暖炉1
「さぁ、センカ行こう…
あれの処理は森の者達が行ってくれる」
血溜まりに事切れて沈みかけたあれと呼び捨て一見するとヨトは振り向いて静かに反対方向へ歩き始めた。
落ち着きのある低音な声であるものの若干震えている様に感じ、その足取りは何処となく重く見えた。
「日本であるのなら地獄という言えば伝わるだろうか?」
唐突に話は始まった
「?」
木々の根が犇めき合いその木々が落とす影で足元は暗く、足元に注力しなければ何処かに足を引っ掛けてしまいそうで私はこの問い対する解答を出せなかった。
「ああ、すまない
まずここが何処であるかをはっきりした方がいいと思ってね」
「ここは日本の文化における地獄のようなものだ」
「違いと言えばハッキリとした役目を持った閻魔や獄卒などはいないかな、先程のようにそれを謳う者もいるが」
「それに熱かったり寒かったりもしないね」
身体を支えるために掴まった木の幹には先程飛び散った血が木々の合間を縫って辿り着き、今まさに滴り始めていた。
ヨトは話を続ける。
「…すまない、自分で例えておきながら日本の地獄がそうなのか分からないのだが、他に付け加えておくのならここに来たものはその時点で老いることはない」
「それからこの世界の呼び方は多くの者が"死んだ世界"と呼んでいるね」