第十四話
先ほどは失礼しました。
だけど俺はこれからも我慢する気はない。
体に毒だし。
それよりもさ。
さっき葉っぱで拭いたけど……痒くなったりしないかな?
緑色の葉っぱだったし、多分大丈夫だとは思うけど。
無事に用を足した俺は、川へと移動する。
川辺までは徒歩五秒くらい。
なんせ俺が寝床にしていた木は、森に入ってすぐの場所にあったからな。
植物地帯から川辺へと足を踏み入れた。
小石を踏む度にじゃりじゃりと音が鳴る。
対抗するように俺の腹がぐーぐーと鳴る。
「……腹減ったなぁ」
昨日の夜もお腹いっぱい食べてないし。
当然と言えば当然だけど。
「もったいないけどカロリーメイト食べるか」
ポケットから箱を取り出し、なかから一本だけ手に取る。
残り九本……と。
早く食料を見つけないとな。
歩きつつも零さないように食べていく。
おいしい。
「さて、まずは何をしようか」
いろいろやりたいことはあるんだよな。
鞄を作りたいけど、今すぐ必要というわけではない。
もっと荷物が増えてからでもいい。
布団に関しても持ち運びができない。
そもそも作れるかどうかわからないしな。
となると優先順位は、先に進むことの方が高いだろう。
「目指すは人のいるところだな」
その前に水分補給。
しゃがんで川に口をつけ、納得するまで飲んでいく。
その後ペットボトルの水を一度捨て、新しい水を補充した。
ペットボトル。
カロリーメイト。
サバイバルナイフと充電切れのスマホ。
制服の上から巻いてあるツタの紐。
準備万端。
忘れ物は無いな。
「いつ狼が襲ってくるかわからないし、耳を澄ませて進もう」
一応川辺の外側を歩くことにする。
仮に魔獣に遭遇して襲ってきた場合、すぐ木の上に登って逃げるためだ。
川の側を歩いていたら逃げ遅れるかもしれない。
まあ最悪の場合はサバイバルナイフで応戦するしかないよな。
そうならないよう気を抜かずに集中だ。
音でなるべく早く判断する。
俺ならできる。
川沿いを歩くこと数十分。
幸いまだ一度も魔獣と遭遇していない。
あくまで仮にの話だが。
これがご都合主義というやつではだろうか。
頻繁に狼が現れたら物語が進まないため、作者がスムーズに進行させようと狼のエンカウント率を少なくしているのかもしれない。
まあそんなわけないか。
そんなことを考えていた矢先。
ガサッという音が森の方から聞こえてきた。
やべぇ。
絶対狼だ。
音を立てないように走り出し、少し先のでこぼこの木に登る。
焦っていたせいで一度滑りかけたが、無事枝の上に乗ることに成功。
これで一安心。
川辺に視線をやると、一体の狼が川に向かって歩いていく。
おおかた水を飲みにきたのだろう。
多分俺の存在には気づいていない。
少しの間森のなかにいてわかったが、あの狼たちはあまり耳が良くない。
犬とか狼は聴覚が優れていると思ってたんだけど……この様子だとあいつらは違うようだ。
そういえば。
りんごピオーネがあれば大人しくなったりしてるし。
案外大したことない奴なのかも。
いや油断は禁物。
絶対気を抜くなよ、俺。
いつ何が起こるかわからない世界なんだから。
なんにせよ。
しばらくここで待機だな。




