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第五十五話

 ハンドガンを構えつつ下を監視していると。

 茂みから一匹の狼が出てきた。

 

「……ふぅ」


 思わずため息をつく。

 安心した。

 狼も十分怖い魔獣のはずなのだが。

 機械蜘蛛を見た後のせいか、かわいらしく見える。

 まるで実家にいるかのような安心感。

 

 狼は川へと向かっている。

 水分補給にきたのだろう。

 

 俺はハンドガンをしまった。

 狼であれば必要はない。


 仮に機械蜘蛛だったとしても必要はないのだが。

 そもそも銃弾が通らないだろうし。

 仮にまぐれでダメージを与えることができたとしても、倒せるはずがない。

 撃った後にこちらの場所を特定されて、襲われるのがオチだ。

 機械蜘蛛に対する一番良い策は、静かにやり過ごすことだろう。

 つまりハンドガンは必要がない。

 

 ……あれ?

 じゃあなんでさっき構えたんだ?

 本能的に自分を守ろうとしたんだとは思うけど。

 まあいいや。

 別にそう大して大きなミスでもないし。

 

 いや、むしろいい判断だったかもしれない。

 相手が新種の可能性だってあるわけなんだから。

 まだこの森の全貌を理解できていない以上、警戒するに越したことはない。

 

 だから過去の俺、ナイスだ。

 物を切る短剣は、ナイフだ。

 早く欲しいなぁ、ワイフが。

 

 俺は韻を踏む天才かもしれない。

 

 そんなことを考えつつもじっと待っていると。

 やがて狼は、水分補給を終えて森のなかへと戻っていった。

 ばいばい、狼ちゃん。

 またね!

 できればもうきてほしくないけど。

 

「さて、行くか」


 ゆっくりと木を下りていく。

 立ち止まっている暇があれば進みたい。

 進んでいれば、いずれ人里に到着するはず。

 だから俺は足を止めない。

 

 

 

 

 およそ一時間後。

 

 俺は目の前の光景に、呆然と立ち尽くしていた。

 開いた口が塞がらない。

 

「嘘……だろ?」


 見渡す限り青色。

 何一つない鏡のような水面。

 一定時間ごとにやってくる波の音。

 潮風の匂い。

 

 一歩進むと、砂浜が少しだけサクッと沈んだ。

 

「これは、海……だよな?」


 俺はひたすら川を下り続けた。

 その結果、海に出たわけである。

 

 いや、あのスタジアムを見た時点で、川を下り続けていればいずれ海にたどり着くことは予想できていた。

 だけどそれよりも早く人里が見つかると思っていた。

 しかし現在、海に到着してしまったわけである。

 

 正面は水平線の彼方までずっと海が続いている。

 島などは一切見えない。

 

 左右はどちらも砂浜が続いている。

 もしかするとここは無人島みたいになっているのかもしれない。

 

 はぁ……。

 どうするよ。

 

「完全に目的がなくなったな」

 

 今まではただ川に沿ってひたすら歩いていた。

 だけどもう道を示してくれる目印はない。

 

 そもそも俺はこの世界で何がしたいんだ。

 生きる?

 じゃあ無人島生活に慣れていくしか……いや、違う。

 とにかく人に会いたいんだ。

 決して一人で生き残りたいわけじゃない。

 今までもそうだったはず。

 

 俺は人に会うために歩き続けてきたんだ。

 じゃあ今後も人里を見つけるために行動しないと。

 

 危うく方向性を見失うところだった。

Chapter 2 【森探索】 終

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ダンジョンでただひたすらレベルを上げ続ける少年
主人公最強モノでとても爽快なストーリーとなっています。また書籍化もされている人気作品ですので興味のある方はぜひ!
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