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第十九話

 一度深呼吸をして下を向いてみると、ボクサーカンガルーがいた。

 

「またカンガルーかよ」


 なぜか木の幹をパンチしてきている。

 その度に木が若干揺れる。

 葉っぱのガサガサという音。

 

「キュー!」


 ちょっとやめてくれませんか?

 さすがにその威力じゃ木は折れないだろうけど。

 怖いです。

 

「……仕方ない。今日はここで夜を明かすか」


 カンガルーがすぐにどこかへ行ってくれるのであれば、もう少し進んでもいいのだが。

 おそらく、しばらくは諦めてくれないだろう。

 前回と同じであれば、一時間以上。

 そのころには完全に日がくれている。

 

 幸いペットボトルの水は満タン。

 かごのなかにもりんごピオーネが残り九個ある。

 

 かごを隣の枝に掛けて、身体に巻き付けている紐を丁寧に外していく。

 

「なんかこうしていると、リミッターを解除したような気になるな」


 本来保有しているはずのまだ見ぬ力が解放されたような気分だ。

 今ならボクサーカンガルーですら余裕で勝てそう。

 

 下を向いてみると、こちらを向いて木の幹をパンチしているカンガルーの姿。

 目と目が合う。

 

「……絶対勝てねぇ」


 調子に乗ってすみませんでした。

 

 やがて紐を外し終えると、今度は体と木の幹に巻き付けていく。

 

「それにしてもさ」


 こうして体に紐を巻き付けていると、SMクラブにいるみたいだよな。

 一度も行ったことないけど。

 というか成人しても行く気なんてなかったけど。

 うん。

 

「大して面白くもないのに二回目という、最悪のネタである」


 ネタ切れ感半端ねぇな。

 だけど、紐を使ったネタはこれだけじゃない。

 もっと面白いこと言えるもん!

 

 体と幹を紐でぐるぐる巻きにしていく。

 同じところばかりが太くならないようにちょっとずつ高さを変えていき、


「あぁん! 乳首が締め付けられる~」

「キュー!」


 下からカンガルーの声が聞こえてくる。

 同時にガサッ! と木が揺れた。

 木の幹を殴られたのだろう。

 

「……なんか、すみません」


 これも二回目だし、カンガルーに怒られるという最悪のネタである。

 認めよう。

 ネタ切れである。

 正確には下にカンガルーがいるせいで、全然頭が回っていない。

 怖いんだよ。

 ま、そもそも今この状況で面白いことを言う必要なんてないんだけどな。

 

 それから少しして。

 無事に紐を巻き終えた俺は、枝の上で静かに座っていた。

 カンガルーを刺激しないためだ。


 暇すぎてにらめっこでもしようかと思ったが。

 変に怒らせてずっと居座られたら困るため、やめた。

 

 横の枝に掛けてあるかごのなかから、りんごピオーネをひとつ手に取る。


 あぁ……肉が食いてぇなぁ。

 もちろんりんごピオーネに不満があるわけじゃない。

 むしろありがたいと思っている。

 だけど果物ばかり食べていると、だんだんこってりしたものが欲しくなってきた。


 タレをたっぷりつけた焼き肉で白米を口いっぱい頬張りたい。


 チーズバーガーが食べたい。

 

 はぁ。

 考えていたらお腹空いてきた。

 りんごピオーネを食べてごまかそう。

 カロリーメイトはなるべく取っておいた方がいいだろうし。

 

 りんごに齧りつくと、口のなかに水分が広がった。

 同時にぶどうのピオーネのような風味。

 うん、おいしい。

 だけどこれじゃない感がある。

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