しかない。


 モルデンには帝国からの出稼ぎ労働者も多かったが、戦前からのモルデンの住民は帝国の人間に恨みを持っている者も多く、立場が逆転した今、帝国の出身の者は復讐で襲撃されるのではないかという恐れから、屋内に閉じこもっているようだ。国境が解放されれば早々に帰国するに違いない。

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