第百二十一話
「朧月くん、おそいよ」
「今ちょうど一通り計算が終わったんですけど。これ……俺の負けですね」
「あっ、気づいた? 結構頭の回転早いね。まあとりあえず最後までやりましょ」
負けが確定しているのに、やらないといけないのか?
「12、13、14」
「15」
ほらやっぱり15で止めた。
「16、17、18」
「19」
「……20」
「うふふっ」
悔しすぎる。
勝ちてぇ。
「次は30で行きましょう。先攻後攻はどうしますか?」
「私は別にどっちでもいいけど」
ということは。
別に順番は関係ないということか。
「じゃあ俺が後攻で」
「OK! ……えっと、1」
「2、3、4」
「5」
「6、7、8」
「9」
「10、11、12」
「13」
なんか嫌な予感がする。
どうして今回は一個ずつしか言ってこないんだ?
理由があるような気がしてならない。
もう一度三つ行ってみるか。
多分華瑞樹さんはひとつしか言わない。
「14、15、16」
「17」
ほらっ。
これがわかったところで、勝利につながらないんだけどな。
マジでわからん。
今回の対戦は捨てよう。
ちょっと確かめたいことがある。
「18、19」
「20、21」
「22、23」
「24、25」
なるほど。
もしかしてだけどさ。
俺と華瑞樹さんの言っている数が、合計で四つになっていないか?
おそらく俺がひとつ言えば、相手は三つ言う。
もう終わるから検証できないけど。
充分だ。
後攻を選べば絶対に勝てる。
大事なのは、相手と自分の数字の合計を4にすること。
「26」
「27、28、29」
「30。……はい、負けました」
「どう? いろいろと考えていたみたいだけど、私に勝てる方法は思いついた?」
「多分わかりました。次は勝てると思います」
「おっ、本当?」
「はい」
「次の数字はどうする? 私が決めようか?」
向こうに決められたら負けそうだな。
「いや、できれば俺が決めたいです」
「いいよ」
「あまり多くなると時間がかかるので、今度は20で行きましょう。今回も俺が後攻がいいです」
「OK。じゃあ……1、2、3」
よし、もう一度確認。
二人で合計四にする。
そうすれば絶対に勝てるはずだ。
「4」
「5、6、7」
「8」
「9、10、11」
「12」
「13、14、15」
「……あれ?」
15を取られたぞ。
もう負けたわ。
俺の理論……違ったか?




