第三話
その場に座り、床の上に置かれている戦利品に目をやる。
真空パックに入っている水の入ったペットボトルが三本。
真空パックに入っているカロリーメイトが三箱。
これらは同じ箱に入っていた。
まさか部屋のなかで食料が手に入るとは。
探索しておいてよかった。
それにしても。
なんで真空パックのなかに?
真空パックって長期間保存するためのものだよな?
とすると、これを準備してくれていた人は用心深い……。
いや、考え方が違う。
「これは俺たち全員に支給される物……ってことか?」
異常があって俺はみんなと一緒に目覚めることはなかった。
そしてなぜか記憶もない。
もし仮に全員分の食料が、誰かによって用意されていたならば。
「カプセルの数よりも、箱の数の方が少し多くなるはず」
だって、それぞれの私物が入っている箱+全員分の食料が入った箱が幾つか。
ということになるはずだから。
俺はカプセルと箱の数を数えていった。
無事に数え終えた後、一度見直し。
間違えていたんじゃ話にならないからな。
「……うむ、なるほど」
結果はカプセルが50個。
つまりこの世界には、少なくとも俺の他に49人の人間がいるということ。
続いて箱の数。
こちらは55個だった。
やはり俺の仮説は正しい。
一人ひとつずつ私物の入った箱があり。
それとは別に誰かが全員分の食料を用意してくれていたようだ。
箱の大きさからして、ペットボトルとカロリーメイトが一人三つずつなのも納得できる。
誰が用意してくれたんだろう。
この異世界の神様かな?
集団転移させておいてチートのひとつも渡さないのはどうかと思うけど。
とりあえず水と食料をくれたことには感謝しておきます。
普通にお腹が空いていたし。
喉も乾いていたからな。
真空パックのなかからペットボトルを一本取りだす。
キャップを回して早速一口。
ひんやりとした感覚が口いっぱいに広がった。
「うめぇ」
もう一口飲みたくなるけど。
我慢。
下手をしたらこの辺に水がないかもしれないからな。
手に入るかどうかわからない以上、節約をするのは当然だ。
キャップを閉めて再び真空パックのなかに戻した。
さて。
戦利品の紹介に戻ろうか。
何もない床に目をやる。
続いての物品はこちら!
そう、何もないという事実がありました。
「……」
どういうことかって?
そういうことだよ。
つまり食料以外は何もなかったんだよ。
はい。
まあそうだよな。
普通こんなわけのわからない世界に連れてこられたら、持ち物全部持って行くよな。
むしろ、よく俺の分の食料とか私物を残していてくれたな。
盗まれていてもおかしくなかったと思うけど。
ん?
食料はともかく、俺の服に関しては願い下げだって?
うるせぇ。
俺もちょっと思ったよ。
「よし、そろそろ外へ出てみるか」
まだあまり時間は経っていないが、ずっとこうしているわけにもいかない。
カロリーメイトは真空パックごと制服のポケットへ。
三箱詰め込んだだけあって、ポケットがかなり膨らんだ。
ペットボトルはさすがに全部は入らないため。
ズボンのポケットへ一本だけ入れておく。
とりあえず水場を探したい。
で、見つけたら再びここへ戻ってくるとしよう。
そんなことを思いながら扉の前へ移動。
ハンドルを回し、やがてカチッという音が響いた。