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第三十二話

 見た感じ崖の高さは200メートルくらい。

 目測だから正確なのかどうかは知らないけど。

 多分そのくらいだと思う。

 

 例えるなら、東京スカイツリーの三分の一。

 おぉ、そう考えたらちょっと低く感じてきた。

 だってたった三分の一だぞ?

 あくまで世界一高い塔の三分の一……だけどな。

 マジかよ。

 

「どうすんの?」


 それにプラスして、地平線の彼方まで森が広がっているという絶望。

 人工物は?

 建物は?

 

「はぁ……」


 これからどうする?

 回り道をすればどこからか下りることができると思うけど。

 めちゃくちゃ時間がかかるはずだ。

 そもそも川を離れたら迷子になるかもしれないし。

 俺としては、水場から離れたくない。

 

 それに、今いるこの場所が孤立した高台だという可能性も否定できない。

 何日間も歩いて探した結果、どこからも下りることができなったっていうのは避けたい。

 

 りんごピオーネの残りは七個。

 節約すれば、あと何日かはもつ。

 

「ふぅ、仕方ない。内職をするか」


 頑丈な命綱を作って確実に崖から下りる。

 しかも今回は前回と違って、めちゃくちゃ長くしないと……。

 マジか。

 何日かかるんだよ。

 

 やっぱり紐作るのやめようかなぁ。

 だって手が臭くなるんだもん。

 面倒くさいし。

 

 いっそのこと、下の湖まで飛び降りてみるか?

 そしたら紐も作らなくていいし。

 一瞬で到着できるし。

 一石二鳥。

 

「て、死ぬわ!」


 絶対やらん。

 水ってあれだろ。

 高すぎる所から飛び込んだらコンクリートみたいな硬さになるんだろ?

 

 それがわかってて飛び降りるなんて馬鹿だろ。

 俺は馬や鹿よりも、鶏肉派なんでな。

 そんなことはどうだっていい。

 とにかく、絶対にその選択肢はない。

 

「一か八か崖を下りてみるってのもありかもな」


 崖を確認してみる。

 意外と岩ひとつひとつが大きい。

 全体的にでこぼこしている。

 そして幸いなことに、休憩できそうな場所が幾つか見える。

 下の方はよくわからないけど、この様子なら大丈夫だと思う。

 

「よし、そうとなれば決まりだ」


 もうすぐ日が暮れそうだし。

 とりあえず今日はしっかりと休もう。

 

 俺はまず少し戻って崖から離れる。

 崖の近くにある木の上なんかで寝たくないからな。

 ほんのちょっと戻るだけでいいだろう。

 

 ペットボトルの中身を川に捨て、新しい水を補給。

 それから木に登って太い枝の上に座った。

 

「さてと……じゃあ夕飯と行きますか」


 かごのなかからりんごピオーネをひとつ手に取って食べ始める。

 

 にしても大丈夫か?

 勢いで決めたけど……無事に下りられる保証はないぞ。

 落ち着いてゆっくりと下りればなんとかなるとは思うけど。

 ちょっとでも気を抜いたら終わり。

 もしくは足場にしていた岩が崩れても終わり。

 

「やめろよ」


 怖くて眠れなくなるだろ。

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