第百二十九話
「よし、俺が見張りをしているから、それぞれ釣りを始めてくれ。……そぼろ丸くんはそうだな。桜花さんが釣りのやり方やコツを教えてあげてくれ」
マジで?
「えっ……私が?」
「ああ。同じ便利班だろ?」
「……う、うん」
「というわけで頼んだぞ」
武器を構えて辺りを見渡す旋風班長。
なるほど。
全員で釣りをしていたら、背後から魔獣に襲われるかもしれないからな。
いい考えだと思う。
それにしてもありすさんに教えてもらえるのか。
最高じゃん。
これ以上ない幸運だ。
この機会に会話できればいいんだけど。
前回部屋まで案内してもらった時は……。
まあ、なんというか。
ボロボロだったからな。
今回こそは、ちゃんとお話ししたい。
頑張るぞ!
もちろん釣りもおろそかにする気はない。
みんなから仕事ができないやつみたいに思われるのは嫌だし。
はぁ。
今日は忙しいな。
だけど俺ならできる。
「……あ、あのぉ」
ありすさんの声が聞こえた。
「ん?」
「あっち……」
そう言って彼女は海を見る。
「あ、ごめん。行こうか」
「……うん」
いかんいかん。
考え事をし過ぎていた。
俺はありすさんと一緒に海のそばへ移動した。
クーラーボックスを二つ砂浜に置く。
そういえば。
なかには餌の袋が入っていたんだったな。
取り出すか。
開けてみると……確かに小さい袋があった。
中身は赤茶色だ。
うえぇ。
気持ち悪い。
これ、ミミズか?
土みたいなのも入っている。
ありすさんはその袋のなかからミミズをひとつ取り出した。
そして俺に見えるような角度で、針を通していく。
うわぁ……。
ミミズがうねうねと動いている。
生理的に無理かもしれない。




