第百二十四話
◇
二階の自室。
眠たくなってきた。
そろそろ寝るか。
ベッドへと向かう。
「あー。しんどい」
風呂上がりに筋トレをし過ぎたかもしれない。
疲労感が半端ない。
特に肩と腕。
早く寝てなるべく回復しよう。
「……」
なんかさ。
無性にりんごが食べたい。
あのシャリシャリ感を味わいたい自分がいる。
でも、どうせ一口飽きるんだよな。
もうそれはわかっている。
おそらくりんごを美味しく食べるには、少なくとも一ヶ月くらいは口にしたらだめだ。
それがわかっているのに。
どうしても食べたい。
「……よし、食べるか」
我慢は身体に毒だ。
机の前に移動し、りんごを手に取った。
「いただきます」
一口かじる。
んっ……あれ?
昨日よりもシャリシャリ感がない。
新鮮さがあまり感じられないぞ。
まあ、採集して結構経つし。
当然と言えば当然か。
「これはもう食べられそうにないな」
味に飽きていたとしても、今まではシャリシャリの食感があったから食べられた。
だけど。
今はいいところなし。
食べるに値しない。
「もったいないけど全部捨てよう」
今日この食感なのだから。
当然明日はもっとひどくなる。
常温で放置してシャリシャリ感が戻るはずがない。
その場でじっとしていたら勝手にHPやMPが回復する、ぬるいオンラインRPGとは訳が違う。
「さらば、りんごたち」
たとえこの身体が朽ち果てようとも、お前たちのことは絶対に忘れない。
だから安らかに逝け。
どんな形であれ。
来世でまためぐり会えることを願っているよ。
さようなら。
りんごを全てゴミ箱に捨てた。
「よし、寝よう!」
俺はベッドに移動して眠りについた。




