第十三話
目が覚めた。
一瞬状況がよくわからなかったが、すぐに木の上で寝ていたことを思い出す。
同時に筋肉痛の痛みが身体中を襲ってきた。
「痛ぇ……」
体が重たい。
慣れない格好で寝ていたからだろう。
辺りはもうすっかり明るい。
葉と葉の間から太陽の光が差し込んできている。
眩しい。
手で目元を隠しつつ、つぶやく。
「あぁ……まだ眠たいなぁ」
結局何度夜中に目が覚めただろうか。
少なくとも五回は起きている。
寒さで眠れなかったのもあるが、狼の遠吠えがうるさかった。
あと、一度だけ狼とはまた別の叫び声みたいなのが聞こえてきた時は、めちゃくちゃ怖かったな。
なんていうんだろう。
ライオンが機械になった感じの声質。
自分で言っててよくわからないけど。
まさにそんな感じだった。
あれは動物の声帯から出る音じゃない。
あの音を聞いた後、一時間くらい眠れなくなった。
身体の震えが止まらなかったんだよ。
あんな声の主に出会ったが最後、俺は生きていないだろう。
「ふぁぁぁ」
あくびが出た。
正直ベッドがあればもっと寝ていられる。
だが、木の上だと睡魔があっても眠れない。
仕方ないから起きよう。
俺は木の幹と自分の胴体に巻き付けている長い紐を丁寧にほどいていく。
そういえばこの紐……これからも持っておきたいよな。
夜になったらどうせ木の上で寝ることになるだろうし。
そしたら確実に必要になる。
「でも持ち運ぶには長すぎるよな」
仮に葉っぱで鞄を作ったとして、この量が入るとは思えない。
ずっと体に巻き付けておくか?
案外防御力が上がっていいかもしれない。
狼に噛みつかれても耐えられるかも。
そうしよう。
やがて全部ほどき終えた。
今度は自分の身体へと巻き付けていく。
主にお腹付近。
同じところばかりが太くならないようにちょっとずつ高さを変えていき……あぁん! 乳首が締め付けられる。
失礼しました。
でもこうしていると、防御力が上がったような気になるな。
最後の部分を団子結びにする。
なるべく力を入れて結んでおいた。
これで簡単にはほどけまい。
自分で外すときに苦労するんだけどな。
まあ勝手にほどけるよりかはましだろう。
それでさ。
もし仮に今の俺の出来事がアニメ化されたらの話だけど。
【オレは ツタの紐を 装備した】
みたいなメッセージウィンドウを出してほしい。
画面の下半分辺りに。
黒い長方形のなかに白文字でお願いします。
それが無理なら、書籍化の挿絵でも全然OKです。
「よし、そろそろ下りるか」
今気づいたけどお尻が痛い。
桃が割れて、なかから赤ん坊が出てきてもおかしくない。
その子は将来俺のもとを離れて鬼退治に行くんだろうなぁ~。
ついでに昨日の機械ライオンみたいな声の正体と、狼どもを一体残らずやっつけてきてくれ。
そんなことを考えていると、桃から何かが生まれそうになった。
そういえばカプセルで目覚めて以降何も出していない。
そしてこの感覚。
多分個体じゃないと思う。
腹を下している時のやつだ。
川の水にりんごピオーネ。
水分の取りすぎだろうな。
まずは辺りに狼などがいないことを確認。
よし何もいないようだ。
地面へと下りた。
早速そこら辺の茂みに入る。
あ、えぇっと。
少しの間でいいんで。
【しばらくお待ちください】
って画像にしてもらっててもいいですか?
放送事故になりそうだし。




