第百三十話
「……白い部分より上に刺しちゃうとすぐに死んじゃうから、この少し下あたりを通すの」
ありすさんが言った。
「白い部分?」
「……ここ」
彼女が指さしている先には、確かに色の違う部位があった。
先っぽから少し下った所にある。
えっとつまり。
「この部分よりも上がミミズの急所ってこと?」
「……ん」
頷くありすさん。
「あー、なるほど」
これは覚えておかないとな。
てっきり死んだミミズでもいいと思っていたんだけど。
この言い方からして、生きている方がいいのだろう。
さて。
ちょっとやってみるか。
ありすさんから釣竿を受け取る。
リールなどの部品がない。
めちゃくちゃしなる竿の先に糸をくくりつけているだけ。
こんなんで釣れるのか?
袋からミミズを取り出し……うわっ!?
思わず指を離してしまう。
摘まんだ瞬間、めちゃくちゃ動いたぞ。
やばい。
きもっ。
一気に鳥肌が立った。
「……」
えぇー。
これやらないとだめ?
俺、これ無理かもしれない。
狼を一刀両断する方がよっぽどましだ。
だけど。
ありすさんの前でみっともない姿は見せたくない。
やらなきゃ。
もう一度袋に手を突っ込み、ミミズを摘まんだ。
「……」
歯を食いしばる。
マジでやばい。
すごい暴れている。
「……」
ミミズの白い部分よりも少し下に針を通し……て、うわっ。
動くなって。
やめろ。
「はぁ……」
本当に嫌だ。
もう帰りたい。
無事に貫通させた。
ふぅ、やっとできたぞ。
非常に疲れた。
ありすさんの方を向く。
すると彼女は下を見ていた。
口元に手を当てている。
多分笑いを堪えているな。
まあ仕方ないか。
男なのにすごいビビッてたし。
「ごめん、恥ずかしいところを見せちゃって」
「う……ううん。別に」
ありすさんは首を左右に振った。




