第四十六話
「ん? 特殊な力?」
そういえばまだ一度も試してなかったな。
ここが異世界の場合、転移者の俺には何か特殊な力があるかもしれない。
それがなくとも、ステータスくらいなら存在している可能性がある。
なんでもっと早く気づかなかったんだろう。
ステータス画面が出てくれば、ここは異世界だという証明になるし。
出なくても、地球説が濃厚になるだけ。
なんにせよ俺に損はない。
というわけで、ステータス画面を出してみよう。
まず最初はあれかな。
定番のやつ。
「ステータスウィンドウ!」
右手を前にかざした。
しかし何も出てこない。
よし、次だ。
「ステータス窓!」
しかし何も出てこない。
「状態ウィンドウ!」
何も出てこない。
「状態窓!」
何も出てこない。
だめだ。
最初からふざけ気味になっている。
こんなので出るわけないだろ。
せめて可能性のある言葉を言えよ。
状態窓って、馬鹿正直な和訳をしただけじゃねぇか!
俺は誰にツッコんでんだよ。
俺かっ!?
さて、気を取り直して。
「メニュー画面!」
何も出てこない。
「メニューウィンドウ!」
出てこない。
「えぇーっと、他に何かあるかな……あっ、そうだ。ステータス!!」
出てこない。
なんかムカついてきたな。
案外声に出さなくても、心のなかで思っていれば出てきたりして。
ステータスウィンドウ!
……うむ。
出てこない。
こうなったらやけくそだ。
ステータスウィンデ!
ステータスウォンデゥー!
ステータスウェンディ!
ステータスウォンダァ!
ステータスウィイインド!
ステータスウンドオ!!
ステータスウィドウ!
ステータスウィーズリー!
ステータスウインディ!
ステータスウィ……。
「……はぁ」
諦めた。
出る気配がないもん。
大して面白くもないし。
まあ、正直言って出す気なかったけど。
最後の二つに関しては、ハリー〇ポッターの親友とガーディの進化系だし。
「微妙な仕込みがあるけど……多分誰も気づかないだろうな」
一応上から九文字目を縦読みしたら、ププ〇ランドを統治する某大王の名前が隠されているのだが。
そんなことは別にどうでもいいんだよ。
とにかくこの検証を終えてわかったのは、ここがステータスのない世界だということ。
つまり、地球説が若干濃くなったというわけだ。
「……」
なんかさ。
もうここが地球だろうと異世界だろうと、どうでもよくなってきたんだけど。
とりあえず人に会いたい。
多分ガチムチのおっさんに出くわしたとしても、泣けるほど嬉しいと思う。
人間って、欲深い生き物だよな。
肉が食べたいという欲求が収まると、その分別の欲がプラスされるというか……。
人に会いたいって思いが強くなってきた。
「あぁ……鈴に会いたい」




