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第三十八話

 最後に、メモ帳だ。

 再び一ページ目を開く。

 

【破滅時代・81年・12月11日

 部隊とはぐれて森のなかを彷徨っている

 帰り道がわからない

 早く家族に会いたい】

 

 これを見る限り、この人は破滅時代の81年に死んだらしい。

 破滅時代っていつだよ。

 少なくとも日本にそんな時代はなかったはず。

 つまり、未来の元号だと思われる。

 この世界は地球なのだから。

 

「いや、待てよ」


 顎に手を当てる。

 そうは言い切れないかもしれない。

 もし仮にメモ帳の持ち主が、俺と同じくカプセルのなかで目覚めていた人だったとしたら。

 その人が裏社会の人間だとすれば、ハンドガンを持っている可能性もあるわけだ。

 そう考えると、異世界に日本語で書かれたメモ帳があっても別におかしくはない。


 そもそも俺以外の49人は、先に目覚めているはずなのだから。

 他の人たちがどこで何をしていたのかなんて、俺が知るはずない。

 俺以外の人たちは、この世界で何十年も生き延びているかもしれないし、目覚めた時間が一週間程度の誤差しかないかもしれないのだ。

 それを俺が確かめるすべは、今のところない。

 つまり、ここが異世界だという可能性も少なからずあるってことだ。

 

「はぁ……」

 

 ここが100パーセント地球とか言ってた早とちり野郎はどこのどいつだよ。

 

「俺かっ!!」


 本当にここはどこなんでしょうか?

 誰か教えてくれませんか?

 異世界転移だとしたら不親切すぎやしないですか?

 神様でもヒロインでも村人Aさんでもいいから、説明してもらえない?

 そろそろ疑問すぎて死にそうなんですけど。

 

 というかさ。

 この世界で目覚めて六日目になるわけだけど。

 

「まだ日本にいた最終日であろう日の記憶が曖昧なんだよな」


 記憶喪失なのか。

 それとも、普段と変わらない普通の日だったのか。

 それはわからない。

 だけど思い出す気配がない。

 

 カプセルで目覚める前の一番近い記憶を辿ろうとすると、なぜか鈴が涙を流している光景が浮かんでくるのだ。

 そしてなんとも言えない気分になる。

 

 俺が思うに。

 あの日、【何か】があった。

 鈴の涙もそれに関係しているような気がする。

 

 なんとなく胸ポケットにしまっていた手紙を取り出す。

 白い建物に残されていた、49人のうちの誰かが書いてくれたであろう手紙だ。

 

【もし君がこの手紙を読んでいるということは、目が覚めたということでしょう】


 うん、覚めたよ!

 

【残念ながら君のカプセルだけ故障しているらしく開く様子がありません。機械に詳しい人も直し方はわからないとのこと。君がいつ目覚めたのかはわかりません】


 俺もわからない!

 

【だけどこれを読んでいるということは少なくとも無事なのだと思います。とにかく私たちは先にこの部屋から出ることにします。君とまた出会える日を】


 う~む。

 やはりヒントのようなものはない。

 だけど雰囲気からして、手紙を書いた人物と俺の距離感は遠い。

 少なくとも同級生がこんな書き方をするはずがない。

 つまり一切面識のなかった他人。

 

「……」


 そもそもの話。

 俺以外の49人って、この世界で目覚めた理由を知っているのかな?

 それともカプセルの故障のせいで俺だけが記憶を失った感じ?


「あぁ……考えてもわからねぇ」


 この手紙だけじゃ情報が足りなさすぎる。

 もうやめだ!

 どうせ答えは出ないんだし。

 これからは何も考えないからな?

 休むことだけに集中しよう。

 はい、スタート!

 

 腕を組んで目を閉じる。

 

 まあ一応可能性としては、学校の同級生が他人行儀な書き方をしただけ……て、おい。

 考え事をするなよ!

 休め!

 

 目を強く閉じる。

 

 体育祭とかでやる【休め】ってさ。

 あれ意味あんの?

 体力の消費で言えば、別に起立している時と変わらないし。

 ただ単に足を少し開いただけ。

 

 断言しよう。

 休めに意味などない!

 

 まあ、それを口に出すようなことはしないけどな。

 だってもし仮に俺が小説の主人公で、いろんな人に見られているのだとしたら、反論とか批判コメントをされそうなんだもん。

 要するにアンチだな。

 だから俺は心のなかで思うだけに留めておくのである。

 俺って頭いい。

 

 あ、ちょっと面白いこと思いついた。

 俺が今座っている枝は安全地帯。


 略して安地(アンチ)

 

「…………」


 すみません。

 

 マジで何でもないです。

 気にしないでください。

 

「……俺って無心になれないのか?」

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