第百二十二話
「どうしたの?」
「勝てるはずだったのに、なぜか負けました」
「ふふっ。多分考えとしては惜しいと思うよ」
惜しい?
どういうことだ?
「あの、一度勝負をやめてもいいですか?」
やみくもにやっても絶対に勝てない。
「勝ち方がわかったら挑んでおいで」
「はい」
負けたままで終わりたくない。
俺って本当に負けず嫌いなんだろうな。
意地でも勝ちたい。
さて、考えようか。
10みたいな小さい数字なら、計算したら行けそうだよな。
10の場合、5を取れば勝ち。
5を取るには……えっと、だから。
先攻で1を取ればいいのか。
そうしたら相手は2か3か4を言うしかないから。
俺が5を取ることができる。
これなら勝てそうだな。
だけど法則を知りたい。
華瑞樹班長はどんな数字でも勝ち続けていた。
きっと何かあるんだ。
次に20での勝ち方を考えよう。
経験則で、15を取れば勝ちなわけだから。
15を取るには…………11を言えばいいのか?
11を取るには、7だよな。
7を取るには……先行で3を取ればいい
20→15→11→7→3。
あれ? もしかして。
言ったら負けの数字から5を引いて、その後にずっと4をマイナスし続けたら。
最初の勝てる数字にたどり着けるんじゃね?
30で考えてみるか。
25、21、17、13、9、5、1……つまり、先攻で1を取れば勝ちだ。
よっしゃ!
完全に攻略できた。
すげぇ気持ちいいな。
一応歯切れの悪い数字でも確かめてみよう。
例えば27。
最初に5を引いて22。
あとは4をマイナスし続ける。
18、14、10、6、2。
つまり先攻で2を取れば勝利。
これ……先攻が絶対に勝てるゲームじゃねぇか。
あ、いや。
そうでもない。
例えば29とかの場合。
24、20、16、12、8、4。
これは後攻で4を取った方の勝ち。
数字によって先攻と後攻を変えないといけないのか。
なるほどな。
奥が深い。
「華瑞樹さん。この勝負の攻略法がわかりました」
「えっ……早くない? もうわかっちゃった?」
「はい」
「じゃあもう一度勝負してみようか。次は23を言った方が負けね。先行か後攻どっちがいい?」
18、14、10、6、2。
「先行で行きます。……1、2」
「…………すごい、本当にわかってるみたいだね。3、4、5」
「6」
「7、8」
「9、10」
「11」
「12、13、14」
「15、16、17」
「18」
「19」
「20、21、22」
「23。……あーあ。とうとう負けちゃったなぁ」
「ふぅ、やっと勝てました」
すっきりした。
非常にいい気分だ。
「ふんっ、もう朧月くんとは数字ゲームやってあげないからね」
「あはは。まあ確かにお互い攻略法を知っている同士がやったら、最初で勝負がついちゃいますからね」
「絶対私しかわからないと思っていたのに。やっぱり君ってすごいね」
「そんなことないですよ」




