第百三十二話
砂浜の上に座った。
こうやってのんびりと釣りに集中できるのも、旋風班長が辺りを警戒してくれているからだ。
感謝しないと。
後ろを向いてみる。
旋風班長は、銃を構えて森や空を見ていた。
全然隙が無い。
あれなら安心だな。
五分ほどして。
竿がピクンッと動いた。
「きたっ!?」
勢いよく引っ張る。
ちょっと重い。
確実に釣れている。
水中から姿を現したのは──灰色の魚。
記念すべき一匹目。
手元に手繰り寄せる。
全体的に灰色で、白いえら。
あまり大きくないが、生きがいい。
めっちゃパタパタ跳ねている。
針を外したいんだけど。
触るのが怖い。
おそるおそる胴体を掴み、針を外していく。
おい、動こうとするな。
頼むから静かにしててくれ。
動くと余計に痛いぞ?
なるべく楽に外してやりたいんだよ。
苦しむのは嫌だろ?
どうせ数日後には食べられるんだろうけどな。
つまり釣られた時点でお前は終わりだ。
もう諦めろ。
とそこで針が外れた。
「ふぅ。やっと取れた」
左手で掴んではいるものの。
正直いつ離してしまってもおかしくない。
持っていることが怖い。
「……これに海水を入れて、泳がせておくと鮮度が保てる」
そう言ってありすさんはひとつのクーラーボックスに海水を汲んできてくれた。
「あ、ありがとう」
すぐにそのなかへ灰色の魚を入れる。
するとすぐに泳ぎ出した。
「ちなみにこの魚は食べられるの?」
「……うん」
「そっか」
マジで魚のことについては詳しくないからな。
毒があるのかどうかなんてわかるはずがない。
だから。
こうして判断してくれる人がいるのは助かる。
会話をするきっかけにもなるかもしれないし。




