第五話
「とりあえず自己紹介は待ってくれ。ちょっと仲間を探してくる」
そう言い残し、彼女は森へと入っていく。
俺は何もしなくて良いのかな? と一瞬思ったが。
特に何かができるわけでもなさそうだ。
森に入ったら迷子になりそうだし。
「おーい、ありすー!! もう狼はいないから、こっちに戻ってこい!」
「……し、鎬ぃ?」
森の奥からそんな返答が聞こえてくる。
今ふと思ったけど。
あの金髪ロングヘアーのありすさんって言ったっけ。
声が声優みたいだ。
「こっちだ、ありす!」
「……うん」
「全く、心配かけさせやがって。死んだかと思ったじゃねぇか」
「ご、ごめんなさい」
「いつも言ってるだろ? 魔獣が襲ってきたら木に登るか、銃でぶち殺すかどっちかにしろよ」
「……」
「逃げたらずっと追いかけてくるのは、ありすもよく知ってるだろ?」
「だって……怖い、から」
「ったく。そんなんじゃいつまで経っても一人前の大人になれないぞ?」
「うん」
「さっきの地味な男がいなけりゃ、今頃お前は死んでたかもな」
「……」
いや、聞こえているんですけど。
地味な男って。
「とにかく川辺にまだ地味なのがいるから、このあとお礼言っとけよ?」
「わ、わかった」
おい!
地味で悪かったな。
とそこで、二人の姿が見えてきた。
ありすさんは川辺へと出てくるなり、俺の目をじっと見つめてくる。
こうしてみると、めちゃくちゃかわいいな。
金髪ロングヘアー。
前髪は目のちょっと上で真っすぐ整えられている。
胸は控えめ。
というか、ないに等しい。
だけど良い。
彼女は口を何度か動かすも、なかなか声を発する様子がない。
十秒ほど経った後、目を逸らされた。
「おい、そこの地味男。悪いな。こいつは極度の恥ずかしがり屋で、初めてあった人どころか、同じ組織の人間相手でもおどおどしてやがる」
もう直接言ってきやがった。
地味で悪かったな。
「……俺は大丈夫ですよ」
「ほら、ありす。シャキッとしろ。そんなんじゃ明日には死んじまうぞ」
「で、でもぉ」
「でもじゃない。いつまでもそうしているつもりなら、銃で撃ち殺すからな?」
「し、しのぎ。……怖いよぉ」
「うるせぇ、早くしやがれ。ほら、地味男もイライラしてるぞ」
仲間の女の子相手にも容赦ねぇ。
口悪すぎだろ。
てか別にイライラしてないし。
人の心情を勝手に改ざんするな。
ありすさんは再び俺の方を向き、もじもじとしながら口を開く。
「あ……あの。お、狼を倒してくれて、ありがと」
「ううん、いいよ」
首を左右に振りながら返答した。
ありすさんはすぐに視線を仲間へと向ける。
「これでいい?」
「ああ。ありすにしてはよくやったじゃねぇか。だけど、表現がちょっと間違ってたな。狼を倒してくれて、じゃなくて狼をぶち殺してくれて、だろ?」
「それは……鎬だけだよぉ」
「うるせぇ。かわいい子ぶってんじゃねぇよ。そうやって男どもから好かれようとしてんだろ? ウチには全部お見通しだからな?」
「ち、違うもんっ!」
やばい。
今、頬を膨らませて否定したありすさんがめちゃくちゃかわいかった。
「まあ、それはさておきだ。話を戻そう。そこの地味な君は見ない顔だけど、どこの組織所属だ?」
「えっと……」
「あぁ。人に物を尋ねる時はまずは自分から話せって? まあそれに関してはお前の言う通りだな」
一言もそんなこと言ってねぇ。




