第二十九話
「使用した銃のマガジンは、弾が残っていようが一発でも使用していればこのなかに入れるんだ」
そう言って紅蓮はアサルトライフルの弾倉を木箱のなかに入れた。
「へぇ……」
「そうすれば専門の奴らが銃弾を作って満タンに補充してくれる。破損した銃もこのなかに突っ込んどけばいずれ直って帰ってくる」
メカニックがいるのか。
「かなり技術力が高いんだな」
「ああ。……ちなみに生き残りの高校生たちのなかにも銃を直したり改造できる奴が二人くらいいたぞ? て、そういえばお前、あいつらのことについてはまだ思い出してないんだっけ?」
俺は首を左右に振る。
「いや、全部思い出したよ。だけど、そもそも俺を含めた50人は冷凍保存される当日に顔を合わせただけだから、実質初対面だ。……つまり現状、俺一人だけぼっちってことか」
「ま、あいつらは約一名を除いて人当りもいいし、すぐお前とも仲良くなれるだろ」
「約一名を除いて? ……どういうことだ?」
「なんか一人だけいるんだよ。個人行動しかしない前髪が長い奴」
「そんな人いたっけ?」
ピンとこない。
というか冷凍保存される前に数時間ほど一緒にいただけで、50人全員のことを覚えられるはずがない。
「わからねぇか? 泡沫組にやってきた初日からずっとフードをつけていたから、わりと印象的だとは思うが」
フード?
そういえば、いたような気もする。
「うん、多分覚えてる」
「そうか。まあなんにせよあいつにはあまり関わらない方がいいぜ? 優しくて優しいウチが先に忠告しておいてやる」
優しいを重複さすな。
「関わらない方がいいって……何かあったのか?」
「話しかけた奴は全員舌打ちされているし、何人かはナイフを首に突き付けられていた」
ナイフって……マジかよ。
「……危ない奴だな」
「ただ調子に乗っているだけの奴ならよかったんだが、あいつは異様に身体能力と戦闘技術が高くてな。誰も注意ができない状態なんだよ」
「紅蓮でも勝てないのか?」
「はぁ? 勝てるに決まってるだろ。ウチを誰だと思ってんだ?」
「えっ……じゃあなんで誰も注意ができないなんて言ったんだよ」
「…………ウチは戦略的撤退をしているだけだ。負けてなんかいねぇ」
「つまり勝てないから諦めて逃げた……と」
「戦略的撤退だ。そこを間違えるな」
なるほど。
要するに勝てないんだな。
「あ……ああ」
「くそ、あいつ十六夜終とか言ったか? いずれぜってぇ殺す」
なんじゃその名前。
そんな苗字現実にいるのか?
俺も人のことは言えないけど。
「そんなに強いのか?」
「ウチとしたことが、気づいたら気絶……すぐにウチを戦略的撤退をするという結論に至らせやがったからな」
負けてんじゃねぇか。
「……誰も勝てないとなれば、俺なんかが敵うわけないし。下手に注意をしたりするのは止めておこうか」
「おう、そうしろ。あいつは容赦の欠片もねぇから、ボコボコにされても知らんぞ」
「ああ」
それにしても。
さすが日本のなかから50人に選ばれただけあるな。
アニメや漫画ならともかく。
そもそも対人戦でそこまで差がつくことはない。
ましてや紅蓮はこの世界で育った人間だ。
そんな紅蓮が、一瞬で気絶させられていたとなれば、差は歴然だろう。
他にもメカニックがいたり。
俺……なんで選ばれたんだ?
場違い感が半端ないんだけど……。
確かに物覚えはいいし。
なんでもそれなりにこなすことはできるけど。
何かが突発してできるわけじゃない。
「そういえば朧月。お前ハンドガンと軍服を道中で手に入れたとか言ってたな?」
「あ……うん。持ち主は骨になっていたし、かなり前のものだと思うけど」
「軍服と一緒に落ちていたということは、そのハンドガンはウチの組織のものだろう。ウチがしまっておいてやる。だから寄こせ」
「わかった」
太もものホルダーからハンドガンを外し、紅蓮に渡した。




