第三話
ゆっくりと歩き続けること数分。
やっと大きな棚の前に到着した。
少し時間が経ったからか、頭痛がちょっと治まってきた。
呼吸も、もう普通にできる。
吐き気はまだあるけどな。
棚にはたくさんの箱が並べられている。
大きめの青い箱。
「多いな……あっ、なるほど」
カプセルの数と同じなのか。
正確に数えていないため確信はないが、そんな気がする。
つまり一人ひとつは用意されているということ。
とりあえず箱をひとつ引っ張った。
やたら軽い。
地面に置いて上の蓋を開ける。
「……空だな」
なんかムカつく。
RPGのダンジョンで宝箱を発見して、開けると空っぽだった時くらい鬱陶しい。
ひとくい箱よりかはマシだけどな。
さて、全部確認するか。
これは大変だぞ。
箱を少しだけ持ち上げ、軽いものは無視するという作業を行っていく。
俺の分も誰かが持って行ったとか……ないよな?
可能性はあるぞ。
何が入っていたのかはわからないが。
そんな奴がいたとしてもおかしくはない。
この部屋のなかで服が手に入りそうな場所はここしかない。
つまり全て空だった場合。
俺はすっぽんぽんで外へ出るしかないというわけだ。
「そういえば。この部屋の外ってどうなっているんだ?」
あっ……外に出れば悩んでいた答えがわかるかもしれない。
一日寝ていただけなのか。
それともなんらかの理由で冷凍保存されていて、何十年も眠り続けていたのか。
知るのが怖いな。
外に出たら近未来の街で、UFOが当たり前のように飛んでいたらどうする?
そんな文明のなかでまともに暮らしていける自信なんてないぞ?
とそこで。
「おっ……」
他よりも若干重たい箱を発見した。
箱を持ち上げて地面へと下ろす。
さっそく開けると、なかにはいろいろな物が入っていた。
手紙。
俺が通っている高校の制服一式。
下着。
靴下。
靴。
サバイバルナイフ。
スマホ。
「これ……俺が昨日着ていたやつだよな?」
パンツを手に取る。
うん。
なんとなく覚えがある。
だがどうして俺の所有物がこのなかに?
「ま、細かいことは置いといて、とりあえず着るか」
肌寒いし。
このままだと風邪を引きそうだ。
ただでさえ体調が悪いんだから。
衣服類を順番に着用していく。
少しして。
俺は高校生の格好になった。
ふっ、いい男になっただろう?
これでも学校ではモテていたんだぜ?
……すみません、嘘です。
幼馴染とはわりと良い感じだったけど。
他の女子から話しかけられたことはありません。
見栄を張りました。
「……ちょっと自分の姿を確認するか」
スマホを手に取り電源ボタンを押した。
しかし画面が光らない。
「あれ?」
昨日電源を切っていたか?
普段切ることはないんだけど。
試しに電源ボタンを長押ししてみるも、反応はない。
電池切れか?
いやあり得ないだろ。
スマホのバッテリーは一日程度じゃなくならない。
しかもまだ買ったばかりだぞ?
「まあ電源が入らないんじゃしょうがないか……」