第三十八話
「ちなみにお前以外の29人の生き残りについては、名前だけだったな。さすがに人数が多かったし」
「俺もそうでありたかったな」
くそっ、冷凍保存のカプセルが壊れていたばかりに、こんな目に……。
ついてねぇ。
「あっ、でも。リーダー役みたいな奴は最後になんかいろいろと話してたぞ。何人が魔獣によって犠牲になったかとか。割と暗いこと言ってたような気がする」
「へぇ」
「正直ウチはああいう雰囲気は好きじゃねぇんだよな。飯は明るい気持ちで食った方が上手いに決まってんだろ」
「まあ、確かにそれはそうだな」
ネガティブな発言は止めておこう。
「というわけで朧月。到着だ。ドアを開けたらウチはいつもの定位置に行くから、お前ひとりで総長のいる場所に向かってくれ」
えっ、もう着いたのかよ。
全然気づかなかった。
「わ、わかった」
紅蓮はドアを横に開く。
すると、長い机に並んでいる大人数の姿が視界に入ってきた。
全員黒い軍服を着ている。
半袖の人もいるな。
すごい圧だ。
ざわざわしている。
全員で120人くらいって言ってたっけ?
マジかよ。
俺、この人数を前に自己紹介すんの?
地獄じゃん。
「おーい、主役がきたぞー。百年前の最後の生き残りの到着だ」
紅蓮が大声で言った瞬間、全員がこちらを向いた。
「まさか今日現れるとはな」
「でも前の百年前の生き残りたちが現れてちょうど一年くらいだし、タイミング的にはいい感じだよな」
「細ぇやつだな。男は一に筋肉。二に筋肉だろ」
「それはあんただけだよ」
「あっ! 確かにあの男子……冷凍保存される当日にいたよ。私見た覚えある」
「ああ、俺もだ」
「結構かわいい顔してんじゃん」
「えぇ、そう? 普通じゃない?」
「男は三に筋肉。四にも筋肉だろ」
「あんたうるさいよ」
「ママー。あの人だれ~?」
「総長が言うには、百年前の生き残りさんだって」
みんなが口々にそんなことをつぶやく。
割と耳に入ってくるな。
「ほら、朧月。早く行け」
「お、おう」
俺は壁沿いを歩いて、総長が立っている場所へと歩いていく。
みんなの視線が痛い。
すごく緊張する。
「おう、一年ぶりくらいだな。生きててよかったぜ」
「お前のカプセルだけ開かなかったけど、結局出てこられたんだな」
途中で、並んでいた高校生っぽい二人がそう言ってきた。
「あっ、うん」
俺は進みながらも頷く。
この二人、見覚えがある。
俺と同じ百年前の生き残りで、挨拶ついでに多少会話をした二人だ。
俺は体感で二週間程度だけど。
向こうにとっては一年以上空いているはず。
よく覚えていてくれたな。
「総長が全員集まれって言うから、いつもより早く整備の仕事を切り上げてきたけど、人が増えるのか?」
「そうみたいだな。俺は大志からあらかじめ聞いていたから知ってたけど」
「あの子……結構いいスタイルしてるね」
「そうか? 俺はもっと筋肉がある方がいいけどな。男は五に筋肉。ひとつ飛ばして七にも筋肉だ」
さっきから筋肉発言している奴誰だよ。
めちゃくちゃ耳に入ってくるんだけど。
目的地に到着した。
総長は全体を見渡しながら口を開く。
「みんな静かに。……もうすでに知っている者もいるとは思うが、今日は新しく泡沫組の仲間になる新人の紹介をする。彼は朧月零。百年前の最後の生き残りだ。今からちょうど一年前に、百年前の生き残りが大勢やってきたと思うが、そのうちの一人だ。どうやら冷凍保存の機械が故障していたせいで、一人だけ目覚めなかったらしい。それで今日遅れてやってきたわけだが、みんな仲良くしてやってくれ。……ほら、朧月零。挨拶を」




