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第二十話

 りんごピオーネを二つ食べ終えた後、しばらくの間無言で目を瞑っていた。

 もうすっかり真っ暗である。

 目を閉じているため暗いのは当然なのだが、俺が言いたいのは辺りに夜の帳が落ちているという意味だ。

 

 音でわかるが、カンガルーはまだ下にいる。

 こいつ本当に執念深い。

 もう帰ってくれないかな。

 敵が下にいるというだけで、全然眠れない。

 まだ時間が早いというのもあるけど。

 仮に睡魔が襲ってきていても、落ち着いて寝られないと思う。

 

 たまに木の幹を殴ってきやがるし。

 揺れる度にびっくりするんだよな。

 木を殴るのであれば、朝になってからにしてくれ。

 そうしたらアラーム代わりになってちょうどいい。

 

 いや、だめだろ。

 カンガルーがいる時点で下りられないし。

 やっぱりいないのが一番だ。

 

 とりあえず月でも見て落ち着くか。

 今日はうさぎさんがお餅をついているかもしれない。

 

 上を見上げる。


「……いや、ほとんど見えねぇ」


 葉っぱの密度が高すぎて、隙間から少し月が見える程度。

 正確には五分の一くらい。

 角度を変えてみるも全部は視界に入らない。

 川辺から見上げたら、さぞ綺麗な月が見えるんだろうなぁ。

 

「……ん?」


 よく考えるとさ。

 あれって月だよな。

 

 うん。

 見覚えのある月だ。

 

 となると。

 ここはやっぱり異世界じゃなくて地球なのか?

 異世界から月が見えないとは限らないが、全く同じような惑星がある可能性は低い……と思う。

 宇宙についてはさほど詳しくないからわからないけど。

 

 でもあれは地球から見ていた月にそっくりだ。

 茶色と黄色を混ぜたような色。

 そしてあの影の感じ。

 

 月としか言いようがない。

 

「ここは地球説が濃厚になってきたぞ」


 そしてその地球説を薄める原因の一つが、今現在も下にいるボクサーカンガルーくんである。

 手がグローブみたいに大きいカンガルーが地球上にいるとは思えない。

 

 地球説が薄くなってきたぞ。

 

 

 

 

 木が揺れて目が覚めた。

 

「……俺、寝てたのか」


 いつの間に。

 ついさっきまで起きていたような気がするんだけど。

 月について考えてたよな?

 でその後すぐに寝たのか。

 

 絶対無理だと思っていたが。

 案外眠りにはつけるものだな。

 

 辺りはまだ真っ暗。

 かなり眠たい。

 おそらく眠りについてすぐ起きたようだ。

 

 下を向くと、カンガルーが木を殴ってきている。

 くそ、せっかく眠れてたのに。

 お前のせいで目が覚めたじゃねぇか。

 

 狼にでも食われてしまえ!

 なんなら例の機械ライオンみたいな声の主でもいいぞ。

 もうやっちゃってください。

 このカンガルー、マジでしつこいんですよ。

 人の睡眠を邪魔してきやがって。

 そろそろ怒鳴るぞ?

 

 と、その時。

 突然植物の揺れる音が聞こえてきた。


「!?」


 どこからだ?

 下であることは間違いない。

 

 ガサガサという音はだんだん近くなってくる。

 

「キュー!?」


 カンガルーも何かに気づいたらしく、音のする方を向いた。

 そしてカンガルーが拳を構えた直後。

 

「ガルルゥ!」


 茂みのなかから一体の狼が飛び出してきた。

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