第四十二話
「うわっ!?」
急いで近くの枝を掴み、落ちないように耐える。
危ねぇ。
なんだこいつ。
兎は少し後ろへ下がり、再びドロップキックを始めた。
「くるぞ」
枝を強く掴んで衝撃に備える。
同時に兎の両足が当たり、木が左右に揺れた。
「!? 強すぎるだろ」
揺れ幅が明らかに異常だ。
ボクサーカンガルーのパンチなんて比べ物にならない。
あんなキックを直接食らったら、どうなるんだろう。
想像したくもない。
「とにかく今は考え事をしている場合じゃない」
あいつをやらなくちゃ。
ハンドガンで正確に。
わたあめ兎はドロップキックをした後、一度後ろへ下がる。
そこがチャンスだ。
葉っぱのかごを掛けている左腕で枝を強く掴みつつ、右手だけでハンドガンを構える。
もう弾は装填されている。
いつでも打てる状態だ。
あとは俺の腕次第。
そこで、再びドロップキックがきた。
揺れるのと同時に左手に力を入れ、体がなるべく揺れないように堪える。
兎が後ろへ下がっていく。
集中しろ。
ハンドガンの銃口を兎へと向ける。
あいつが止まるタイミングは一瞬。
狙いはその瞬間。
とりあえず銃弾が当たりさえすればどこでもいい。
あの丸い体のどこに心臓があるのか、脳みそがあるのかなんてわからないしな。
兎は地面に着地した後、再び後ろへ下がる。
今までと同じならあいつは三歩下がるはず。
一歩。
二歩。
三──今だ!!
トリガーを思いっきり引いた。
凄まじい発砲音。
右手に力を入れてハンドガンの反動を堪える。
思わず瞬きをしてしまった。
「やったか?」
正直当たっている感覚もなければ、外れた感覚もない。
それも無理はないだろう。
今まで実銃で的当てなんてした経験なんてないのだから。
すぐに下を向き、兎の姿を確認。
「ま、マジか」
そこには……横たわっている兎の姿。
丸い体の中心から、血が流れてきている。
どうやら真ん中を撃ち抜いたらしい。
兎はピクリとも動かない。
死んでいるようだ。
「まさか俺って、射的の才能ある?」
初めてで中心を撃ち抜いちゃったよ。
なんにせよ勝負に勝った。
俺は兎をこの手で狩った。
嬉しさが身体中を駆った。
「とにかくあの兎を川で洗おう」
血の匂いが充満したら他の魔獣がやってくるかもしれない。
せっかく捕まえた獲物を横取りされたくなんてない。
ハンドガンをしまって木から下りると、兎を両手で持つ。
意外と重い。
近くで見ると完全にカービ〇の兎版だな。
川へ移動すると、すぐさま兎を水のなかに突っ込んだ。
手が冷たくて気持ちいい。
兎の傷口から赤い血が流れていく。
下流に住んでいる人、水を汚してしまってごめんなさい。
でも俺が生きていくには仕方ないんです。
許してください。




