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色彩の大陸2~隠された策謀  作者: 谷島修一
ソローキン反乱
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開戦

 大陸歴1658年3月23日・帝国公国国境付近


 ソローキン率いる第二旅団長、キーシン率いる第三旅団長がブラミア帝国とテレ・ダ・ズール公国の国境線であるセベルー川に到達した。

 ソローキンは川岸から川の流れを見つめた。数日の雨で、川は少々増水していて流れも速いが、軍が渡河できないほどではない。

 ソローキンは全軍に渡河を始める様に命令した。


 ゆっくりとソローキンとキーシンの重装騎士団が渡河を開始、騎兵、歩兵がその後に続く。

 馬の脚の半分が水につかる。人では太腿辺りまでの深さだ。


 最初に先頭を進む重装騎士団が渡河を完了した。続く騎兵、歩兵はまだ川を渡り切っていない状況だった。ソローキンが振り返ってその様子を見ていたが、突然、近くで大きな音と振動が地面を揺るがした。

 その振動の方向を見ると、今までそこになかった巨大な岩が突然現れていた。

 いや、これは空から落ちてきたのだ。岩の下敷きになっている重装騎士団と馬が見えた。

「気を付けろ!」

 誰かが叫ぶのが聞こえた。

 空から巨大な岩が幾つも降って来た。岩は何度も振動を立てて地面を震わせた。そのたびに下敷きになる兵がいる。重装騎士団は大混乱となった。

 これが、ペシェハノフの言っていたカタパルトによる攻撃か。このような巨大な岩を投げつけることができるとは。想像するのと実際に見るのとでは、やはり迫力が違う。

 しかし、ペシェハノフが接近戦では役に立たないと言っていたのを思い出した。敵軍に近づけば、この攻撃を避けることができるだろう。

 ソローキンは叫んだ。

「落ち着け!態勢を立て直せ!」。

 ソローキンは剣を抜いて、大声で命令を出した。

「突撃だ!」

 ソローキンが先頭を切って馬を進めると、他の者もそれに続く。

 岩は変わらず近くに落下してくる。ソローキンが空を見上げると、岩が放物線を描いているのが見えた。その放物線の先は前方の丘に隠されて見えないが、そこにカタパルトがあるのに違いない。

 ソローキン率いる重装騎士団は鬨の声を上げて馬の速度を上げた。キーシンの重装騎士団もそれに続く。

 カタパルトの攻撃に阻まれて騎兵と歩兵は川の途中で立ち往生していた。


 重装騎士団がしばらく進軍し、正面の丘の近くまで到達した。

 ここまで来ると、カタパルトの攻撃が無かった。聞いた通り、近距離の攻撃は不可能のようだ。

 突然、前方の丘の方から鬨の声が聞こえた。そして、公国軍の騎兵部隊と歩兵が丘を越えて来るのが見えた。公国軍は横に大きく広がってこちらに向かって来る。数は見たところ三千と言ったところか。こちらの重装騎士団は千。数では劣るがソローキンは戦えると判断し、突撃を続けた。


 公国軍の騎兵がすれ違う瞬間、ソローキンは盾を構えた。相手の剣が盾に当たり、金属の当たる鈍い音が響き渡る。ソローキンは、次の相手がすれ違う時、剣を振りぬき相手を切り裂いた。

 数に勝る公国軍を帝国軍の重装騎士団は、その厚い鎧に守れられて善戦を続けていた。


 近くで稲妻が走るのが見えた。公国軍の魔術師が数人、この戦闘に参加してきたようだった。馬の上から稲妻を放つ兵がいる。たとえ、厚い鎧と言っても稲妻は遮ることができない。次々と稲妻に撃たれて落馬していく。

 これによって、少しずつ重装騎士団が押されてきた。

 カタパルトによる攻撃は変わらず続いていたようだが、ようやく帝国軍の騎兵の一部が渡河し追いついてきた。徐々に騎兵の数が増えていき戦闘に参加する。それに続いて歩兵が追いついた。

 これによって、戦況が一挙に帝国軍に有利に変化した。しばらく戦闘が続いた後、公国軍が撤退を開始した。


「よし、一気に追撃する!」

 ソローキンが号令を掛け、全軍が逃げる公国軍を追い始めた。

 丘を越えると、何か木造の奇妙なものが幾つも燃えているのが見えた。あれがカタパルトだろうか。

 しかし、カタパルトがなぜ燃えているのか。ソローキンは、今はそれに構わず公国軍を追う。

 はるかに続く草原の先に柵が並んでいるのが見える。公国軍はそこに向かっているようだ。柵の規模を見ると、おそらくそれが本隊の陣地のようだ。敵兵はその陣地に向かっている。

 陣地に帝国軍が近づくと、矢が放たれ、無数の矢が降り注いできた。

 こちらの兵士がどんどん撃たれていく。ソローキンは、盾を上に構え矢を遮る。そして、矢を避けるため、一旦後ろに下がるように命令した。

 公国軍は陣地に吸い込まれていく。

 一方の、帝国軍は公国軍の陣地から離れ、後退し国境方向へ引き返す。


 ソローキン達は、一旦カタパルトが燃えているあたりまで後退した。

 カタパルトがこちらの手に渡るのを恐れてだろう、公国軍は自らカタパルトに火を放ったようだ。カタパルトは黒後げに燃え尽きて原形をとどめないほどになっていた。

 カタパルトは城攻めに使うとペシェハノフが言っていたように思ったが、やはり国境を超え、帝国の都市プリブレジヌイを攻撃する予定だったに違いない。


 ソローキンはもう少し後退し、丘の上に陣を展開するにした。

 公国はこちらがこちらから侵攻してくるとは予想していなかったのだろう、カタパルトとそれを守る部隊の数は多くなかった。

 帝国軍は、先ほど戦った公国軍の半分は打ち取っただろう。こちらも被害が出たが、敵の被害に比べれば大きくはない。そして、敵のカタパルトを使用できなくしたのも、大きな戦果だ。端緒の戦闘としては、いい結果だ。

 現在のところ、ソローキン、キーシンの両旅団の兵力の合計は二万四千。

 敵の本陣の様子を偵察した者からの報告のよると敵の兵力は、やはり二万五千程度、ほぼ同数のようだ。


 ソローキンとキーシンは指令室のテントで、明日からの攻撃について話をした。

 まずは、ペシェハノフにこの勝利を伝えるため、伝令を出発させた。ペシェハノフに気が変わったら、我々と共に攻撃に参加しろとも伝える様に言ってある。

 公国軍の本陣は柵を立てているだけの簡単なものだった。攻略するのは、さほど難しくないだろう。今日のうちに各小隊に明日の作戦を伝えておく。


 辺りは平原の為、隠れるところはないが、念のため夜襲に備えて、歩哨を多めに立たせた。

 そして、兵士を休息させ、明日早朝の出撃に備えた。

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