第二十六話
「……ん?」
ちょっと待て。
あいつ……全身機械の体だったよな。
じゃあ動物を捕食する必要あったのか?
仮に人類が作ったロボットなのであれば、殺すだけで充分なはず。
だとすればなぜ食べた?
「……生きるために必要だから?」
それとも、そうプログラムされているから?
いや、相手を倒すことが目的だったら捕食行為は無駄でしかない。
時間もかかるし。
何より機械の体で消化できるのか?
普通ならできないはず。
狸型ロボットがどら焼きを食べるみたいなアニメとは違って、ここは現実なんだから。
僕はタヌキじゃな~いっ!!
つまり、機械ライオンは厳密には機械じゃない。
さっきも自分が生きるためにカンガルーを殺した。
「なんか。人類の仲間説が薄くなってきたな」
あくまで仮説でしかないけど。
「ま、考えても答えが出るわけじゃないし。とりあえず進もう」
川辺に沿って歩き出した。
今までと同様、植物の近くを進んで行く。
素早く木の上へと避難できるようにするためだ。
よし。
集中していくぞ。
どんな物音も逃さねぇ。
おい、ずっと鳴いている小鳥。
ピヨピヨうるさいんだよ。
しかもよく聞いたら何種類かいるし。
全員まとめて黙れ。
気が散る。
次に川の流れる音。
ヒーリング効果がありそうだけど。
ちょっと静かにしててくれねぇか?
気が散る。
俺の足音。
小石がジャリジャリ言っててうるせぇ。
もう少し静かに歩けねぇのかよ。
気が散る。
俺の鼻息。
集中してみたら割と聞こえるな。
無音になれよ。
気が散る。
ごくまれにやってくる強い風。
やめてくれ。
葉っぱのガサガサが紛らわしい。
木が散る。
いや、散るのは葉っぱだろ。
「……こうしてみるとさ。俺っていろんな音に囲まれて生きてんだな」
それから、日が暮れるまで運よく魔獣に出会うことはなかった。
おかげでかなりスムーズに進んだわけだが。
魔獣に出会わないだけでなく、人工物に出会うこともなかった。
ゆえに進んでいる実感がない。
ずっと同じ景色。
本当に俺は進んでいるのだろうか。
歩きながらふと考えてしまうんだよな。
無限ループしているんじゃないかって。
A地点とB地点の間を移動していて、B地点にたどり着くと再びA地点に戻る……みたいな。
「まあでも。少なくとも今の所ループしている可能性はない」
なぜなら、川沿いを歩き出してりんごピオーネの木に一本しか出会っていないから。
もし仮にりんごピオーネの木に出会った場合。
考えたくはないが。
ループしている可能性も十分にある。
だっていつになっても人里が見えてこないんだもん。
「さてと……もう暗いし、そろそろ木の上で寝る準備をするか」
ついさっきペットボトルの水は補給したし。
まだりんごピオーネも四つ残っている。
もう登っても大丈夫だな。
そんなことを考えつつも歩いていると。
少し先にあるりんごピオーネの木が視界に入ってきた。




