第二十八話
翌日の午前中。
今日も俺は川に沿って進んでいた。
出発する際にりんごピオーネの補充は済ませてあるため、今現在葉っぱのかごのなかには果実が十五個入っている。
目が覚めてからもうすでに結構歩いたと思う。
もうそろそろ正午になるのではないだろうか。
「はぁ」
歩いている間ずっと少しの物音も聞き逃さないように集中していたため、わりと疲れた。
昨日機械ライオンなどというわけのわからない生物を見てから、更に警戒を強めなければならなくなった。
ゆえに今までよりも精神的な疲労が早い。
「なんか甘いものが欲しいよな」
一応りんごピオーネは甘いのだが……。
どちらかというと果実じゃなくて、お菓子が欲しい気分だ。
「久しぶりにグリちゅ~! が食べたいなぁ」
【グリちゅ~!】とは、チューイングキャンディーである。
いろいろと味のバリエーションがあるのだが、一番のお気に入りはコーラ味。
ひとつひとつ銀紙に入っていて、好きな時に食べることができる。
昔からずっと好きだったな。
値段も手ごろだったし。
よく近所のコンビニで買ってたっけ。
俺の予想が当たっていれば、この世界は未来の地球のような気がするし……どこかに売っていればいいんだけど。
ま、期待しておくか。
「それはともかくだ!」
朗報がある。
俺は川辺をループしてなんていなかった。
つい三十分ほど前くらいに景色が変わった。
全体的に地面がでこぼこしてきた。
たまに隆起している部分があり、逆に所々沈降していたりもする。
まるで地震が起きた後のような。
ぐちゃぐちゃというか……ごちゃごちゃというか、けちょんけちょんというか。
まあそんな感じだ。
「いや、けちょんけちょんは違うだろ!」
あと植物が減ってきた。
周りを見渡すと、明らかにスカスカになっている。
とはいってもまだ多い方だが。
単純に振り出し地点の植物が多すぎただけだろう。
川辺付近に生えている木の量も減っては来たものの、ないわけじゃない。
正確には今までの半分くらい。
変わらず魔獣から逃げる手段があるのは嬉しい。
まるで地形が、俺に生きろと言っているかのようだ。
それにしても、改めて疑問に思ったんだけど。
仮にここが地球だとして。
「一体俺がカプセルのなかで寝ている間に、何があったんだ?」
そもそもあの白い建物が当時の地球のどこにあったのかはわからないが。
地球上にこんな場所があったとは思えない。
詳しくはわからないけど、アフリカとかの荒れ果てた荒野ですらもうちょっと真っすぐじゃないか?
川の向こう側に視界をやる。
まるで海の波のような形をした地面。
木の根が地上にはみ出ている。
すでに枯れている木も幾つか見られる。
大規模な地震が起きるか、隕石でもぶつからないとこうはならないだろ。
どうやったら地面が波みたいになるんだよ。
そんな風になっているのは川の向こう側だけではない。
こちら側でもたまに地面が波打っている。
「なんにせよ、川がある限り方向に困ることはない」
そして景色が変わっている以上、確実に進展している。
どんどん行きましょう。
その瞬間。
森の方から葉っぱの擦れる音が聞こえた。
「!?」
俺は反射的に走り出す。




