第百三十三話
さて、釣りを再開だ。
頑張らないと最下位だ。
嫌々針に餌をつけて、もう一度海へと放つ。
次はもっと大きい魚を釣りたいな。
昔流行っていた島でどうぶつと一緒に過ごすゲームだと、釣る前に魚の影で大きさがわかるけど。
現実はそうもいかない。
更に魚を触った手が生臭いし。
ミミズと土の入った袋も独特の臭さがあるし。
あまり好きになれそうにない。
けど、この海にいる時間は好きだな。
「……」
どうしよう。
せっかくの機会だし。
ありすさんと会話がしたい。
でもどう話しかけよう。
何を話そう。
う~ん。
釣りについてかな?
どの魚が美味しいのか……みたいな。
いや。
盛り上がりそうにねぇ。
やっぱり勇気を出して話しかける以上、なるべく続くような話題にしたい。
となると。
何があるんだ?
というか今ふと思ったけど。
ラノベとかアニメの主人公って、相当コミュニケーション能力が優れているよな。
もしかしなくても日本トップクラスだろ。
なぜ異性とあそこまで喋られるのかがわからん。
息をするように会話をしていやがる。
しかもすぐヒロインを落とすし。
俺もあんなトーク力が欲しい。
まあ望んでも手に入らないんだけどな。
欲しいなら努力しないと。
まあ、とりあえず。
紅蓮のことについて話してみるか。
共通の話題だし。
いやちょっと待てよ。
前回も紅蓮の話をしてすぐ会話が終わったよな。
今回も同じにならないか?
まずは脳内シミュレーションをしてみよう。
今話しかけようとしているのは。
いつも紅蓮にめちゃくちゃ言われて辛くないかどうか。
返答としては……多分、頷くだけ。
「……」
あ、これ続かないわ。
先にシミュレーションをしておいてよかった。
一応続きの展開を考えてみるか。
えっと、頷かれた後。
そうだな。
うぅむ……。
まあ……確かに俺も出会ってすぐだけど、慣れてきたというか。
紅蓮の荒っぽい言葉には悪意が感じられないんだよな。
みたいな感じか?
そうしたらありすさんは再び「……うん」と頷くだろう。
まずはこのくらいのやり取りでいいか。
正直これ以上は続きそうにない。




