第四十四話
早速足元の小石を幾つか避けて、砂を指で掴む。
これを穴のなかに少しだけ入れてと。
あっ、ちょっと入れ過ぎた。
いらない分を爪で払い落とす。
どのくらい入れるのが適切なのかはわからないけど。
とりあえず穴の三分の一が埋まるくらいで試してみよう。
よし、始めるぞ。
長時間だらだらやっても疲れるだけだ。
一気に決める。
俺は目を開き、両手で木の棒を回し始めた。
「おりゃー!」
最初から全力。
コツや要領は全て力でねじ伏せる。
俺は早く、焼いた肉が食べたいんだよ。
ぬぅぅぅ、始めたばかりなのに。
もうすでに腕がしんどい。
疲労が溜まっている。
「はぁ……はぁ」
だけど止めるわけにはいかない。
肉を食べるために、俺は限界を超える。
「いや、限界って……どうやって、超えるんだよ!!」
気絶するまで腕を動かし続けたところで、限界は超えられないだろ。
だってそこが俺の限界だからな。
よく限界を超えるとかいう表現が使われているけど、あれってただ単に余力を残しているだけじゃないのか?
もしくは限界の境界線をちょっと手前に引いているだけ。
ゆえに限界を超えるという表現は使わないでおこう。
俺は限界に近づく。
とその瞬間。
板の穴から少し煙が出てきた。
「おっ、やった!!」
こんなに早く成果が出るとは。
やはり砂で摩擦を増やすのは正解だったな。
さすが俺。
天才かもしれない。
「よし、もう少しだ」
頑張れ、俺。
下の綿に火種が移るまでは決して諦めるな。
それから三十秒後。
腕が疲れすぎて回す速度が若干遅くなってきたその時。
綿が少しだけ赤くなった。
急げ。
これを逃したらだめだ。
急いで顔を近づけ、息を吹きかける。
すると、火が少しだけ燃え上がった。
まだ油断はできない。
綿はすぐに燃え尽きてしまう。
綿を小石の上に置き、集めておいた植物を手に取った。
それらをゆっくりと燃やしていき、だんだん火を大きくしていく。
やがて細めの枝へ。
その後、無事に火を起こすことに成功した。
太い枝に火が移ってくれたため、そう簡単に消えたりはしないはず。
一応まだ枝はある。
火が小さくなってきたら足そう。
「そろそろ兎を焼いていくか」
木に登って兎の肉塊を回収し、枝を突き刺して焼いていく。
焦げがつく前に枝を回して均等に火を当てる。
少しして。
良い匂いがしてきた。
香ばしい。
やばい。
めちゃくちゃお腹が空いてきた。
だけどまだ我慢。
外側はかなり焼けてきているが、まだなかまで火が通っているとは思えない。
何せ、塊だからな。
もう少しじっくり焼こう。
そもそも俺は生肉があまり好きではない。
焼き肉でもステーキでもしっかりと焼きたいタイプなんだよ。
ステーキをレアで食べる人が結構いると思うけど、正直理解ができない。
なんで食べられるんだよ。
まだ赤いやん! ってツッコみたくなるわ。
ゲームとかのレアアイテムは好きだけどな。
「まあ、今なら多少赤くても食べられそうだけど」
空腹は最大の調味料というのもあるが。
自分で獲物を狩って自分で調理したのが大きいと思う。
だってもうすでにフライングしたいもん。
カリッと焼けている外側を齧りたい。
でも我慢するぞ。
俺は焼き終えてから、木の上でゆっくりとおいしく食べたい。




