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第十九話

 なかへと入ると、紅蓮が入口の扉を閉めた。

 特に鍵などを掛けている様子はない。

 

「その扉って勝手に鍵が閉まるのか?」

「まあな」

「やっぱりか」

「そのせいで子供の頃、一度はやるんだよな。……なかからはいつでも出られるわけだから、夜、大人たちに見つからないようこっそり遊びに出るんだよ。で、結局パスワードがわからずに建物内へ戻れなくなる。三歳くらいだったかな? あの時は焦ったぜ」

「へぇ。まあ確かにそういうことも起こりえるのか」

「鳥の魔獣に襲われていたら今頃お前は死んでいたぞ! とか、いろいろ大人たちから注意されたおぼえがあるな。あの時はさすがのウチも泣いたぜ」


 それだけ大人たちからきつく言われていたのに、こんな十八歳に育ったのか?

 う~む。

 人間って不思議だよね。

 

「あ、そういえば。ありすなんてウチと一緒に建物へ入れなくなった時、おしっこ漏らしてたよな?」

「!? ……そういうこと言うの、やめて」

「別にパンツ脱いで地面にすりゃーいいのに、『やだー。おといれじゃなきゃ、やなのー』てさ。今でも鮮明に思い出せるぞ?」

「……お願いだから忘れて」

「あの後。朝になるまでずっとすっぽんぽんでいたよな。『しのちゃんさむい~』って、しゃがんで」

「……」


 ありすさんは顔を真っ赤に染めている。

 

「真っ黄色になったズボンとパンダさんパンツを入り口の前に置いて、息を吹きかけて乾かそうとしてた姿は滑稽だったぜ。なんせお尻と割れ目をずっとウチに向けてたんだから」

「……」


 なんか話が生々しい。

 ものすごく居心地が悪い。

 俺、ここにいてもいいのだろうか。

 ありすさんの顔がマジで赤い。

 爆発寸前のりんごに見える。

 まあ、無理もないな。

 聞いているだけの俺でも恥ずかしい。

 というわけでそろそろやめさせよう。

 

「おい、そろそろ行かないか?」

「おお、わりぃわりぃ。懐かしくてついありすとの思い出話に花を咲かせちまったぜ。ありすはお花を摘みに行けなかったんだけどな。ハハッ」

 

 ほんとよく喋るよな。

 というか紅蓮以外ほとんど喋ってない。

 この基地内で漫談でも始めればいいんじゃないだろうか。

 天職だと思うぞ。

 

「で、その組長へ会いに行くには正面の階段を上がればいいのか?」

「おう。またあとで基地の案内はしてやるから、とりあえず早く挨拶を済ませに行こうぜ。……ったくよぉ。朧月のせいで全然進まねぇ。早く歩けってんだ」

「絶対お前のせいだろ!」


 堂々と人のせいにすんな。

 

「なんだと? 朧月のくせに生意気だな。ぶち殺すぞ」

 

 ……うむ。

 ここで何か言い返したらまた紅蓮が話し始めるな。

 さっさと先に進もう。

 俺はゆっくりと歩き出す。

 

「というか俺が先頭なのか? 初めての場所だし、不安なんだけど」

「お前を後ろにしたらウチらのパンツ覗くだろ? だから先に行かせてんだよ。……はぁ、そのくらい察しろよ。鈍感野郎」

「いや、どう考えても軍服とズボンの組み合わせを乗り越えるのは不可能だからな?」


 物理的にズボンをずらさないと見えないだろう。

 そしてそこまでして見たいとも思わん。

 ありすさんのだったら興味あるけど。

 

「お尻の形を凝視されるのが嫌なんだよ。そのくらい察しろ」

「軍服のせいで見えねぇよ!」

「いちいちうるせぇ野郎だな。文句を並べている暇がありゃ、歩く速度をもっと上げやがれ」

「……はぁ」


 言われた通り歩く速度を上げる。


 もし仮にの話だけどさ。

 将来紅蓮みたいな奴と結婚したら一生尻に敷かれるんだろうな。

 あれを取ってこいだの。

 晩御飯作れだの。

 掃除しろだの。

 マッサージしろだの。


 現にマッサージはもう言われているし。

 

 はぁ……そんな人生は絶対嫌だね。

 つまり何が言いたいかというと。

 俺が紅蓮のことを好きになる可能性はゼロだ。

 

 俺はもっとおしとやかな子がいい。

 ありすさんみたいな女の子がわりとガチで理想なんだよな。

 もちろん幼馴染の鈴を超える異性は、今後絶対出てこないだろうけど。

 でも、もう彼女はこの世にいない可能性の方が高い。

 それを理解したうえでいろいろと考えないと。

 いつまでも引きずるのだけは止めなきゃ。

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