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第二十四話

 下を見ると、まだカンガルーはいなかった。

 だけどもう少しでくるはず。

 あいつらは獲物が木に登っても一時間は平気で待つような奴らだし。

 

 一度ため息を吐く。

 

「はぁ……」


 にしてもさっきのは危なかった。

 まさかここまで身体が疲労していたとは。

 登っている最中、急に足が重たくなって動かなかった。

 もう少し自分の身体能力を把握しておかないと。

 いずれ痛い目にあうぞ。

 現に、ついさっき危なかったし。

 

 とそこでカンガルーが木の下にやってきた。

 二体とも俺の方をじっと見つめてくる。

 

「さてと、今のうちに休むか」

 

 今までは落ちないように気を付けながらカンガルーがいなくなるのを待っていたけど。

 今回は休むことに集中しよう。

 

 装備していた紐をほどき、自分の身体と木の幹に巻き付けていく。

 なんなら仮眠を取ってもいいかもしれない。

 いや……でもあいつらから目を離しても大丈夫かな。

 どうせ登ってこれないだろうけど、突然何をされるかわからないし。

 見つかっている以上、一応監視はしておいた方がいいか。

 

「紐で体を固定したから、枝から落ちないように気を使わなくてもいいし」


 その分身体の力を抜いて楽にしておこう。

 

 

 

 

 カンガルーたちとのにらめっこを始めて五分ほど経った時だった。


 突然カンガルーたちが走り出した。

 二体とも川辺の方に向かっていく。

 

「ん?」


 首を傾げる。

 どうしてこんなに早く諦めてくれたのかわからない。

 普段だったらもっとしつこいのに。

 飽きっぽい性格だったのかな?

 

 その瞬間、ものすごく嫌な予感を感じた。

 違う。

 そうじゃない。

 あいつらは逃げ出したんだ。

 何かから。

 

「──ォォォォ」


 そんな声が聞こえてきた。

 機械ライオンと表現するのが適切な声質。

 かなりの大音量だ。

 近い。

 

 思わず手で口を覆う。

 今音を立てたらやばい。

 

 植物のガサガサという音が聞こえる。

 ものすごいスピードだ。

 そろそろくるぞ。

 絶対この辺りを通り過ぎるはず。

 見るんだ。

 あの声の正体を。

 

「グオォォォォ」


 一瞬だった。

 奴は俺の真下を通り過ぎ、川辺に向かって走り去っていった。

 

 葉っぱが邪魔でその後は見えない。

 しゃがめば見えそうだが、紐で身体を固定しているため不可能だ。

 

「キュー」

「グオォォォ!!」


 その直後、グチャッという音が響いた。

 カンガルーがやられたのだろう。

 奴が返り討ちにされたとは思えない。

 それほどの見た目だった。

 

 間髪入れずにもう一度グチャッという音が聞こえてくる。

 残りの一体もやられたらしい。

 

 音を立てないように呼吸しようとする。

 だが、どうしても荒くなってしまう。

 身体が震える。

 

「はぁ……はぁ」


 突然訪れる沈黙。

 おそらくカンガルーを捕食している。

 今バレたら死ぬ。

 息を殺さないと。

 一度でも声を出したら見つかる。

 静かにしろよ、俺。

 

 しばらくして。

 川の水が弾けるような音が聞こえ始めた。

 川の向こう岸へと向かっているようだ。

 

 安堵のため息を零す。


「ふぅ……」


 な、何なんだよ。

 

 ここは絶対異世界なんかじゃない。

 未来の地球だと言われた方がまだ納得できる。

 何なんだ、あいつは。

 

 詳しく見えたわけじゃない。

 だけど特徴はつかめた。

 

 全身が機械でできたライオンだった。

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