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色彩の大陸2~隠された策謀  作者: 谷島修一
謎めいた指令
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再会

 大陸歴1658年3月16日・帝国首都アリーグラード城内


 今日は、外は朝から雨で、城内も少々じめじめしている。

 遊撃部隊は昨日から全員城内でしばらくの期間、待機命令が出ていたが、今日と明日も全員休暇の命令を出していた。


 オレガは、奇しくも一年ぶりで生まれ育った首都アリーグラードへの帰省となった。実のところ、たった一年で首都に戻ることがあるとは思ってもいなかった。何年もここには来られない覚悟をしていたが、予想外での早い帰省となり、少々複雑な心境だ。

 オレガの父親は“ブラウロット戦争”で戦死、母親は幼いころに亡くしている。きょうだいや親族もいないので首都には身寄りがない。

 オレガは、去年まで城内で召使いをやっていたが、師となったユルゲン・クリーガーに無理を言って弟子にしてもらった経緯で、首都を離れズーデハーフェンシュタットに行くことになった。

 折角、首都に戻っても、もう家族は居ない。会いたいと思う人は召使いをやっている元同僚ぐらいだ。

 オレガは自分が働いていた召使い達の控室に向かった。


 控室に入ると、見慣れた顔ぶれが数人いた。

 なかでも一番の年長で初老の召使いのアレクサンドラが、オレガに一番に気がついた。

「オレガじゃない!」

 アレクサンドラはオレガに駆け寄って抱きしめた。

「元気そうね」

「はい、サーシャさんもお元気そうで」。

 オレガも珍しく自然と笑顔になる。部屋にいた他の召使いたちもオレガを取り囲み、口々に声を掛けて、再会を喜んでいる。


「制服が良く似合ってるね」

「少し背も伸びたんじゃない?」

「剣の腕は上達した?」

「あっちの暮らしはどう?」

 などと元同僚たちに質問攻めにあってしまう。

 いろんなおしゃべりをして、しばしお互いを懐かしんでいた。


「最近、なにか変わったことはないですか?」オレガは何気なく尋ねた。

「前皇帝が崩御してから、最近は私たちの街でも不満の声が高くなっているわ。ナタンソーンという人が指導して、組織立った抗議活動も増えていたわ」。

 アレクサンドラは答えた。

 オレガやアレクサンドラはじめ召使いの多くは、首都の北部の貧しい地域の出身者が多い。そこは農業に従事する者が多いが、首都の北側は土地が肥沃でないため、歴史的に貧しい地域だ。現在も貧しいが故に首都中心部に出稼ぎに来る者が多い。また、若い男は兵士に、若い女は兵士や首都中心部で夜の仕事に従事することが多い。

 たしかにその地域では、国に不満を持つ者は多かった、オレガ自身もそうだった。しかし、それを表立っていう者は数年前はまでほとんどいなかった。

 皇帝イリアになってからは、少しはましな政策がとられていると聞いたことがあるが、北部の地域に関してはそうでもない、ということのようだ。


 オレガは城で召使いをやっていた。その先の見えない自分の状況から逃げ出したいから、変化を求めてクリーガーの弟子になったという面もある。そして、いつかは自分の生まれ育った土地を抑圧されている状況から脱却させたいという思いもあった。クリーガーの弟子になって今の自分の状況を変えれば、何か光が見えて来るかもしれない、という漠然とした希望を持っている。此処を去って一年。剣や魔術は覚えた。しかし、まだまだ自分の力量では生まれた土地の何かを変えるということは難しい。


 オレガは、話を聞いて反政府活動を指導しているというナタンソーンという人物に興味が湧いてきた。ナタンソーンはどういう人物なのだろうか。機会があれば会ってみたいと思った。

「そのナタンソーンという人には会えたりするんですか?」

「以前は、街中で演説をしていたみたいだけど、最近は国の締め付けがかなり厳しくなって地下に潜って活動しているみたい。だから、会うのは難しいんじゃないかしら」。

「そうですか」。

 会うことは難しいのか。少し興味があったのに残念だ。

 少し考えこんで無口になったオレガに、アレクサンドラが声を掛けた。

「なにか食べる?賄いの食事があるけど、久しぶりにどう?」

 そういえば、今日は朝食をまだ食べてなかった。

「いただきます」。

 と、オレガは答えた。

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