第五十一話
何にせよ、何人かがあらかじめ冷凍保存されていたということは……。
「地球がこうなってしまうことは、予想されていた?」
だから50人に未来を託した。
崩壊した後の地球に、人類を絶やさないために。
「鈴は……その50人のなかに入っているんだろうな」
そもそも冷凍保存されたのが、俺たち50人だけとは限らない。
他の地域でも同じような設備があった可能性は高い。
「あぁー。なんで俺には記憶がないんだよ」
冷凍保存されたおぼえなんてない。
最後の学校帰りの日に、いったい何があったんだ。
誰か教えてくれよ。
「もう何が何だかわからない」
頭がぐちゃぐちゃだ。
確率上、鈴が生きている可能性は低い。
仮に各地域で人間を冷凍保存していたとしても、当然カプセルに入るのはその地域の人々。
選ばれない人の割合の方が圧倒的に多い。
いや、一応同じ地域に同じような設備が複数あってもおかしくないのか。
だったら人類全員が生きている可能性も…………ないだろうな。
俺は白い建物を出発して以降、一度として同じ建物を見ていない。
それどころか人間が一人もいないのだから。
今この世界で生き残っている人は限りなく少ないというのが正しいだろう。
なんにせよ、鈴が生きている可能性はゼロじゃない。
それがわかっただけでも今は十分。
「……っ!?」
そういえば!
すぐにポケットからメモ帳を取り出し、一ページ目を開いた。
【破滅時代・81年・12月11日
部隊とはぐれて森のなかを彷徨っている
帰り道がわからない
早く家族に会いたい】
誰が書いたのかは知らないが。
この一番最初の【破滅時代】ってなんだ?
しかも81年って。
「まさか……」
俺が冷凍保存されて、少なくとも81年以上経過しているということはないだろうな。
その可能性は……非常に高い。
じゃあもし鈴が冷凍保存されていないとしたら。
仮に生きていたとしても、すでに老衰。
俺は膝から崩れ落ちる。
今まで何度も鈴に会いたいと願った。
こんな世界でも必ず会えると思っていた。
その可能性が今、ガタ落ちしたのだ。
メモ帳の持ち主は骨だけになっていた。
綺麗に並んでいたため、魔獣に食いつくされた可能性はほぼない。
軍服も綺麗だったし。
つまり死んでからかなりの年月が経っている。
死亡した後白骨化するまでにどれだけの時間がかかるのかは知らない。
でも今が破滅時代81年よりも経過しているのは間違いない。
「仮に今が破滅時代85年くらいだとするならば……当時鈴は俺と同じ高校生で17歳だったから、足し算をして102歳」
鈴は今102歳。
「あっ」
生きている可能性は、一応あるのか。
確率はほとんどないだろうけど。
鈴が生きている可能性が少しでもあるのであれば、それにかけたい。
例えおばあちゃんになっていたとしても、どんな姿だったとしても、俺は鈴に会いたい。
だから、こんな所でめげていたらだめだ。
元気を出せ。
今後人に会う機会があれば、今が破滅時代の何年なのか聞いてみよう。
なるべく81年に近ければいいんだけど。
「よしっ!」
その場に立ち上がる。
とりあえずこのドームを探索してみるとしよう。
何か良い物があるかもしれないし。
この時代に関する資料や武器があればいいのだが。




